17 / 107
グーでは不味い✊
しおりを挟む俺んち冥府宮って言ったら、お嬢さん真ん丸目が可愛いなぁ。
まぁさっきから 主の所に案内するって言ってたから、まさか本当に俺の宮殿だなんて思ってないと思うけど。
「 一応これでもここに住んでるし、事務的な事は任されてるけどね」
ってちょっと言い訳みたいに話すと、
「 へぇ ミノスさんは お偉い方だったんですね。」
えっへん!地獄で威張る俺ミノ助!ハハハ
「 ほんとは 雑務一般の雑用係みたいな下っ端なんだけどね。
後は主な仕事ってのは、冥界にやって来た人達の愚痴聞き?
言い訳聞き?後悔の涙に一緒にウンウンって言ってあげること?
まぁ 言うなれば カウンセラー?みたいな事してるのが多いかなぁ。
時々嫌になって逃げ出すのに、地上にお使いとかの仕事があればウキウキして行くけどね。」
( 俺の宮殿かー 懐かしい響きだな )
そんな事を思い出してると自然とペースが落ちていた。
ミノスさんの長い足でも私に歩調を合わせてゆっくりと歩いてくれてる。
そして神殿の奥へ奥へと進んで行く。
そのうち一つの重厚そうな扉の前で
「 ハデス様 お客様をお連れしました。」
と、ゆっくり扉を開ける。
アーーーーいよいよだわ。
イヤだわ 緊張して来た。
そうだわ、自己紹介できないんだもの。
ドアを開いた途端に
「 ミノ!どこに道草くってたの?
仕事溜まってるわよ! 」
あら?冥界の王様って女王様だったのね?知らなかったわ。ハデス様って怖いお顔って聞いてたけど、随分と若いお綺麗な女王様なんですね~
そう思ってたら
「ん?その子だれ? え?えー!?あんた誰を連れて来てるの?」
すんごく美人顔を顰めて睨まれる。やっぱり怖いわ、王様。
「 あれ?主は?」
そうミノスさんが女王様に聞くから、
「 え?この方がハデス様ではないんですか?」
っておもわず聞いてしまった。
あー 美人さんって眉間にすんごい皺を作っても美人なんだなぁ。でも何か挟めるぐらいのシワに、さっきの森の松葉ぐらい いけるか?って不謹慎な事考えてるのがバレたのか ミノスさんが何処からか小枝を持ってきた。
は、は、挟むの?ホントに?
バチーン!
良い音が、響き渡った後のミノスさんの頬っぺたは真っ赤に腫れてた。しかも小枝は部屋の隅に吹っ飛んでた。
この方スゴイ、やっぱり女王様?
握った拳が震えてる。もうやめた方がいいわミノスさん。あれ、グーでいかれたら痛そうよ。
「 わかった、悪かった。やめろ、
やめて下さい。 ヘカテー様~お願いします女神様~」
そっか、ヘカテー様って言うのね。
ミノスさんが ヘカテーさんに事情を話してくれてる。記憶が無くて名前を名乗れないってこんなに不便なんだ。
私からもお願いする。
「 お手数おかけします。まずは、何とか色々思い出して、それからうちに?帰りたいんです。
ハデス様なら教えていただけるんでしょうか?」
ヘカテーさんがまた目を細めて言う。
「 あなた、本当に記憶がないの?」
「 はい。でもこの冥界の事はきっと知らない事だらけなので、こことは違うところから来たんだと思うんです。あんな舟って言うのも見た事はあっても初めて乗ったと思います。」
「ハデス様の事は?会った事はなくても聞いた事ぐらいあったでしょ?」
「 初め、あなた様の事をハデス様って方だと思いました。ミノスさんがここに居るっておっしゃっていたので 」
ヘカテーさんは振り返ってミノスさんに尋ねた。
「ミノ!何も説明してないの?」
「 何もって、何を? 」
すると近づいて言って何かお二人で話し始める。やっぱり私には聞かれるとまずいんでしょう。そっと窓際に寄ってお二人から離れます。
「 あんた!この子の事、本当に誰だか知らないの?
それで、のこのこ連れて来たの?」
「 は?何言ってるんだ。そんな有名人?」
「 有名人って。はぁ お前いい加減にしろよな 」
「 し、し、知らないよ。その拳を握って話すの辞めろよ。グーでは不味い✊。パワハラには断固抗議する!労働基準監督署にパワハラ上司として訴える! 」
「 また訳の分からない事言い出して!誤魔化そうとしてるんじゃないよ。」
「 こんだけ輝いてるから、人でなくて神 、それも高位の神だろうってはわかったけどな。
そうだ、あの界渡りの花に力を入れて治そうとしてた。」
「 界渡りの花?お前が何よく監視カメラだって言ってる花のことか?
ハデス様が篭って見ているとモニタールームでチェックしているって言うよな?
あの花でこっちまで来たんだ。そうだ、あれって一時的に記憶無くす様になってるものな。私も気をつけよう。」
「 とにかく、主に会わせてよ。主が俺に探しにいけって命令来たんだけど。」
「 今 天界から使者が来て応対中だ。」
「 へぇ ヘカテーさんじゃなくて主が自ら会ってるの?
じゃあ、もしかしてヘルメスが来てるのか?
俺も見てこようと。お嬢さんの事ここで見ててくれる?
ついでにお嬢さんのこと報告してくるから。」
「 いや、いい。私がハデス様に報告しよう。お前はここで一緒に待っていろ。
いいから!お前わかってないんだろう?あぁ、わかった、わかった。記憶が無い事もなんとかしてもらうから。」
そう言うと、私をジッと見てから
「ハデス様に報告に行くけど何かないか?」
と聞いてくれる。
お二人での話しあいは終わったようね。
私はカロンのお爺さんの話を思い出して胸に仕舞っていたヒガンバナ科の花を差し出した。
「 この子を治せるのはハデス様だけだと聞きました。萎れてしまったのは、私のせいかも知れません。私では 元気にならなくて。
この子をよろしくお願いします。」
そう言うと、ヘカテーさんは私とヒガンバナ科の萎れた花を少し見てから
「 わかった。ハデス様にお渡ししよう。」
でも、
「 お嬢さんは、男性に萎れた花を渡す意味をわかってる?」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
異世界の花嫁?お断りします。
momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。
そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、
知らない人と結婚なんてお断りです。
貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって?
甘ったるい愛を囁いてもダメです。
異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!!
恋愛よりも衣食住。これが大事です!
お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑)
・・・えっ?全部ある?
働かなくてもいい?
ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です!
*****
目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃)
未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる