毒が効くまで長すぎる

ねね

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18 実は…

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 井戸が汚染、とは?

 右から左に音が抜けていった私を、サルマはじっと見詰めてくる。

 「アズサは」

 うん?

 「自分が毒持ちだってわかってる?」

 「え、どういうこと?」

 サルマが長いため息を吐いた。

 「………自覚なしか。やっぱりな…。」

 そして、とんでもない爆弾発言をしてくれたのだ。

 「アズサには毒がある。詳細は分からないけど、命に関わる毒だ。」

 彼は左手で、右手の手首に巻いた紐を差し示した。

 「これは、毒避けの護符なんだ。

 薬の研究をしている時に自分で作ったもので、普段は白色、強い毒に晒されると色がつく。

 黒は、致死量を越えてるって意味になる。」

 それ、現在進行形で真っ黒いな。

 「そう。アズサに会ったときから、ずっと黒い。

 だけどアズサに悪意があるようには見えないし、昨日は、誰にも何の異変もなくて。

 護符がおかしくなったのかと思ったよ。

 どうやら単に、毒の症状が出るのが遅いだけみたいだな。」

 え、私って毒ガス拡散させてたの?
 いやいやいやいやいや。

 毒ガスってもっとこう、即効性あるんじゃないの?目がチカチカするとか、喉が痛いとか、気体らしい刺激があるんじゃないの??

 麻痺に嘔吐って…フツーに生物の毒じゃん。

 いや、魔物の毒なんて得体が知れないし。ありえないとまでは言えない、のか?

 「でも、おかしいよ。だって今まで、私の毒で死んだ魔物は、いなかった、はず。」

 「アズサの毒は遅い。

 アズサは食事が要らないから、狩りもしないんだろう?同じ魔物を、何日も追跡してみたことはあるの?」

 「…ない。」

 げ。私、自覚なしに生物虐殺してた?

 あ。確かに、毒ガスなら気体だから、広間の結界を越えて拡散できるよね。

 麻痺の被害は、広間の中央部が酷かった。ちょうど私のいた辺りが…。

 あの意味不明な麻痺攻撃は、私か!

 うわ、もしかして私、とっても有害な魔物だったんだろうか。

 あああもう、ありえない!言われるまで気づかないとか…。

 だって私、なんの攻撃もしてないし!

 えーーーっ、これって有罪!?納得出来ないんだけど!!

 ん?待てよ。でも、そうすると。

 「サルマ、体調は?」

 「今のところ問題ない。」

 「頭は?」

 「……」

 「いやさ君、私が毒物だって解ってて、お館に引き入れたよね。

 今のところ、足が痺れたくらいの被害で済んでいるけど。

 致死量を越えているのなら、いずれは死人が出るよ?」

 「ハッキリ言うね…。」

 サルマは私を見て、口許だけで小さく笑ってみせた。

 「あー…。何も、考えてなかった。」

 ただちょっと、連れてきてみただけで。

 俯き加減の上目遣いで静かにこちらを見るサルマ。

 うっ、甘えん坊か。つ、ツボに入った。

 でもねサルマ。
 君に悪意がなかったと言うのは苦しいぞ。

 だってバッチリ確信犯でしょうが、君。

 私が毒ガスだってこと、最初から解ってたんだよね?

 「じゃあ、これから君を連れて水汲みに行こうか?

 私は毒物だけど、君を連れて行けばなんとかなるでしょう。」

 じっと黙って顔を覗きこみ、サルマの返答を促す。やがて、サルマは静かに話し始めた。

 「行かないでくれ。俺も、行かない。

 村が3つ4つ潰れるより、ご領主が襲われたってほうがよっぽどインパクトがある。

 うまくすると、"赤熊"も"白鳩"もお家取潰しにできるかもしれない。

 …死人が出るまで、放置しよう。」

 うわ。そうきたか。

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