毒が効くまで長すぎる

ねね

文字の大きさ
15 / 20

15 話し合い初日の夜

しおりを挟む
 「あのメンツで話すの無理じゃない?」

 1日目の夜。私とサルマは台所で食事をとって、与えられた部屋に戻った。

 部屋は1つで、マットレスが2つぎゅうぎゅうに入っているだけの小さなものだ。

 換気が悪いので、今はしばらく窓を開け放し、強めの夜風を部屋に通しているところ。

 「サルマの先生って、お国がよこした調停者なんだよね?

 和解を進めるシナリオとかはあったの?」

 「今回は、現状把握だけってことだった。
 初回で成果なんて誰も期待してないよ。」

 壁にもたれて、マットレスの上に座るサルマ。私は窓の前で鯉のぼりになっている。

 霧の本能なのかね。ふわふわ浮かんでいると落ち着くのだよ。

 ああ、こうして2人でいると落ち着くな。

 ボロい館の片隅で、なんだか秘密基地に立て込もって悪さをする小学生に戻った気分だ。

 私の和みはここにある。

 「アズサ。」

 「ん?」

 あ、サルマこっち見てるよ。

 「話し合いが、また失敗して。争いが続いて、領内の魔物が増え続けたとして。

 魔物と人間は共存出来るかな?」

 暗い部屋の中で、チラチラ光るサルマの目。綺麗だな。

 「う~ん、呼んだ魔物によるなあ。

 無害な奴は無害だし。食事がいらない連中なら、人間を食べようとは思わないし。

 でも、そもそも身近な生き物に干渉するのが人間て生き物だからね。

 相手が魔物の場合、下手につついて結局、人間の方が痛い目見そうだね。

 あー、オブラートに包んで言ったけどさ。

 大前提として、もしもここが私の生まれた森みたいに魔物だらけになったなら、この地の人間は絶滅するよ。」

 「そうか。やっぱり難しいのか。」

 私は宙に浮かんだまま、サルマの顔を覗きこんだ。

 弱いサルマ、出来ることが多くはないサルマ。穏やかな顔の半分は、諦めだったりするのだろうか。

 諦めて、でもどうにもならないから、仕方なく足掻く。人間の人生。

 君はどう足掻くのだろう。

 「生き残りたいかい?」

 サルマは黙って頷いた。

 「誰だってそこは同じだよ。

 仮に熊さんや鳩さんが我を失って、自分たちの生存環境を守るより、相手を傷つけることに夢中なんだとしても。

 きっと誰かが正気に帰る。魔物を呼ぶのを止めるようになるさ。

 誰も正気に帰らなかったら、彼らはただ淘汰されるだろう。

 自然の掟は厳しいよ~。だから、彼らのことを気に病むのは止めといで。

 自分に出来ることだけ、やっとけば良いって。ま、それしか出来ないし。」

 楽にしなサルマ。君は若くて可愛いよ。

 近所に魔物が増えたら、皆でここから逃げてしまえ。うん?もしかして逃げるのも苦労するのか?やれやれ、人間て大変だな。

 あ、サルマがちょっと笑った。

 「アズサは人間くさいなあ。」

 はい?この青い霧にそれを言いますか。

 「なんとなく、見た目どおりの女の人みたい。」

 ええ、前世はこの見た目どおりの女の人でした。あ、もしかして。そのせいで、君は私を警戒しないのか?中身は立派な魔物なのに。

 あちゃあ、美人局とかに引っ掛かるぞ…。
 女難には気をつけろよ、サルマ。

 私は話を誤魔化すように、会話を急転換させた。

 「窓、もう閉めようか。」

 「うん?」

 「明日、早いよ。朝になったら起こすからね。早めに寝た方が良い。」

 「…わかった。」

 「おやすみなさい。」

 「おやすみ。」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...