アスカニア大陸戦記 皇子二人(Ⅲ) 世界大戦

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第三章 空中都市

第五十一話 天馬の女騎士達

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--帝国中央軍 教導大隊 飛行空母ユニコーン・ゼロ

--朝。

 アレク達の乗る飛行空母ユニコーン・ゼロは、帝国南部の獣人ビーストマン荒野・フィールドの南部上空を南に向けて航行していた。

 航行中の飛行空母ユニコーン・ゼロの隣に、高速飛空艇が飛んで来て並走する。

 空母の艦橋で周囲の索敵観測に当たっていた士官が望遠鏡を覗きながら口を開く。

「一体、どこの飛空艇だ? ・・・って、あの紋章は!? 皇宮インペリアル警護軍・ガード??」

 高速飛空艇は、手旗信号で飛行空母ユニコーン・ゼロへの着艦を要求していた。

「『本機の着艦許可を求める』って!? すぐジカイラ大佐に報告しろ!!」

 手旗信号を確認した士官は、すぐにジカイラに報告するように同僚の士官に知らせる。

 


 ほどなく士官から報告を受けたジカイラが艦橋にやって来る。

 ジカイラは、高速飛空艇の紋章を見て皇宮インペリアル警護軍・ガードの機体であることを確認すると、高速飛空艇の着艦許可を出す。

「着艦許可を出せ。オレが飛行甲板で出迎える」

 ジカイラは艦橋の士官にそう伝えると、ヒナを連れて飛行甲板へ向かう。

(ナナイ直属の皇宮インペリアル警護軍・ガードが、帝国中央軍のオレ達に、一体、何の用だ??)

 ユニコーン・ゼロからの着艦許可を受け、高速飛空艇から天馬ペガサスに乗った女騎士が二人出てきてユニコーン・ゼロの飛行甲板へ高速飛空艇をエスコートする。

 プラチナに輝く鎧をまとった二人の女騎士は、飛行甲板に出て来たジカイラの前に天馬ペガサスを着艦させると、ジカイラの前で二人並んで敬礼する。

 女騎士は、二人とも羽をあしらった兜の面頬を降ろしており、ジカイラに二人の女騎士の顔は判らなかった。

 女騎士の一人がジカイラに告げる。

「ジカイラ大佐、ヒナ少佐。お二人に出迎え頂き、痛み入ります」

 二人の女騎士の後ろの飛行甲板に高速飛空艇が着艦する。

 ジカイラが女騎士に尋ねる。

「それで・・・? 皇妃ナナイ直属の皇宮インペリアル警護軍・ガードが帝国中央軍のオレ達に、一体、何の用だ??」

「皇妃様よりジカイラ大佐宛の親書をお持ちしました」

「はぁ!?」

 素っ頓狂な声を上げて驚くジカイラに、もう一人の女騎士がジカイラに羊皮紙の巻物を手渡す。

 ジカイラは、受け取った巻物の封印を切って、羊皮紙に綴られた手紙を読む。

「『親愛なるジカイラ大佐。国外遠征ご苦労様です。遠征は、もう何度目になるかしら。この子達に差し入れの果物を持たせたので、教導大隊の皆で召し上がってね』・・・って、何だぁ??」

 羊皮紙に綴られたナナイからの親書を呼んだジカイラは首を傾げる。

 しかし、ジカイラは手紙の続きの文書に目を留める。

(追伸。ヴェネト共和国軍の攻撃によって空中都市イル・ラヴァーリは陥落し、占領されました。御注意を。・・・それと、この手紙を持っていく二人の女の子をアレクに会わせてあげてね)

 追伸の部分に目を通したジカイラは、ナナイからの親書の意図を理解した。

(・・・なるほどな。親書と果物の差し入れは、この二人の女騎士をアレクに会わせるための口実って事か)

 ジカイラが二人の女騎士に答える。

「了解した。皇妃様からの差し入れは、有難く拝領する。御二人は貴賓室へ」

「「はっ!!」」

 ジカイラは、傍らのヒナにそっと耳打ちする。

「・・・ヒナ。アレクに貴賓室に来るように伝えてくれ。皇宮インペリアル警護軍・ガードから来客だ」

「判ったわ」

 ジカイラはヒナにそう伝えると、皇宮インペリアル警護軍・ガードの二人の女騎士を貴賓室へと案内する。






 アレクの部屋の扉がノックされた音の後、ドア越しにヒナの声が聞こえる。

「アレク大尉。皇宮インペリアル警護軍・ガードから来客よ。貴賓室へ」

「了解!」

 アレクは、ヒナからの知らせに驚きながらも返事をする。

皇宮インペリアル警護軍・ガードから来客? 母上から? 何の用だ??)

 ルイーゼがアレクに尋ねる。

「皇妃様から? 何かしら??」

 アレクが答える。

「判らない。行ってみるよ」

 アレクは、自分の部屋から貴賓室へ向かう。






 アレクは、貴賓室のドアをノックした後、中に入る。

「失礼します」

「「アレク様」」

 プラチナに輝く鎧を脱ぎ、皇宮インペリアル警護軍・ガードの制服姿となった二人の女騎士が敬礼でアレクを出迎える。

 アレクは、制服姿の二人の女騎士の顔を見て驚く。

「カルラ!? それにエステル??」

 名前を呼ばれた二人は、それぞれ笑顔で答える。

「お久しぶりです。アレク様」

「皇妃様からの親書をお持ちしました」

 二人とも薄く化粧をして髪を結い上げており、大人びて見えるものの、間違いなく二人ともアレクが助けて帝都の孤児院に入れたカルラとエステルであった。

 カルラは、アレクに羊皮紙の巻物を手渡す。

「親書? オレ宛に??」

 アレクは、カルラから受け取った巻物の封印を切って、羊皮紙に綴られた手紙を読む。

(・・・二人から話は聞きました。男なら言葉と行動に責任を持つこと。・・・って!?)

 ナナイからの親書を読んだアレクに、カルラが声を掛ける。

「アレク様。お会いしたかったです」

「カルラ。それにエステル。・・・二人とも、騎士になったんだね」

 アレクからの問いにカルラは笑顔で答える。

「私達、従騎士スクワイヤですが、皇宮インペリアル警護軍・ガードのメンバーになれました」

 アレクは、微笑みながらソファーに腰掛けると、二人の努力を認めて褒める。

「そうか。二人とも、頑張って立派になったんだね」




 アレクに褒められたカルラとエステルは、互いに目配せすると、服を脱ぎ始める。

「え!?」

 驚くアレクを他所に、二人は全裸になってアレクの前に立つ。

 カルラは潤んだ目でアレクに告げる。

「・・・アレク様。見て下さい。私達、十四歳になったんです」

 エステルもアレクに告げる。

「私達、もう大人になったんです。毛も生え揃いました」

 アレクの目の前に全裸で立つ二人の女の身体は、女性特有の曲線が膨らみ始めた発育途上ではあるものの、エステルの言葉通り、秘所の恥毛も生え揃っていた。

 アスカニアでは十四歳で成人となり、結婚も喫煙も飲酒も許されていた。

 目のやり場に困ったアレクは、しどろもどろに焦りながら答える。

「ふ、二人が成人したのは判ったけど・・・」

 意を決したカルラがアレクに告げる。

「私達をアレク様の妃にしてください!」

 エステルもアレクに告げる。

「お願いします! 妃にしてください!!」

「ええっ!?」

 二人の言葉にアレクは固まる。
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