毒が効くまで長すぎる

ねね

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19 罪ある者共の言うことには

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 「俺たち一般人は、魔物に襲われたらひとたまりもない。

 それなのに。人が死んでいるのに。
 力がある者たちは、動いてくれないんだ。

 自分たちが無事な間は、所詮、他人ごとなんだよ。

 アズサに出会って、アズサの毒に気がついて。それで…やってやろうと思った。」

 うーむ。口のうまい奴め。
 やってることは立派なテロだけど。

 サルマが、1人の人間が、弱いことはわかってる。弱さを盾にとられると、どうにも責めづらい。

 あー、責める、ねえ。
 ちょいと頭を仕切り直したいところだな。

 ここでお互いの罪を問うても、生産的じゃないだろう。

 そもそも断罪とは、何らかの被害を受ける者がやることだ。およそ被害など受けない私がする事ではない。

 それじゃ。
 今からでもできることって、何かあるの?

 トホホ、面倒臭いけどしょうがないよ。
 地道にひとつずつ確認していくか。

 「あの人たち、治せないの?」

 「治療魔法が使える人間は、国の中央部にしかいない。

 魔法でなければ通常の治療だけど…。

 見たこともない魔物の、初見の毒となると、治療法はないな。

 毒を遠ざけ安静にして、あとは体に任せることになる。」

 うわあ、毒と体の肉弾戦か。
 え、えげつない。

 それなら私に治療できるのか、と言うと。

 体の内部を変質させるのは簡単だけど、何をどう変質させるのかわからないのがちょっとね…。

 だって生きてる体でしょ?下手すると、毒じゃなくて体を弄ったせいで死にそう。

 おまけに変質させるには、私、つまり青い霧たる毒ガスが体に入る必要がある。

 もう治療じゃなくて介錯だよね、それ。

 つまり、治してあげるから無かったことにして、というのは不可能ってことか。

 「結局、何人くらい死ぬと思う?」

 「わからない。ただ、護符がこれだけ黒いと、誰も死なないってことはないだろう。」

 「ふむ。では、仮にお望み通りにご領主が亡くなったとして。

 それで、魔物の問題が収束していく見込みはあるのかな?」

 「……」

 はいはい。見込みは、別になさそうだ。
 う~、行き当たりバッタリな若者め。

 良いように事が進む保証は、何処にもない。

 領主を失った領内は、より混乱するかもしれない。強者を失った"赤熊"や"白鳩"たちは、統制を欠いて暴走するかもしれない。

 結果的に、サルマが愚かで無責任な選択をしたことになる可能性はとても大きい。

 それは嫌だな、私としても。

 私の殺人に対する罪の意識は、人間だった頃に比べると、おそらくかなり薄いだろう。

 それでも、毒ガスにだって多少の良心はあるのだよ。

 「わかった。

 じゃあ私は、このことができるだけ手を貸そう。

 要は、魔物の被害が抑えられれば良いんでしょう。

 私の知能ある毒ガスを提供するよ。2人で考えれば、いろいろできるんじゃない?」

 面倒だけど、しょうがない。
 それが私の贖罪だ。

 ついでに君の贖罪にもなると良いんだが。

 サルマはニッコリと笑ってこう言った。

 「ありがとう。恩に着る。」

 あーーーもう。やっぱり可愛いな。

 血腥くない君が好きだったんだけど。

 どうも、穏やかでさえあれば、私の好みからは外れないみたいだ。

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