50 / 107
種明かし
しおりを挟む全てを思い出した彼女は、こんなにも穏やかな笑顔の人だったのかと驚くぐらいだった。
「長い間、ご心配をおかけして申し訳なかったわ。ありがとうございました。」
と、ミノスに礼を述べた。
そしてコレーの方を振り返り、
「貴方のお陰で今回の旅を終わりにする事が出来たわ。本当にありがとう」
と笑顔を向けた。
コレーは首を振って、
「結局、私はただただ力を闇雲に流して側で聞いていただけだった。ミノスさんが教えてくれたから決断できたんでしょう?」と否定した。
「堅い堅い頑固な殻だったの。お嬢さんが破ってくれなかったら、どうしようもなかったわ。特に母との確執もどうしようも無いって思い込んでいたけど、お嬢さんの流れる力が元気と勇気をくれたのよ」
「 今回、夫となった人との関係もなかなか縁が深かったからこだわりが強かったけど、それも何度もミノス様の前で振り返って愚痴っての。そんな中でもどうすれば良かったのかを一緒に考えてくれてたの。ミノス様のお陰ね。
そうして最後にお嬢さんの優しさが殻を破らせてくれたわ。
本当にありがとう。」
彼女は涙を拭ってコレーの手を取ると、
「 私、この旅を少し反省したらまた新しい旅に行ってみようと思うの。」
「「「 え?もう? 」」」
って、あちこちから呆れる声やらビックリするが聞こえて
彼女とコレーは思わず笑い出した。
実に女は強い生き物ね。
苦しんだら悲しんだらその分強く強くなる。
これ以上? ハハハハハ
強くなって優しさを守れる様にならないと、ね?
次は、好きなように思うまま生きてみる。前のやりなおしなんかじゃなくてもいい。描いた幸せじゃなくてもいいでしょ。
愛深き者は余計に人の気持ちも察してしまい苦しみも多く、憎めば自分も余計に傷つく。
それを知ってるからこその次を目指そう。
彼女の気持ちが皆んなに伝わる。
やっぱり愛溢れる魂は此処でも慕われるんだ。彼女はあちこちでファンが多い。
「と、その前に、私の子ども達の事を確認して行きたいの」
と、彼女はミノスに言った。
しかし、
「此処での他の死者との接触は一切禁止されている事は分かっているだろう?
しかも他者とは、次元が違うから認識さえできないのも知ってるだろう?」
とミノスは答える。
「それでも様子を確かめずにはいられない。私の所為で苦しんでいないかと思うわ。」
「例え君の所為で苦しんでいたとしても君には何も手出しはできないとわかっていても良いんだな?そして次元が違うと見ることすらできないとなってもいる、いいんだな?」
「わかってる。その覚悟の上で確かめたいの。」
そうか。と言ってミノスはようやく微笑んだ。
「 残念ながら、かつての娘さんにはもう会えないな。娘さんはタッチの差でもう次に行ったよ。実はさっきまでここで見守っていたんだ。お嬢さんには小さな子どもが見えたかい?そうあの子だよ。
お母さんのことが心配で貼り付いていたんだけど、お母さんが救われて旅を終えたのを見ると安心して娘さんも次の旅に行ったよ。最後の伝言を預かっている。
『貴方の娘で良かった。ありがとう』
だったよ。」
あーあー、まだまだ涙が残ってるんだなぁ。
「無理だよ、もう会えないよ。知ってるだろう?
お嬢さんも泣きつかれてもこればかりはどうしようも無いよ。
だから、今生の出会いって言うんだ。
あそこでしか会えない。次の約束をした者しか会えない。
どんなに憎いと思ってる相手でも忘れているだけで、自分にとってかけがえのない人だって事だ。
ただ、それがどんな立場として会うかはここで決めた通りで。何度も失敗をまた向こうで繰り返すことなんてよくあるよ。
でも、いつかはその失敗を超えていけるんだろうとまた立ち上がる。
そう貴方みたいに。
その強さこそ、この魂の成長システムを作り出したんじゃないか?
どっちかと言うと、うちの冥界の主は甘い方だから。散々ここで長い間甘やかして慰めて慰めて。
次に、ここから転生しに送り出すときにあの方がどんなに 俺たちがどんなに君を心配して送り出したかわかってほしいね。忘れるだろうけど、忘れないでハハハ。
君の娘さんであった人は、君に似て強い人だったよ。
『良かった。またいつか会えるわ』って言って去って行ったよ。
あぁ息子さんはもっと早くに転生して行ったよ。あの子は父親との縁を今度こそ父が再生したらもう一度って言ってたけど。そうそう上の息子さんの方ね。
下の息子さんとは不思議な縁だったでしょう?気づいてなかった?
まぁそれもいつの日か種明かしがあるから楽しみに待っておいでよ。」
ミノス裁判官が、判決をくだす。
(彼女の卒業証書授与式)
「 長きに渡って苦しんだ貴方はもう自分を赦すことができました。
愛深き者は苦しみも多く、憎めば自分も傷つくことを誰よりも学びました。
そして多くの愛を人に与えてくれました。
貴方の言う通り、
次は、好きなように思うまま生きてください。やりなおしなんかじゃなくて、描いた幸せじゃなくてもいい。
主文
貴方を無罪として次の旅に送り出します。
以上、これで閉廷とします。」
ミノスは心から彼女に「良かったな」と別れを告げた。
泣きじゃくるコレーの前に彼女が来て、最後のお願いをする。
「ありがとうお嬢さん。忘れないわあなたの事。お名前を教えていただける?」
待って、名前をもらってきます!
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
異世界の花嫁?お断りします。
momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。
そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、
知らない人と結婚なんてお断りです。
貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって?
甘ったるい愛を囁いてもダメです。
異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!!
恋愛よりも衣食住。これが大事です!
お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑)
・・・えっ?全部ある?
働かなくてもいい?
ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です!
*****
目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃)
未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる