冥界の愛

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お、も、て、な、し って何?

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しばらく経つと、ヘカテーさんが戻って来た。


「 随分と待たされたけど。ヘルメスの奴、そんなややこしそうな案件を持ってきたのか? 」

ミノスさんがヘカテーさんに尋ねた。

「 さっき 地上で地震があっただろ?」

「 いや~知らないな。舟の時かなぁ。」

「 どこから舟に乗った?」

「 うーん 忘却の河レーテ川のそばに倒れてるのを見つけてからはすぐに。そこから舟に乗ったけどな。」

「 そうか。じゃあ地上の地震は船上よりも もう少し前じゃないか。」


「  あー 俺 その時ちょっと飛んでたかも。あんまりいい記憶ねえんだけど、そこ飛んでる感じするわ。」

「 また?お前の時渡りはいつも突然だな。何か前兆とかは無いのか?
急に、いなくなると皆ビックリするから。」

「 今度のは一瞬だったよ、きっと。」

嫌な事を思い出して、避ける様にミノスさんは身震いした。


窓辺にもたれ掛かって話を聞いていたミノスさんに ヘカテーさんが急に詰めより、

「 ちょっと待て。舟って事はカロン殿か?
カロン殿は大丈夫だったのか?
この子を舟に乗せたって事は近距離だっただろう?あの方こそ大丈夫だったのか?
カロン殿は あの闇黒エンボス様と夜闇ニュクス様の息子だそうだ。
眩しすぎる光は我々よりも最もお辛いはずだぞ。」
 と、問いただす。
だけどミノスさんは呑気な声で返事する。

「それがさあ, まぁ確かに時々櫂を漕ぐのに少し辛そうな時はあったみたいだけどな。
このお嬢さんの事は随分と気に入った様で、本当に珍しくお喋りだったんだ。
俺は初めてカロン爺さんがあんなに話すのを聞いたな。
ね?お嬢さん。二人で楽しそうだったよね。」


急に話を振られて

「 はい。カロンのお爺さんにはご親切にしていただきました。」

と、ヘカテーさんに言うと じーっと見られた。


「 それよりヘカテー
もう お嬢さんを連れて行ってもいいのかよ?
それともハデス様はこっちに帰ってくるの?
まだまだ地震の後処理はかかりそうなのか?」

そう尋ねてるミノスさんではなく、私の方を向いてヘカテーさんがお返事してくれた。

だけど、


「 冥界の王ハデス様は、お忙しいからお客人とはお会いにならない。
お連れしなくてもよいとの事だ。

そのかわり、そのお嬢さんを [しっかりと 大切にもてなせ] との仰せだ。」



私が会えないんだと、ガッカリする前に隣のミノスさんが声を出した。

「  はっ?
連れて来なくてもいいって、どう言う事?
どうして会わないの? なぜ?W h y?
後で会うって事だよね?地震では死者がたくさんくるの? 」

「 いや、地震はあったが地震による死者はいなかった様だ」

「 じゃあ なぜ?」

「 だから言っただろう?主はお忙しいと。 そのかわり、もてなせと。」

「    お、も、て、な、し??   」


唖然とするミノスさんが、我に帰った様にハッと顔を上げてヘカテーさんに言い寄った。

「 待て待て!
とにかく このお嬢さんは記憶がなくて、自分の事も誰かわからないし、まず何よ元の世界に帰りたいんだよ。
どうするの?もてなされたくて自分からきた訳じゃないし。なんで、ほったらかされてるのか教えてくれ。」




「  ミノス、控えよ!
主が決められた事だ。言われた通りにせよ。」

ピシャっとヘカテーさんが言い放つ。


納得できない顔のミノスさんがまた何か言いかけるのを見て、私は

「 ありがとうございます。
お忙しい中 お取り次ぎいただきました。
とりあえず、ハデス様がお会いしてくださるまで 待たせて頂きます。しばらく?お世話になります。

ミノスさんも、お忙しい中ありがとうございました。
あと どこで待たせてもらえばいいのか?過ごさせてもらったらいいのか、どこは行ってはいけないのかなど教えて頂けないでしょうか?」

そう返事して頭を下げた。

ミノスさんは少し表情を戻してヘカテーさんに尋ねた。


「 わかったよ。
でも、主はこのお嬢さんが誰なのか、
見ればわかるんだろ?わかるなら教えてくれ。じゃないと、もてなし様もないだろ? 」


「 ミノは本当に知らないんだな 」

ヘカテーさんは厳しい表情を少し和らげて、またそう呟いた。





「  ヘカテーさんは 私の事を知ってらっしゃるのですか?」


私はヘカテーさんを見つめながら尋ねた。


すると、ヘカテーさんは ゆっくりと頷いた。

「  ハデス様も私の事をご存知なんですね?その上でお会いして頂けないと言うことなんですか?  」


私、そんなに神にも人にも嫌われる事は 今まであまり無かった。たぶん。


ヘカテーさんは何も言わずに ただじっと私を見てるだけだった。

「 教えてください。私は誰なんですか?私の名前を知ってるなら 教えてください。」






「          君の名は    」
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