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では、天界の噂話とは?
しおりを挟む~とある昼下がり 有閑マダム達のお茶会にて~
「ところで、お聞きになりました?ほら?最近さる高貴なるお血筋の御子神がお隠れになっていたでしょう?」
「あら?お隠れになったのは母親の方でしょう?」
「えぇ、そのせいで皆 随分と迷惑を被りましたわ」
「本当に、迷惑だとお気づきにならなかったから、あんな風に人間界をめちゃくちゃにしたのでしょう?」
「そうですわよね。お陰で私の神殿にも供物が無くなるどころか、助けてくれと毎日の様にうるさくやってきましたわ」
「我々、神の命は特には地上の食べ物が無くても困らないと、この時にこそ神の偉大さを示す時だったでしょう。たまに忘れているのか?こちらに生意気にする反抗するいやしき小さき物どもがいてるわ。いっそのこと全て無くしてしまって、また入れ替えをしても良かったのではなくて?」
「まぁまぁ。えらく過激なお言葉ね。それでは少ーしだけ困るわ。私は最近のキリヤーニの赤ワインはなかなか気に入ってますのよ。だから今年の葡萄の収穫が望めなくて、お供えできませんと聞いた時には あのいい子ぶる偽善女を恨みましたわよ。」
「オーホホホホ、あの高貴なる女神と言われるデーメテールでも貴方にかかれば偽善野郎の猫被りってわけなのね。でもね、私もあのカマトト女は大っ嫌い。」
「あらあら、妻たちの嫉妬は王神がお許しにならないわよー。ふふふふ」
「わたくし、全知全能ゼウス大神の妻ではございませんが、あの女神は好きにはなれませんわ。これは嫉妬ではないですわよね?」
「そうですね。ただ男性には随分とあの偽善に騙されてる方が多いですわ。」
「ほんと、それが決して嫉妬ではないですが悔しいわ。男なんてコロッと騙されるんだから。ほんの少しだけ考えればどれだけ嘘ばかりなのかわかるのにね。」
「きっと、あの大きな胸からも虫が出すフェロモンが出てるんでしょう?まるで媚薬の様ね」
「今回の、たかだか娘が迷子になっただけで、これだけ地上界に災いをもたらせたでしょう? その責任をお取りにはならないのかしら?それに関してはゼウス様は何と仰ってるの?」
「ハン! 責任も何も。『あの娘に何もなくて良かった。それにしても、改めて怒らせてはいけない最上格の大地の女神だね』なんて仰るものだから、私も悔しくて悔しくて! 思わずあの女の他の子どもの事を危うく口にしそうになったわ。
あいつは、自分の他の子は見捨ててきたのに、何が我が娘が行方不明で傷心よ!そんな風に見せてるだけの嘘つき女よ!ってね。」
「まぁそれは一応 タブーとされる話だわ。御法度に触れる禁語ね。名前を出してもいけないとされていますものね~」
「その話はその辺りにしておかないと、脳天に雷電が落ちるわよ。決して脅しでは無くてこれ以上は本当にヤバいわよー」
「わかったわ。でも、悔しくて」
「えぇ。そのお気持ちとってもわかりますわ~」
「それにしても、こんな風に災いを起こしたにもかかわらず、地位も揺らがないとは。何故あの女だけ皆特別扱いなのか。」
「でも、王神の王妃はヘラ様ですわね」
「そうですわよ。我々、女神の中で君臨するのは王妃であられるヘラ様だけですわ。それをゼウス王神が認めておられるのですから」
(そう!あの時も! 私が罠を仕掛けたり噂を撒いたりして、ようやく王妃の座からあの女を追い落としたのに。誘惑しておねだりして王妃になる様に私が動いたのに。それなのに最初、姉の所に王妃になる様に求めて行ってしまった。どれだけ私が怒り狂ったのか!帰ってきて天界の庭を見れば理解したでしょう。
それでも、あの女に断られて漸く私に王妃として求婚してきたわ。甘い声と熱い視線を送られてお受けしたけど。結果、私がトップだわ。それだけの実力威厳もあるし血筋は何も問題ないんだから。
ただ、こんな風な事があると、あの時の事を ゼウス様がデーメテールに求婚しに行く後ろ姿を思い出して怒りで火がついてあちこちが火事になるわ。私は処女さえ貴方に捧げてずっと幼い頃から見つめてるのに。)
「そうかも知れないですね。王妃となるにはその処女性も資格にあるのかもしれませんね」
(考え込んでいた様で途切れていた皆の話が、ふと聞こえた。それとも私が処女を捧げたと声に出てたかしら? ゼウス様はあまり処女かどうかは気にしないと思うけど)
「そうよ!だってただ、お手をつけるだけならば偉大なるゼウス王は、人妻だって構わないけど、次の後継者として王子としては処女ならば確実に王の子種、系統ですものね。 あらいやだわ。こんなあからさまに私ったら。おほほほほ ごめんあそばせ」
「じゃあ、この次の後継者としてはあの女の娘がこのまま王妃のとして妻になる事はないわね?」
「「「え!!、どう言う事??」」」
「え~だって~~
長いこと どこに行っていたのか行方不明だったのでしょう?
そんな長い間攫われてる様な場合は、まず処女性は諦めるでしょう。無事に帰ってきただけで良しとしないと。これって常識ですわよね? 」
「あーーー 成る程ね。」
「確かにそうかも知れないわ」
「まぁ それが一般的な意見よね?」
「あらー皆さま随分と悪い顔をなさってますわよ~」
「まぁ、人が悪いわ。そんな事を言うなんて。そう言う貴方こそ次代の王を息子にと考えてるんじゃありませんか?それにはあの娘が居るとか仰ってませんでしか?」
「あなた、何をいってるの!そんな事を仰るなら、もううちに来てバカみたいにワイン蔵を開ける様な事はなさらないでちょうだい!」
「まぁまぁ、今はそんなケンカはおやめなさいな。それよりも、あの攫われた娘は 次代の王の候補の妃として、相応しいか相応しくないのかを、我々の意見として正式にゼウス様に訴えれるのかどうかを話し合いましょうよ」
「まぁハッキリ仰ったわね。でも、そんな少し考えれば、散々嬲り物になったかも知れない娘を、正式な王妃にする事は無理だなんて誰でもわかる話じゃないかしら?」
「あら?貴方のところには娘様がいらっしゃるのよね?」
「いやだわ、それは誤解だわ。何もうちの娘が次代の王の妃にとは言ってないわ。ただ、十分うちの娘ならば候補に入れてもらっても、恥ずかしくない様に育ててますって事はここでハッキリさせててくださいませ」
「それにしても、本来なら正妃が産んだ男神の中から後継者として次代の王をお選びになるのでしょう?
その事に関しては、我らの王は何か仰ってるのかしら?」
そして、視線が遠慮なくヘラ妃に注がれる。しかし、皆が明言しないのも正妃は今までヘラだけではなかったからだ。
現に前王妃の子である太陽神アポロンが、次代の王となるその座に一番近いと噂されていた。実力も美貌も人望も兼ね備えているからだ。
それに加えてあのデーメテールの娘を妻に迎えるとなると、ますます噂が信憑性を増すだろう。
今回、冥府宮にゼウス様の命で使者として遣わされたのはヘルメスだった。ヘルメスは何よりも太陽神アポロンの忠実な子飼いだ。そこにデーメテールから娘のコレーと、ゼウスからヘルメスを使い息子のアポロンと、この二つの繋がりを見せつけられた。これではもう確実に決定だと思っていた。
しかし、その出来レースと見られた後継者の妻候補について、こうしてみると思わぬところで躓きが出てきた様だ。いや、これを『つまずき』として皆の口に上らせれば。最初こそ難癖と思われるかも知れないがその内に不祥事、傷者としてあのデーメテールの娘は王妃レースからは脱落するだろう。
これでは、ひょっとしてひょっとすると、次代の王の後継者としての候補選びにも、あちこちと揺るいでくるのではないか?本命のアポロンが一緒に転ける可能性もある。かと言って正反対のヘラの息子のアレンでは問題が多すぎる。
実際、王妃としてのヘラの性格でさえ上に立つ者としての素質が全く無いと、度々に皆が不満としてゼウス様に訴えている。まぁあれは無いよなと思う案件が何度もあった。
次、もしも何かしたらその出産の働きの権力を取り上げるだろうと噂されていた。
どれだけ影で陰険な事をしているのか?考えるだけでも身震いする。そんな王妃の息子が次の我らの神々の王だなんて。
皆、何か先行きが怪しくなった方が、椅子取りゲームの椅子をゲットする可能性があちこち広がるやも知れない。しかもゼウス王は何も言ってはいない。
皆の心の中では、色々策略が生まれ始めている。
「あらいやだわ。もう随分とお邪魔してしまった様ですわ。私、とりあえず今日はこのまま失礼させて頂きますね」
「では、私も。色々と用事を思い出して。」
「えぇ、私も。」「じゃあ、私も一緒に」
「では、これでお開きですわね。
今日の事を皆様もよ~くお考えになってまたお話ししましょう!」
口の軽い者ばかりだとしても、この噂がゼウスの耳にデーメテールの耳に入る様になるまで、早く自分の息子にはあの娘には近づかない様に言い聞かせておかないといけないわ。
そう皆が皆考えてた。
帰ったら、まずは息子を呼び出しと、娘に下手に求婚してくる者はしばらくその価値があるかどうかの見極めをしないと。ひょっとして正紀教育をする事になるんだから。その前に娘も処女かどうかの確認もいるわね。あぁ次代王は、ほぼ決まっているし、あのアレスに嫁にやるのも娘が不憫かもと思っていたので好きにさせていたけども。これは色々と状況が変わってきたわ。ひょっとしてひょっとすると、将来 あのヘラよりも私の方が偉い王の祖母とかになるかも。ふふふふふふふ、アハハハハハ
「なあに?私たちを呼びつけておいて。なんか悪い顔してるわよ」
気がつくと目の前に 苦笑いでそう言う娘と、顰めっ面した息子がいた。
さあて貴方達も戦闘開始よ!
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