冥界の愛

界を越える

なんて変わった花なんだろう？

可愛いい薄紅色の花のルクリアだと思った。ほのかな甘い香りもさせてる。本当なら可愛らしい妖精が座っている花木なのに。
だけど、どうしてそんなに冷たい光をまとっているのか？
まるで昔話に聞いた絶望の木に咲く花の様に。
元気がないのかしらと、手を伸ばして力を流し始めた途端に　物凄い力で花に引き込まれる。


あ、あ、あー　どうしよう。


あまりの力で掴むものもなく手が空を切る。びっくりして怖くて声も掠れてしまって


「い、いや　嫌！」


落ちてゆく。え？どこに？崖なんてない野原だったのに
本当に落ちてるのか。どこかに引き込まれている、真っ暗な闇の中に。



「キャーー　助けて お母さま」


あぁ今ごろになってようやく声が出たが遅かった。






=○


　　大地の神　デーメテール

豊穣の祈りの儀式の中。
両手を大地に向けて力を注いでいたが、急に顔を上げたデーメテールは酷い様子だった。
　突然の動悸　冷汗　呼吸困難　胸の痛みがデーメテールを襲った。

何が起こっているのか？

とにかく、あの子だわ。何かあったに違いない。　助けに行かなければ。

　お気に入りの野原に行ってたあの子に守りとして付けていたニンフ達が、儀式の最中にも関わらず　制止を振り切ってこちらに飛んでくる。

　待って落ち着いて。一人ずつ話して、お願い。ニンフ達に問いかける。
とにかく無事？どこに行ったのか？誰のせいなのか？　わかる事はないの？　突然消えたって、、花に飛び込んだ？？
花？？見たことのない変わった花？
　
　そうだ


　「  界を越える花だわ  」