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15 話し合い初日の夜
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「あのメンツで話すの無理じゃない?」
1日目の夜。私とサルマは台所で食事をとって、与えられた部屋に戻った。
部屋は1つで、マットレスが2つぎゅうぎゅうに入っているだけの小さなものだ。
換気が悪いので、今はしばらく窓を開け放し、強めの夜風を部屋に通しているところ。
「サルマの先生って、お国がよこした調停者なんだよね?
和解を進めるシナリオとかはあったの?」
「今回は、現状把握だけってことだった。
初回で成果なんて誰も期待してないよ。」
壁にもたれて、マットレスの上に座るサルマ。私は窓の前で鯉のぼりになっている。
霧の本能なのかね。ふわふわ浮かんでいると落ち着くのだよ。
ああ、こうして2人でいると落ち着くな。
ボロい館の片隅で、なんだか秘密基地に立て込もって悪さをする小学生に戻った気分だ。
私の和みはここにある。
「アズサ。」
「ん?」
あ、サルマこっち見てるよ。
「話し合いが、また失敗して。争いが続いて、領内の魔物が増え続けたとして。
魔物と人間は共存出来るかな?」
暗い部屋の中で、チラチラ光るサルマの目。綺麗だな。
「う~ん、呼んだ魔物によるなあ。
無害な奴は無害だし。食事がいらない連中なら、人間を食べようとは思わないし。
でも、そもそも身近な生き物に干渉するのが人間て生き物だからね。
相手が魔物の場合、下手につついて結局、人間の方が痛い目見そうだね。
あー、オブラートに包んで言ったけどさ。
大前提として、もしもここが私の生まれた森みたいに魔物だらけになったなら、この地の人間は絶滅するよ。」
「そうか。やっぱり難しいのか。」
私は宙に浮かんだまま、サルマの顔を覗きこんだ。
弱いサルマ、出来ることが多くはないサルマ。穏やかな顔の半分は、諦めだったりするのだろうか。
諦めて、でもどうにもならないから、仕方なく足掻く。人間の人生。
君はどう足掻くのだろう。
「生き残りたいかい?」
サルマは黙って頷いた。
「誰だってそこは同じだよ。
仮に熊さんや鳩さんが我を失って、自分たちの生存環境を守るより、相手を傷つけることに夢中なんだとしても。
きっと誰かが正気に帰る。魔物を呼ぶのを止めるようになるさ。
誰も正気に帰らなかったら、彼らはただ淘汰されるだろう。
自然の掟は厳しいよ~。だから、彼らのことを気に病むのは止めといで。
自分に出来ることだけ、やっとけば良いって。ま、それしか出来ないし。」
楽にしなサルマ。君は若くて可愛いよ。
近所に魔物が増えたら、皆でここから逃げてしまえ。うん?もしかして逃げるのも苦労するのか?やれやれ、人間て大変だな。
あ、サルマがちょっと笑った。
「アズサは人間くさいなあ。」
はい?この青い霧にそれを言いますか。
「なんとなく、見た目どおりの女の人みたい。」
ええ、前世はこの見た目どおりの女の人でした。あ、もしかして。そのせいで、君は私を警戒しないのか?中身は立派な魔物なのに。
あちゃあ、美人局とかに引っ掛かるぞ…。
女難には気をつけろよ、サルマ。
私は話を誤魔化すように、会話を急転換させた。
「窓、もう閉めようか。」
「うん?」
「明日、早いよ。朝になったら起こすからね。早めに寝た方が良い。」
「…わかった。」
「おやすみなさい。」
「おやすみ。」
1日目の夜。私とサルマは台所で食事をとって、与えられた部屋に戻った。
部屋は1つで、マットレスが2つぎゅうぎゅうに入っているだけの小さなものだ。
換気が悪いので、今はしばらく窓を開け放し、強めの夜風を部屋に通しているところ。
「サルマの先生って、お国がよこした調停者なんだよね?
和解を進めるシナリオとかはあったの?」
「今回は、現状把握だけってことだった。
初回で成果なんて誰も期待してないよ。」
壁にもたれて、マットレスの上に座るサルマ。私は窓の前で鯉のぼりになっている。
霧の本能なのかね。ふわふわ浮かんでいると落ち着くのだよ。
ああ、こうして2人でいると落ち着くな。
ボロい館の片隅で、なんだか秘密基地に立て込もって悪さをする小学生に戻った気分だ。
私の和みはここにある。
「アズサ。」
「ん?」
あ、サルマこっち見てるよ。
「話し合いが、また失敗して。争いが続いて、領内の魔物が増え続けたとして。
魔物と人間は共存出来るかな?」
暗い部屋の中で、チラチラ光るサルマの目。綺麗だな。
「う~ん、呼んだ魔物によるなあ。
無害な奴は無害だし。食事がいらない連中なら、人間を食べようとは思わないし。
でも、そもそも身近な生き物に干渉するのが人間て生き物だからね。
相手が魔物の場合、下手につついて結局、人間の方が痛い目見そうだね。
あー、オブラートに包んで言ったけどさ。
大前提として、もしもここが私の生まれた森みたいに魔物だらけになったなら、この地の人間は絶滅するよ。」
「そうか。やっぱり難しいのか。」
私は宙に浮かんだまま、サルマの顔を覗きこんだ。
弱いサルマ、出来ることが多くはないサルマ。穏やかな顔の半分は、諦めだったりするのだろうか。
諦めて、でもどうにもならないから、仕方なく足掻く。人間の人生。
君はどう足掻くのだろう。
「生き残りたいかい?」
サルマは黙って頷いた。
「誰だってそこは同じだよ。
仮に熊さんや鳩さんが我を失って、自分たちの生存環境を守るより、相手を傷つけることに夢中なんだとしても。
きっと誰かが正気に帰る。魔物を呼ぶのを止めるようになるさ。
誰も正気に帰らなかったら、彼らはただ淘汰されるだろう。
自然の掟は厳しいよ~。だから、彼らのことを気に病むのは止めといで。
自分に出来ることだけ、やっとけば良いって。ま、それしか出来ないし。」
楽にしなサルマ。君は若くて可愛いよ。
近所に魔物が増えたら、皆でここから逃げてしまえ。うん?もしかして逃げるのも苦労するのか?やれやれ、人間て大変だな。
あ、サルマがちょっと笑った。
「アズサは人間くさいなあ。」
はい?この青い霧にそれを言いますか。
「なんとなく、見た目どおりの女の人みたい。」
ええ、前世はこの見た目どおりの女の人でした。あ、もしかして。そのせいで、君は私を警戒しないのか?中身は立派な魔物なのに。
あちゃあ、美人局とかに引っ掛かるぞ…。
女難には気をつけろよ、サルマ。
私は話を誤魔化すように、会話を急転換させた。
「窓、もう閉めようか。」
「うん?」
「明日、早いよ。朝になったら起こすからね。早めに寝た方が良い。」
「…わかった。」
「おやすみなさい。」
「おやすみ。」
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