アスカニア大陸戦記 皇子二人(Ⅲ) 世界大戦

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第四章 聖戦

第九十七話 出陣式前夜、ジークとフェリシア

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--夜。 
 
 ジークは、閨にフェリシアを呼ぶ。

 ジークの第三妃のフェリシアは、黒目黒髪で目元にほくろのある美人系でトラキアの王族に生まれ、気が強くプライドが高いため、一見、ツンとした性格に見えるが、ベッドの中ではM気質であった。

 ジークはフェリシアの気質を見抜き、フェリシアとの閨の際には、毎回、様々な趣向を凝らしていたが、メフメト王国を占領したソユット帝国との戦いが迫っている事もあり、今夜の閨には特に凝った趣向は用意していなかった。

 ジークの寝室に入ったフェリシアは、ベッドの上でくつろぐジークの傍らに腰掛ける。

 ジークは、フェリシアに微笑み掛けながら抱き寄せる。

「すまないな。今夜は何の趣向も用意していない」

「いえ。このような時に・・・、私などのために、毎回趣向などご用意されなくても・・・」

「それでは寂しいだろう? ただ、抱いて寝るだけでは・・・」

 フェリシアは、傍らのジークの胸に頬を刷り寄せると、顔を見上げる。

「・・・こうして、肌を合わせているだけで。愛されていることを実感できれば充分です」
 
 フェリシアの黒い瞳がジークの顔を見詰める。

 ジークは、両手でフェリシアの両頬に触れながらねっとりとキスする。

「んんっ・・・ふっ・・・」

 舌先でジークに口の中を弄られ、二人の舌先同士が絡み合うたびに、フェリシアは下腹部から身体の芯が熱くなり、無意識にジークの首に両腕を回して抱き付く。
 
 ジークは、フェリシアが欲情している事を察すると、ベッドに寝かせて寝着を開け、フェリシアの両足を開く。 

「あっ・・・」

 羞恥からフェリシアは赤面しながら俯き、ジークの目線から逃れる。

 フェリシアの恥丘に刻まれた自分の名前を指先でなぞり、撫でながらジークが呟く。 

「ふふ。私の名がちゃんと残っている。エリシス伯爵が作った呪符の効果だな」

「な、撫でないで下さい!!」 

「すまないな。撫でるのは、こちらだった」 

 そう告げると、既に透明な体液が溢れて肉襞の割れ目を伝って滴るフェリシアの秘所をジークは揃えた指先で愛撫する。

「あんっ・・・んんっ・・・」

 ジークの指先が淫靡な水音を立て、フェリシアの羞恥と欲情を掻き立てる。

「まだ始めたばかりだというのに。もうこんなに・・・。欲しいのか?」

 ジークから尋ねられ、フェリシアは顔だけでなく耳まで赤くなりながら無言で頷く。

 ジークはフェリシアの右隣に寝そべると、右腕でフェリシアの胸を弄りながら、左手でフェリシアの左足の膝の裏を掴んで足を開き、フェリシアの背後から秘所へ男性器を挿入する。

「ああああっ!!」 

 ジークの立派な男性器が秘所の肉襞を押し広げて貫く快感に、フェリシアは喘ぎ声を漏らす。

 ゆっくりと動き始めたジークの腰がフェリシアの柔らかいお尻の肉を打ち、音を立て始める。

「フッ! ハッ! ハッ!」

 フェリシアの耳元にジークの吐息が掛かる。

 開脚後側位で後ろから突き上げられる快感に身をよじりながら、フェリシアがジークに告げる。
 
「あああっ! ジークさまっ! はあぁっ! 足をひぃっ! ひぃらいたまま(開いたまま)! ああっ! するのは! はぁっ! 恥ずかしいです!!」

 フェリシアの耳元で後ろからジークが囁く。

「フェリシアは、恥ずかしい事をされるのも、犯されるようにするのも、好きだろう?」

「そのような事は・・・」

「鏡を見ると良い。フェリシアのために用意させた」

 快感に耐えながら懸命に言葉にしたフェリシアが目を開くと、大きな姿見の鏡があった。

 フェリシアの目に映った姿見の鏡は、惜し気も無く広げられた自分の左足と、ジークの立派な男性器を咥え込む自分の秘所、そして、自分の秘所から白濁した体液が溢れてジークの男性器を伝って滴り落ち、シーツに恥ずかしい染みを作っているところを映し出していた。



 男性器が繰り返し秘所を貫く快感。

 揉みしだかれ弄ばれる乳房。

 耳元に掛かる想い人の吐息。

 密着する肌と鍛え抜いた男の筋肉の感触。

 寝室に響く体液が立てる淫靡な水音と柔らかいお尻の肉を打つ音。

 想い人に恥ずかしい姿で背後から抱かれ、犯される快感。

 口にした言葉とは裏腹に、身体はジークとの交わりと肉欲の快楽を求めていた。

 これらがフェリシアの被虐心と性的興奮を掻き立て、フェリシアは一時間ほどで性的絶頂に達してしまう。

「あうっ!! わっ!!」

「いいか。射精するだすぞ」

 下半身を痙攣させるフェリシアの性的絶頂に合わせて、ジークはフェリシアの胎内に子種を注ぐ。

 ジークの男性器から脈を打って大量に注がれる子種がフェリシアの子宮の入り口に当たる。

「んっ・・・、んんっ・・・」

 フェリシアは眉間にしわを寄せながら、注がれた子種が子宮の入り口に当たる快感に酔う。

「はぁ・・・、はぁ・・・、はぁ・・・」 

 全身に汗を浮かべながらフェリシアは乱れた呼吸を整えていた。

 一方、ジークは軽く汗ばんでいたものの、表情に余裕があった。

 近接戦最強の上級職である上級騎士パラディンとして鍛え抜いたジークと巫女のフェリシアとでは基礎体力が桁違いであり、しかもジークは父ラインハルトに似て絶倫であった。

 射精を終えたジークは、汗だくで荒い息のフェリシアに優しく語り掛ける。

「出陣したら、しばらく会えなくなる。今夜はじっくりと楽しもう」






 この晩、フェリシアは何度も性的絶頂に達し続け、ジークがフェリシアの胎内に六度目の射精を終える頃には、フェリシアは腰砕けになって足腰が立たないようになっていた。

 ジークは、傍らにフェリシアを抱いて眠りに就いた。

 






--翌朝。明け方。

 腕枕をしていたジークが不意に動いた事で、フェリシアは目が覚める。

 ジークの腕の中から、傍らで穏やかに眠るジークの寝顔を眺め、フェリシアは考える。

(いつからだろう・・・)

(私は、この人を愛してる)

(・・・愛してる)




 世界に冠たるバレンシュテット帝国。

 救国の英雄である皇帝と皇妃。

 二人の英雄を両親に持つジークは、繁栄を謳歌する、その帝国の皇太子であった。

 ゴスフレズ王国の王宮で開催された舞踏会。

 修道院で育ち、神職の巫女になって、舞踏会のような俗世の事など興味が無かった。

 しかし、ゴスフレズ王国の王宮で初めて舞踏会に参加した時、ジークとソフィアが踊るのを遠くから眺めて切なくなった。

 栄光の国際舞台で人々の注目と喝采を浴び、威風堂々と光輝く想い人の傍らに居るのは、自分ではない別の女ソフィアであった。

  トラキア降伏式でも、帝都の皇宮でも、『国を背負う』という重責から解放してくれたのも、戦争犯罪人として処刑される事からも、フェリシアを守ってくれたのはジークであった。

 どんなに恋焦がれても、想い人を独り占めする事はできない。

 それが許されるのは正妃だけであり、第三妃の自分には望むべくもない。

 フェリシアは、トラキアに生まれた自分の身の上が悲しかった。




 ジークは、フェリシアの故郷である貧しく荒れ果てたトラキアを緑の豊かな大地にするためにも尽力してくれている。

 フェリシアは、ジークに嫁いで皇太子第三妃となってから幾度と無くジークに抱かれ肌を合わせてきた

 そして、気が付いた。

 自分は、ジークを愛している。

 彼は、英雄であり父である皇帝ラインハルトから『帝国を引き継ぐ者』として、妃である自分にも決して『弱さ』や『隙』を見せない。

 普段は、正妃のソフィアを傍らに『強者』『支配者』『絶対者』として振舞っている。

 しかし、フェリシアは、ジークが閨で自分を抱いて胎内に子種を注いだ後、自分に見せる優しい微笑みこそジークの素顔なのだと気が付いた。

(・・・誠実で繊細で健気で優しい人)

(・・・普段は『氷の仮面』を被っている)

(・・・『強者』、『支配者』を装って振舞っている)




 突然、ジークの腕が動き、フェリシアを傍らに抱き締める。

 フェリシアは驚いてジークの顔を見るが、ジークは熟睡したままであった。

 意識が無くても自分を抱き寄せてくれるジークの優しさにフェリシアは微笑む。



 フェリシアは心に決める。

 ジークを独り占めする事はできない。

 決して、妃同士で争ってはならない。

 決して、ジークの体面を傷つけてはならない。

 第三妃の自分は、正妃のソフィアと張り合うような事は避けねばならない。

 妃同士のいさかいは、ジークの体面を傷付ける。

 ジークの体面は、皇太子の体面であると同時に皇帝ラインハルトの体面であり、世界唯一の超大国・バレンシュテット帝国の体面であった。

 アスカニアは男尊女卑の世界であり、その男社会は体面を重んじるメンツの世界であった。

 もし、ジークに恥をかかせて体面を傷付け、メンツを失うような事になれば、父である皇帝ラインハルトによってジークは廃嫡されてしまうだろう。

 それは、ジークから庇護を受けているフェリシア自身にとっても、致命的な事柄であった。


 
 フェリシアは、眠っているジークの頬にそっとキスする。

(自分にできる事で、この人のために尽くそう)

 ジークの腕の中でフェリシアは再び眠りに就いた。
 
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