アスカニア大陸戦記 皇子二人(Ⅲ) 世界大戦

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第三章 空中都市

第五十八話 強行上陸

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--空中都市イル・ラヴァーリ 自治庁

 ヴェネト共和国軍飛行艦隊『東方不敗』の女騎士アーベントロートとルパの二人は、連絡将校としてイル・ラヴァーリに派遣され、アノーテから自治庁の一室を駐在室に割り当てられ、そこに駐在していた。

 特にやる事も無い二人が、駐在室で向かい合ってソファーに座り、のんびりとカードに興じていると、にわかに自治庁内が騒がしくなる。

 駐在室の外の様子が気になったアーベントロートがドアを開けて外の様子を伺うと、ヴェネト共和国軍の士官などが自治庁内を駆け回り、騒然とした雰囲気となっていた。 

 アーベントロートが廊下を走っているヴェネト共和国軍士官を呼び止める。

「どうした? 騒がしいな? 何事だ!?」

 血相を変えた士官が答える。

「バレンシュテット帝国軍が現れました! 空中港が攻撃を受け、現在、守備部隊が防戦中です!!」

 士官の答えを聞いた二人が驚く。

「「何だと!?」」

 二人の女騎士が自治庁の廊下の窓から空中港の方角を見ると、攻撃を受けた砲台群が次々と爆発し、煙を上らせながら炎上していた。

 アーベントロートが口を開く。

「砲台がやられただと!?」

 ルパも口を開く。

「何だって? 砲台が!? それじゃ、次は帝国軍が上陸して来るだろう!?」

 ルパの言葉にアーベントロートが答える。

「ルパ、空中港へ行こう!」

「ああ!」

 二人の女騎士は互いに頷くと、自治庁から空中港を目指して小走りで駆けていく。







--バレンシュテット帝国軍 教導大隊

 アレク達、教導大隊の第一陣は、空中港に突入するべく加速していく。

 空中港を守備するヴェネト共和国軍の砲台から、アレク達に向けて散発的に対空砲火が放たれる。

 ヴェネト共和国軍が放つ対空砲火を見たアルが軽口を叩く。

「そんな砲丸が、飛空艇に当たるかよ」

 鋳鉄の砲丸を撃ち出すヴェネト共和国軍の旧式の大砲では、高速で飛行するバレンシュテット帝国軍の飛空艇を撃墜する事は困難であった。

 アレク達はヴェネト共和国軍による対空砲火を潜り抜けると、それぞれ小隊毎に別れて空中港の各埠頭に強行着陸する。

 飛空艇を埠頭に強行着陸させたアレク達は、飛空艇から飛び降りる。

 アレクが口を開く。

「ユニコーン小隊、集合! 敵が来るぞ!!」 

 アレクとルイーゼの二人のところへ、ユニコーン小隊の仲間達が小走りで集まる。





 ルイーゼがユニコーン小隊の仲間達に声を掛ける。

「みんな、無事!?」

 ナタリーが答える。

「大丈夫!!」

 アレク達が着陸した埠頭に十人程のヴェネト共和国軍の守備隊が現れ、敵部隊を見たアルが軽口を叩く。

「敵さんが、おいでなさったぞ!!」

 ヴェネト共和国軍の守備隊は隊列を組むと、アレク達に向けて弓矢を放つ。

 アレクが指示を出す。

「小隊整列! 盾を構えろ!!」

 小隊の前衛のメンバーであるアレク、アル、トゥルム、エルザが隊列を組んで盾を構える。

 守備隊が放った弓矢は、アレク達が構えた盾に当たると、乾いた音を立てて弾かれていく。

 飛来する矢を盾で防ぎながら、アレクは仲間達に指示を出す。

「ナディア! ドミトリー! 支援魔法だ!」

 ナディアがアレク達に向けて手をかざし、召喚魔法を唱える。

矢弾からのプロテクション・防御・フロム・アロー!!」

 緑色の淡い光がユニコーン小隊を包む。

 ナディアが続ける。

風の妖精シルフの加護よ。これで矢は当たらないわ!」

 ドミトリーが強化魔法をアレク達に掛ける。

筋力レッサー・強化ストレングス! 装甲フォース・強化アーマー!!」





 アレクは、小隊が魔法による支援を受けたことを確認すると、再び口を開く。
 
「ナタリー! やれ!!」

 アレクからの指示にナタリーは笑顔を見せる。

「了解! ちょっと火が付くくらいなら大丈夫よね!?」

 アレクの指示を受けたナタリーは、埠頭の奥に隊列を組んで並び弓矢を放ってくる守備隊に向けて手をかざし、魔法を唱える。

火炎フレイム・爆裂バースト!!」

 ナタリーの掌の先に魔法陣が三つ現れると、魔法陣から現れた爆炎が守備隊に向かって一直線に進んで行き、守備隊を爆炎で包む。

「ぐぁああああ!!」

「ぎゃあああ!!」

 ナタリーの魔法で火達磨になった守備隊の兵士達が、地面を転がり回る。

「退け! 退却だぁ!!」

 守備隊の生き残りは、埠頭から逃げて行った。




 アレク達が最初に現れたヴェネト共和国軍の守備隊を撃破して埠頭の一つを制圧すると、ちょうどジカイラとヒナがアレク達が制圧した埠頭に飛空艇を着陸させ、アレク達の元にやって来る。 

 ジカイラが尋ねる。

「お前達、無事か?」

「「はい!」」

「状況は?」

 ジカイラからの問いにアレクが答える。

「埠頭の一つを制圧しました!」

 ジカイラが笑顔で答える。

「上出来だ! 埠頭に帝国軍旗を掲げろ! 間もなく第二陣が上陸してくる!! オレとヒナが出迎えるから、お前達は他の小隊と合流して街の中心にある自治庁へ向かえ!!」

「「了解!!」」






 アレクが小隊の仲間達に尋ねる。

「どこか、軍旗を掲げる良い場所は無いか?」

 アレク達が制圧した埠頭を見回すと、飛行船に貨物を運搬する巨大なガントリークレーンが目に入る。

 ルイーゼが口を開く。

「アレク! あそこなら目立つわ!!」 

 アレク達は、制圧した埠頭のガントリークレーンの麓に行く。

 アルが巨大なガントリークレーンを見上げながら呟く。

「待て! 待て! 待て! ちょっと待て!! もしかして、コレの上に登って軍旗を掲げるのか?」

 アルは、ゴズフレズでの見張り塔の一件以来、高い所が苦手であった。

 ナタリーがため息交じりに答える。

「もぅ。アルったら! ・・・貸して!!」

 ナタリーは、アレクから軍旗を受け取ると魔法を唱える。

飛行フライ!!」

 一瞬、魔力マナの青白い光がナタリーを包むと、ナタリーの身体は空中に浮く、

 ナタリーは巨大なガントリークレーンの頂上まで飛んで行くと、頂上の柱の先に紐で帝国軍旗を括りつけて、アレク達の元に戻って来る。

 ナタリーは、自分で柱の先に紐で括りつけた帝国軍旗を見上げながらアレク達に告げる。

「大佐の指示通り、軍旗は掲げたわ! ・・・みんな、行きましょう!!」

 アレク達が空中港の埠頭から荷捌地を抜けて臨港道路を進んでいると、それぞれ別の埠頭を制圧したグリフォン小隊、フェンリル小隊、セイレーン小隊と合流することが出来た。

 アレク達は、臨港道路から街の大通りへ抜けて、街の中心にある自治庁を目指して進んで行く。
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