アスカニア大陸戦記 黒衣の剣士と氷の魔女

StarFox

文字の大きさ
41 / 64
第三章 中核都市エームスハーヴェン

第四十一話 夜の海岸の遭遇戦

しおりを挟む
--翌日。

 ジカイラ達は、次の中核都市エームスハーヴェンへと向かうため、エンクホイゼンの宿屋を引き払う。

 宿屋から出発する時、孤児院のジェシカとキラーコマンドの少年達がジカイラ達を見送りに来た。

「色々とお世話になりました」

 ジェシカは、ジカイラ達に深々と頭を下げる。

 ジカイラは、ジェシカの肩に手を置いて話し掛ける。

「オレ達は、大したことはしていない。元気でな」

 ミランダが気恥ずかしそうにジカイラに話し掛ける。

「その・・・。ありがとう。色々と」
 
 モジモジとお礼を口にするミランダにジカイラは笑顔を見せる。

「次に会う時は帝都だな。良い女になれよ」

 そう言うとジカイラは、ヒナが待つ御者席に乗り込み、幌馬車を走らせる。

 幌馬車の荷台から、ケニー、ティナ、ルナの三人が顔を出して、ジェシカとキラーコマンド達に手を振る。

 孤児院のジェシカとキラーコマンドの少年達は、見えなくなるまで、ジカイラ達に手を振っていた。

 





 ジカイラ達の幌馬車は、エンクホイゼンの城門をくぐり、海沿いに北西街道を北上する。

 エームスハーヴェンは、エンクホイゼンから北西街道を幌馬車で二日ほど北に進んだ位置にあった。

 ジカイラの傍らに座るヒナの目に、沖合を航行する帆船が見える。

「わぁ・・・、船!」

 ヒナは、嬉しそうに帆船を指差してジカイラに話す。

 ジカイラも、ヒナが指差す船を見る。

 帆船はキャラックであり、四角く張った帆に風を受け、穏やかな沖合を航行していた。

「・・・そうか。『動いている帆船』を見るのは、初めてか」

「うん!」

 ヒナは、今まで港に停泊している帆船しか見たことがなかった。

 沖合を航行する帆船に目を輝かせるヒナにジカイラが解説する。

「あのサイズだと、中距離から長距離を航行するキャラックだろう。港湾自治都市群は貿易中継地だから、帆船の行き先は、新大陸か帝都だろうな」

「新大陸かぁ・・・」

 ジカイラの話を聞いたヒナは、まだ見たことのない地に想いを馳せていた。







--夜。

 ジカイラ達は、海沿いに伸びる北西街道の脇の砂浜で夜営を行う。

 昼間、御者をしていたジカイラとヒナは幌馬車の中で眠り、夜の見張りは、ケニーとルナ、ティナの三人で行うことにした。

 三人は、夜営の焚き火を囲みながら見張りを行う。

 夜の北西街道に人通りは無く、沖から浜辺に寄せては引く、さざ波の音だけが響いていた。

 カップの飲み物を口にしながらティナが口を開く。

「静かね・・・。波の音しかしない」

 ケニーも口を開く。

「夜の海って、何か怖いね」

 ルナも口を開く。

「何だか、引き込まれそう」

 言葉を交わしながら、三人は夜の海を見つめる。






 ルナが突然立ち上がり、獣耳けもみみを動かして聞き耳を立てる。

 ケニーも立ち上がってルナに話し掛ける。

「ルナちゃん、どうしたの!? 敵?」

 ルナは口の前に人差し指を立てて、ケニーに答える。

「シッ! 静かに・・・。複数の金属音!? ・・・・向こうから!!」 

 ケニーとティナは、ルナが指差した方角を見る。

 夜の帳の闇の中、蠢く複数の影。

 それらは、砂浜を夜営へ向けて迫って来る事がケニー達にも判った。

 ケニーは、両手でショートソードを抜いて構えるとティナに話し掛ける。

「僕とルナちゃんで敵の足を止める! ティナちゃんは、ジカさん達を起こして来て!!」

「判ったわ! 無理しないでね!!」

 ティナは、小走りで幌馬車へと向かう。

 ケニーとルナは、闇の中を近付いてくる影に向かって走る。






 闇の中からケニーとルナの前に現れたのは、粗末な槍や剣と盾で武装したゴブリンの集団であった。

 走りながらケニーがルナに指示を出す。

「ゴブリンの集団だ! 敵は五体!! 僕は右から! ルナちゃんは左から!!」

「了解!!」

 ケニーは、闇の中、音も無く走り寄ると、先頭のゴブリンの胸にショートソードを突き刺す。

 ケニーの奇襲に驚いたゴブリン達は、慌てて武器を構える。

「遅い!」

 ケニーは、隣で槍を構えたゴブリンの懐に入ると、ショートソードを水平に払う。

 ショートソードは、ゴブリンの喉を切り裂き、口から黒い血を吐きながらゴブリンはその場に崩れ落ちる。

「やぁあああっ!!」

 ルナは、大上段から袈裟斬りに左端のゴブリンを斬り捨てる。

 隣のゴブリンが、ルナに槍を向ける。

 ルナは、左手の小型盾バックラーで槍先を押し退けると、身を翻してゴブリンの腹に剣を突き刺す。

 残ったゴブリンは、ケニー達に背中を見せて逃げ出そうとする。

「逃がすか!!」

 ケニーは、懐から短剣を二本取り出すと、ゴブリンの背中に向けて投擲する。

 二本の短剣は、ゴブリンの背中に刺さり、ゴブリンは前のめりに倒れ、動かなくなった。






 程なくジカイラ、ヒナ、ティナがケニー達の元に駆け寄ってくる。

 ジカイラが口を開く。

「大丈夫か?」

 ケニーが答える。

「大丈夫だよ。敵はゴブリンが五体だった」

 再びルナが獣耳を動かし、聞き耳を立てる。

「ケニーたん! ジカさん! 待って! まだ、何か来る!!」

 ルナは、闇の中、自分達に近付いて来る影の方角を指差す。

 ルナが指差す方角に向かって、ジカイラ達は身構える。

 闇の中から現れたのは、二体の食人鬼オーガであった。

 巨体の食人鬼オーガは、二体並んで歩き、それぞれ棍棒を手に持っていた。

 ジカイラが口を開く。

「こんな街の近くに食人鬼オーガが!? ヒナ! 左のは任せるぞ!!」

 ジカイラは、そう言うと、右側の食人鬼オーガに向かって走って行く。

「判ったわ!」

 ヒナは、左側の食人鬼オーガに向けて手をかざす。

氷結水晶クリスタル・ランス! 四本ヴュワー!!」

 ヒナの声と共に空中に氷の槍が四本作られ、食人鬼オーガへと飛んでいく。

 四本の氷の槍は、左側の食人鬼オーガの胸と腹を貫き、食人鬼オーガはその場に崩れ落ちる。

 食人鬼オーガは、右手に持つ棍棒をジカイラに向けて水平に振るう。

 ジカイラは、斧槍ハルバードの矛先を地面に突き立てると、両手で斧槍ハルバードの柄を持ち、食人鬼の棍棒の一撃を受け止める。

「ウォオオオオ!!」

 ジカイラの斧槍ハルバードは、食人鬼オーガの棍棒の一撃を受け大きくしなり、雄叫びを上げたジカイラは両足を地面につけ斧槍ハルバードの柄を両手で支えて踏ん張ったまま、三メートルほど地面の上を横滑りに滑る。

 斧槍ハルバードの矛先がガリガリと地面を削る。

 食人鬼オーガは、棍棒の一撃を受け止めたジカイラにもう一撃加えるべく、棍棒を振り上げる。

 ジカイラは腰を落として深く息を吸い込み、貯めの姿勢を取る。

いちせん!!)

 ジカイラの渾身の力を込めた斧槍ハルバードの一撃が剛腕から放たれる。

 ジカイラの斧槍ハルバードの一撃が食人鬼オーガの左の脇腹に食い込む。

「ゴァアアアアア!!」

 脇腹に斧槍ハルバードの一撃を受けた食人鬼オーガが悲鳴を上げる。

( まだだ! せん!!)

 ジカイラは身を翻すと、もう一度、渾身の力を込めた斧槍ハルバードの一撃を食人鬼オーガに加える。

 両脇腹に斧槍ハルバードの一撃を受けた食人鬼オーガは、断末魔の悲鳴を上げ、両膝を地面につける。

「とどめだ!!」

 ジカイラは、食人鬼オーガの脇腹から斧槍ハルバードを引き抜くと、食人鬼オーガの喉に斧槍ハルバードを突き刺す。

 食人鬼オーガは、その巨体で前のめりに倒れると、動かなくなった。

 ジカイラが軽口を叩く。

「デカいだけあって、タフだわ。此奴ら」

 闇の中から更に細身の男の人影がジカイラ達に近付いて来る。

「ほほぅ? まさか食人鬼オーガを倒せる人間が居るとはな」

 ジカイラ達は、声がした細身の男の影に身構える。

 闇の中から姿を表した細身の男は、不敵な笑みを浮かべるダークエルフであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...