冥界の愛

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グーでは不味い✊

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俺んち冥府宮って言ったら、お嬢さん真ん丸目が可愛いなぁ。
まぁさっきから 主の所に案内するって言ってたから、まさか本当に俺の宮殿だなんて思ってないと思うけど。

「 一応これでもここに住んでるし、事務的な事は任されてるけどね」
ってちょっと言い訳みたいに話すと、

「 へぇ ミノスさんは お偉い方だったんですね。」

えっへん!地獄で威張る俺ミノ助!ハハハ

「 ほんとは 雑務一般の雑用係みたいな下っ端なんだけどね。
後は主な仕事ってのは、冥界にやって来た人達の愚痴聞き?
言い訳聞き?後悔の涙に一緒にウンウンって言ってあげること?
まぁ 言うなれば カウンセラー?みたいな事してるのが多いかなぁ。
時々嫌になって逃げ出すのに、地上にお使いとかの仕事があればウキウキして行くけどね。」

( 俺の宮殿かー 懐かしい響きだな ) 
そんな事を思い出してると自然とペースが落ちていた。






ミノスさんの長い足でも私に歩調を合わせてゆっくりと歩いてくれてる。
そして神殿の奥へ奥へと進んで行く。

そのうち一つの重厚そうな扉の前で


「  ハデス様 お客様をお連れしました。」

と、ゆっくり扉を開ける。


アーーーーいよいよだわ。
イヤだわ 緊張して来た。
そうだわ、自己紹介できないんだもの。



ドアを開いた途端に

「 ミノ!どこに道草くってたの?
仕事溜まってるわよ! 」

あら?冥界の王様って女王様だったのね?知らなかったわ。ハデス様って怖いお顔って聞いてたけど、随分と若いお綺麗な女王様なんですね~

そう思ってたら
「ん?その子だれ? え?えー!?あんた誰を連れて来てるの?」

すんごく美人顔を顰めて睨まれる。やっぱり怖いわ、王様。

「 あれ?主は?」
そうミノスさんが女王様に聞くから、

「  え?この方がハデス様ではないんですか?」
っておもわず聞いてしまった。


あー 美人さんって眉間にすんごい皺を作っても美人なんだなぁ。でも何か挟めるぐらいのシワに、さっきの森の松葉ぐらい いけるか?って不謹慎な事考えてるのがバレたのか ミノスさんが何処からか小枝を持ってきた。

は、は、挟むの?ホントに?

バチーン!
良い音が、響き渡った後のミノスさんの頬っぺたは真っ赤に腫れてた。しかも小枝は部屋の隅に吹っ飛んでた。
この方スゴイ、やっぱり女王様?

握った拳が震えてる。もうやめた方がいいわミノスさん。あれ、グーでいかれたら痛そうよ。

「 わかった、悪かった。やめろ、
やめて下さい。 ヘカテー様~お願いします女神様~」

そっか、ヘカテー様って言うのね。

ミノスさんが ヘカテーさんに事情を話してくれてる。記憶が無くて名前を名乗れないってこんなに不便なんだ。


私からもお願いする。

「 お手数おかけします。まずは、何とか色々思い出して、それからうちに?帰りたいんです。
ハデス様なら教えていただけるんでしょうか?」

ヘカテーさんがまた目を細めて言う。
「 あなた、本当に記憶がないの?」

「 はい。でもこの冥界の事はきっと知らない事だらけなので、こことは違うところから来たんだと思うんです。あんな舟って言うのも見た事はあっても初めて乗ったと思います。」

「ハデス様の事は?会った事はなくても聞いた事ぐらいあったでしょ?」

「 初め、あなた様の事をハデス様って方だと思いました。ミノスさんがここに居るっておっしゃっていたので 」

ヘカテーさんは振り返ってミノスさんに尋ねた。

「ミノ!何も説明してないの?」

「  何もって、何を?  」

すると近づいて言って何かお二人で話し始める。やっぱり私には聞かれるとまずいんでしょう。そっと窓際に寄ってお二人から離れます。


「 あんた!この子の事、本当に誰だか知らないの?
それで、のこのこ連れて来たの?」

「 は?何言ってるんだ。そんな有名人?」

「 有名人って。はぁ お前いい加減にしろよな  」

「 し、し、知らないよ。その拳を握って話すの辞めろよ。グーでは不味い✊。パワハラには断固抗議する!労働基準監督署にパワハラ上司として訴える! 」


「 また訳の分からない事言い出して!誤魔化そうとしてるんじゃないよ。」

「 こんだけ輝いてるから、人でなくて神 、それも高位の神だろうってはわかったけどな。
そうだ、あの界渡りの花に力を入れて治そうとしてた。」


「  界渡りの花?お前が何よく監視カメラだって言ってる花のことか?
ハデス様が篭って見ているとモニタールームでチェックしているって言うよな?

あの花でこっちまで来たんだ。そうだ、あれって一時的に記憶無くす様になってるものな。私も気をつけよう。」


「 とにかく、主に会わせてよ。主が俺に探しにいけって命令来たんだけど。」

「 今 天界から使者が来て応対中だ。」

「 へぇ ヘカテーさんじゃなくて主が自ら会ってるの?
じゃあ、もしかしてヘルメスが来てるのか?
俺も見てこようと。お嬢さんの事ここで見ててくれる?
ついでにお嬢さんのこと報告してくるから。」

「 いや、いい。私がハデス様に報告しよう。お前はここで一緒に待っていろ。
いいから!お前わかってないんだろう?あぁ、わかった、わかった。記憶が無い事もなんとかしてもらうから。」


そう言うと、私をジッと見てから

「ハデス様に報告に行くけど何かないか?」
と聞いてくれる。
お二人での話しあいは終わったようね。

私はカロンのお爺さんの話を思い出して胸に仕舞っていたヒガンバナ科の花を差し出した。

「 この子を治せるのはハデス様だけだと聞きました。萎れてしまったのは、私のせいかも知れません。私では 元気にならなくて。
この子をよろしくお願いします。」


そう言うと、ヘカテーさんは私とヒガンバナ科の萎れた花を少し見てから

「 わかった。ハデス様にお渡ししよう。」

でも、




「 お嬢さんは、男性に萎れた花を渡す意味をわかってる?」


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