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第二章 新学期
第四十二話 士官学校、入学式(一)
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--翌朝
アレク達は寮で朝食を済ませ、いつも通り士官学校に登校する。
教室で自分の席に着くと、教室は入学式と新入生の話で賑わっていた。
級友達が話している事がアレクの耳に入る。
「新入生はどんな連中だろうな」
「なんか新入生に、凄い美人で可愛い子が居るって?」
「金髪のあの可愛い子か? 『貴族子女じゃないか?』って噂だけど、平民組だしな」
平民組に居る、平民らしからぬ、貴族子女のような金髪の美少女。
級友達の噂話に、アレクはピンとくる。
(ミネルバの事だな・・・)
級友達が自分の妹について、あれこれ噂話をしている事を、アレクはあまり快く思わなかった。
始業の時間になり、教室に担任のジカイラがやって来る。
ジカイラが口を開く。
「皆、おはよう。今朝、予定されていた入学式だが、訓示される皇太子殿下の到着が昼頃になるため、入学式の開催は午後からに変更になった。それまでの時間、各自、自習とする。以上!」
ジカイラは、教室のアレク達にそれだけを伝えると、職員室に戻って行った。
アルが呟く。
「皇太子殿下の都合で、昼まで自習か。しょうがねぇなぁ・・・」
アルが呟いた後、アルとアレクの目線が合うと、アレクは肩を竦めて見せる。
皇太子ジークの到着の遅れは、新入生であるミネルバの元にも知らされる。
明るくて優しく快活な女の子であるミネルバは、直ぐに同級生の女の子達と打ち解けて親しくなれた。
ミネルバは、身分を偽って平民として平民組に居るものの、皇宮に生まれ育ったミネルバには、皇族の子女として受けてきた淑女教育が染み付いており、本人が意識していなくても、動作や所作の細部にそれが現れてしまう。
また、ミネルバ本人が身に付けているアクセサリーや持っている小物も、貴族子女でさえ滅多に買えない高級品であった。
平民組に居る、平民らしからぬ、貴族子女のような金髪の美少女。
それがミネルバを目にした周囲の第一印象であった。
当然、士官学校でミネルバの存在は目立ち、新入生の女の子達の話題になる一方で、男達の『恰好の標的』になる。
教室でミネルバが同級生の女の子達と話していると、『自分に自信のある』または『制服を着崩した』新入生の男達が群がって来る。
『ミネルバを自分の彼女にしよう』という者達であった。
群がって来た新入生の男達がミネルバに話し掛ける。
「君、彼氏いるの?」
ミネルバは、突然、自分の周囲に集まってきた新入生の男達に声を掛けられ、驚いてキョトンとしていたが、戸惑いながらも、ひとつづつ質問に答える。
「えー? 彼氏ですか? ・・・いませんけど」
「どんな男が好みのタイプ?」
ミネルバは少し考えた後、答える。
「理想の異性は、・・・皇太子殿下、・・・かな?」
「「皇太子殿下!?」」
ミネルバの答えを聞いた周囲が驚く。
皇宮でミネルバ自身が口にした事は無いが、実際にミネルバの理想の異性は、長兄ジークであった。
ミネルバは、勤勉で禁欲的で周囲に細かい気配りができる紳士の長兄ジークを崇拝して敬愛していた。
対照的に、皇宮に住んでいた頃の、日々、自堕落に暮らし、逆らえないメイド達にいやらしい悪戯をしているだけの軟弱な次兄アレクを小馬鹿にして見下していた。
ミネルバが話していた周囲の女の子達が口を開く。
「いや、ミネルバさん。それ、理想高過ぎでしょ!」
「・・・そうかな?」
「そうよ! 皇太子殿下って、皇帝陛下の右腕で、帝国のNo.2じゃない!?」
「皇太子殿下は、帝国最年少で上級騎士なって、士官学校を飛び級で卒業した秀才で、トラキア戦役で帝国を勝利させた英雄よ!? いくらなんでも、それは・・・」
女の子同士の話を他所に、男達がミネルバに話し掛ける。
「ペアを組む人は決まってるの? 良かったら、オレと組まない??」
士官学校では、飛空艇の操縦や小隊での作戦行動の際など、主に二人一組で活動するため、入学式の後、男女でペアを組む相手を決めるのが慣例であった。
「まだ、決まってませんけど・・・」
「オレと付き合ってくれる?」
ミネルバは顔や態度には出さないが、自分の周囲に群がって来る『ナンパの男達』を毛嫌いしていた。
自己紹介もせず、手順を踏まず、いきなり交際を申し込んでくるナンパ男など、皇宮なら「無礼者!」と一喝して張り倒していただろう。
「えー。いきなりですか・・・?」
軽く握った手を口元に当て、上目遣いにそう答えつつ、ミネルバは、チラッとランスロットの方を見る。
ランスロットは興味無さそうであったが、ミネルバと目が合うと、ミネルバの方へやって来る。
ランスロットはミネルバに群がる男達とミネルバの間に割って入り、男達に告げる。
「お前達、いい加減にしろよ。彼女が迷惑しているだろ!」
「なんだ? お前??」
ランスロットと男達が睨み合う。
『マズい』と思ったミネルバがとっさに口を開く。
「皇太子殿下までいかなくても、『強い男の人』が好みかな?」
ミネルバが口にした言葉に、ランスロットと睨み合っていた男達が反応する。
「強いって、どれくらい?」
尋ねてきた男達への答えに窮したミネルバが口にする。
「アレク兄様より強い人なら、デートしても良いかな?」
ミネルバの、この一言が、アレクを巻き込む事件を引き起こす。
アレク達は寮で朝食を済ませ、いつも通り士官学校に登校する。
教室で自分の席に着くと、教室は入学式と新入生の話で賑わっていた。
級友達が話している事がアレクの耳に入る。
「新入生はどんな連中だろうな」
「なんか新入生に、凄い美人で可愛い子が居るって?」
「金髪のあの可愛い子か? 『貴族子女じゃないか?』って噂だけど、平民組だしな」
平民組に居る、平民らしからぬ、貴族子女のような金髪の美少女。
級友達の噂話に、アレクはピンとくる。
(ミネルバの事だな・・・)
級友達が自分の妹について、あれこれ噂話をしている事を、アレクはあまり快く思わなかった。
始業の時間になり、教室に担任のジカイラがやって来る。
ジカイラが口を開く。
「皆、おはよう。今朝、予定されていた入学式だが、訓示される皇太子殿下の到着が昼頃になるため、入学式の開催は午後からに変更になった。それまでの時間、各自、自習とする。以上!」
ジカイラは、教室のアレク達にそれだけを伝えると、職員室に戻って行った。
アルが呟く。
「皇太子殿下の都合で、昼まで自習か。しょうがねぇなぁ・・・」
アルが呟いた後、アルとアレクの目線が合うと、アレクは肩を竦めて見せる。
皇太子ジークの到着の遅れは、新入生であるミネルバの元にも知らされる。
明るくて優しく快活な女の子であるミネルバは、直ぐに同級生の女の子達と打ち解けて親しくなれた。
ミネルバは、身分を偽って平民として平民組に居るものの、皇宮に生まれ育ったミネルバには、皇族の子女として受けてきた淑女教育が染み付いており、本人が意識していなくても、動作や所作の細部にそれが現れてしまう。
また、ミネルバ本人が身に付けているアクセサリーや持っている小物も、貴族子女でさえ滅多に買えない高級品であった。
平民組に居る、平民らしからぬ、貴族子女のような金髪の美少女。
それがミネルバを目にした周囲の第一印象であった。
当然、士官学校でミネルバの存在は目立ち、新入生の女の子達の話題になる一方で、男達の『恰好の標的』になる。
教室でミネルバが同級生の女の子達と話していると、『自分に自信のある』または『制服を着崩した』新入生の男達が群がって来る。
『ミネルバを自分の彼女にしよう』という者達であった。
群がって来た新入生の男達がミネルバに話し掛ける。
「君、彼氏いるの?」
ミネルバは、突然、自分の周囲に集まってきた新入生の男達に声を掛けられ、驚いてキョトンとしていたが、戸惑いながらも、ひとつづつ質問に答える。
「えー? 彼氏ですか? ・・・いませんけど」
「どんな男が好みのタイプ?」
ミネルバは少し考えた後、答える。
「理想の異性は、・・・皇太子殿下、・・・かな?」
「「皇太子殿下!?」」
ミネルバの答えを聞いた周囲が驚く。
皇宮でミネルバ自身が口にした事は無いが、実際にミネルバの理想の異性は、長兄ジークであった。
ミネルバは、勤勉で禁欲的で周囲に細かい気配りができる紳士の長兄ジークを崇拝して敬愛していた。
対照的に、皇宮に住んでいた頃の、日々、自堕落に暮らし、逆らえないメイド達にいやらしい悪戯をしているだけの軟弱な次兄アレクを小馬鹿にして見下していた。
ミネルバが話していた周囲の女の子達が口を開く。
「いや、ミネルバさん。それ、理想高過ぎでしょ!」
「・・・そうかな?」
「そうよ! 皇太子殿下って、皇帝陛下の右腕で、帝国のNo.2じゃない!?」
「皇太子殿下は、帝国最年少で上級騎士なって、士官学校を飛び級で卒業した秀才で、トラキア戦役で帝国を勝利させた英雄よ!? いくらなんでも、それは・・・」
女の子同士の話を他所に、男達がミネルバに話し掛ける。
「ペアを組む人は決まってるの? 良かったら、オレと組まない??」
士官学校では、飛空艇の操縦や小隊での作戦行動の際など、主に二人一組で活動するため、入学式の後、男女でペアを組む相手を決めるのが慣例であった。
「まだ、決まってませんけど・・・」
「オレと付き合ってくれる?」
ミネルバは顔や態度には出さないが、自分の周囲に群がって来る『ナンパの男達』を毛嫌いしていた。
自己紹介もせず、手順を踏まず、いきなり交際を申し込んでくるナンパ男など、皇宮なら「無礼者!」と一喝して張り倒していただろう。
「えー。いきなりですか・・・?」
軽く握った手を口元に当て、上目遣いにそう答えつつ、ミネルバは、チラッとランスロットの方を見る。
ランスロットは興味無さそうであったが、ミネルバと目が合うと、ミネルバの方へやって来る。
ランスロットはミネルバに群がる男達とミネルバの間に割って入り、男達に告げる。
「お前達、いい加減にしろよ。彼女が迷惑しているだろ!」
「なんだ? お前??」
ランスロットと男達が睨み合う。
『マズい』と思ったミネルバがとっさに口を開く。
「皇太子殿下までいかなくても、『強い男の人』が好みかな?」
ミネルバが口にした言葉に、ランスロットと睨み合っていた男達が反応する。
「強いって、どれくらい?」
尋ねてきた男達への答えに窮したミネルバが口にする。
「アレク兄様より強い人なら、デートしても良いかな?」
ミネルバの、この一言が、アレクを巻き込む事件を引き起こす。
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