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第四章 聖戦
第百十一話 滅びと災厄の魔神
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ナナシ伯爵が率いる帝国魔界兵団は、ジークの居るトラキア兵団の上空を通り過ぎ、国境付近まで飛行する。
程なく、ナナシの目にソユット軍の先頭を進むソユット軍第十陣一万の軍勢が目に入る。
ソユット軍は、緑一色の貫頭衣を身に纏い隊列を組んで行進しており、上空から観察しながらナナシが呟く。
「東の蛮族とはいえ、多少なりとも訓練はしているようだな・・・。重砲が四門に、軽火砲二十門。他は投石器に弓か・・・」
ナナシがソユット軍を観察していると、ソユット軍の中に、兜に二本の孔雀の羽を付けた者を見つける。
(あれが敵の指揮官か・・・)
ナナシが魔神マイルフィックに告げる。
「・・・ここで待て。陛下に手土産が必要だ」
そう告げると、ナナシはマイルフィックの背から地上へ飛び降りていく。
ソユット軍第十陣を率いる将軍十号の前に、空から漆黒のローブを纏ったナナシ伯爵が降り立つ。
突然、空から目の前に現れたナナシに、将軍十号と護衛の者達が驚く。
護衛の者達は、ナナシに向けて一斉に湾曲刀を構えて後退るが、ナナシは気に留める素振りも無く、目の前に立つ将軍十号に尋ねる。
「・・・言葉は判るか?」
将軍十号が答える。
「共通語!? バレンシュテットの者だな?」
「左様・・・。貴様が、この部隊の指揮官か?」
「いかにも! 私が、このソユット帝国軍 第十陣を率いる将軍十号だ!!」
将軍十号の名乗りを聞いたナナシは、自らも名乗りを上げる。
「私は、バレンシュテット帝国 西部方面軍 総司令 帝国魔界兵団 司令 ナナシ伯爵。・・・その首、皇帝陛下への手土産に貰い受ける!」
ナナシが目にもとまらぬ速さで左手を伸ばして将軍十号の顔を掴むと、護衛のソユット兵達は一斉にナナシに斬り掛かる。
ナナシは、一斉に斬り掛かって来るソユット兵達の方へ向けて、振り向きざまに右手を水平に払いながら、魔法を唱える。
「雑魚が! 真空破断!!」
ナナシが払った手の位置に魔法陣が現れると、真空の刃が出現し、斬り掛かって来たソユット兵達の身体を上半身と下半身に一刀両断する。
ナナシは、恐怖に顔を歪める将軍十号の顔を左手で掴んだまま、右手の人差し指で首元を突く。
「・・・首から下は要らんな・・・。「Взорваться,Максимальная,производительность!!」
(爆裂せよ! 威力最大!!)
ナナシが魔法を唱えると、右手の人差し指の先に紫色に光る魔法陣が現れ、将軍十号の首から下の身体を木っ端微塵に爆裂させる。
将軍十号は一瞬で絶命し、ナナシが左手で掴んでいる頭部は、白目を剥いて口を半開きに開ける。
「飛行!!」
将軍十号を殺害したナナシは、その首を手にしたまま、魔法で空へと飛び上がる。
ナナシは、再び魔神マイルフィックの背に乗る。
「・・・待たせたな」
ナナシが戻った魔神マイルフィックと帝国魔界兵団は、その飛行高度を下げると、ソユット軍第十陣の頭上を低空で威嚇飛行する。
低空で頭上を飛ぶ魔神マイルフィックと上級悪魔、下等悪魔達の姿を見て、指揮官の居ないソユット軍第十陣の兵士達は、恐怖で大混乱に陥る。
魔神マイルフィックは、大陸各地に伝わっている、世界の成り立ちを記しているとされる古文書『アスカニア創世記』において、『滅びと災厄の魔神』と記されていた。
「bu bir canavar!!」
(魔物だぁ!!)
「Aman Tanrım! lütfen yardım et!!」
(おぉ、神よ! お助け下さい!!)
マイルフィックは、地上で恐慌状態に陥って逃げ惑うソユット軍を見て、不気味な笑い声をあげると、両手を広げて悪魔語で魔法を唱え始める。
マイルフィックの下に一つ、頭上に十個の巨大な魔法陣が現れる。
やがてソユット軍の上空に巨大な火球が表れ、それはゆっくりと地表寸前まで下がると大爆発を起こす。
轟音と共に大爆発した火球から広がった爆風と爆炎が地表を覆う。
爆炎は、ソユット軍兵士も、重砲も、牛車も、ソユット軍第十陣の大半を焼き尽くして消し飛ばした。
空から大爆発によるキノコ雲を見届けたナナシが呟く。
「ほう? まだ生き残りが居るようだな」
指揮官が居らず、魔神マイルフィックの第十位階魔法により壊滅的打撃を受けたソユット軍第十陣の生き残りの兵士達は、手に持っていた武器や盾を投げ捨てて一斉に逃げ出し始める。
上級悪魔、下等悪魔達は、地上に降り立つと、敗走するソユット軍第十陣の生き残りの兵士達に追撃をかけ、容赦なく攻撃を加える。
空から悪魔達による一方的な殺戮を眺めながら、ナナシが呟く。
「・・・ソユットの狂信者どもよ。この地にお前達の神の加護は無いぞ。唯一の救いは、お前達に『死は平等に訪れる』ということだ。地獄の底で帝国領に土足で踏み込んだ己の愚さを悔いるがいい。せいぜい、お前達の神に祈ることだな」
ナナシ伯爵が率いる帝国魔界兵団とソユット軍第十陣の戦闘は、一時間ほどで決着が着き、ソユット軍第十陣の壊滅で幕を閉じた。
程なく、ナナシの目にソユット軍の先頭を進むソユット軍第十陣一万の軍勢が目に入る。
ソユット軍は、緑一色の貫頭衣を身に纏い隊列を組んで行進しており、上空から観察しながらナナシが呟く。
「東の蛮族とはいえ、多少なりとも訓練はしているようだな・・・。重砲が四門に、軽火砲二十門。他は投石器に弓か・・・」
ナナシがソユット軍を観察していると、ソユット軍の中に、兜に二本の孔雀の羽を付けた者を見つける。
(あれが敵の指揮官か・・・)
ナナシが魔神マイルフィックに告げる。
「・・・ここで待て。陛下に手土産が必要だ」
そう告げると、ナナシはマイルフィックの背から地上へ飛び降りていく。
ソユット軍第十陣を率いる将軍十号の前に、空から漆黒のローブを纏ったナナシ伯爵が降り立つ。
突然、空から目の前に現れたナナシに、将軍十号と護衛の者達が驚く。
護衛の者達は、ナナシに向けて一斉に湾曲刀を構えて後退るが、ナナシは気に留める素振りも無く、目の前に立つ将軍十号に尋ねる。
「・・・言葉は判るか?」
将軍十号が答える。
「共通語!? バレンシュテットの者だな?」
「左様・・・。貴様が、この部隊の指揮官か?」
「いかにも! 私が、このソユット帝国軍 第十陣を率いる将軍十号だ!!」
将軍十号の名乗りを聞いたナナシは、自らも名乗りを上げる。
「私は、バレンシュテット帝国 西部方面軍 総司令 帝国魔界兵団 司令 ナナシ伯爵。・・・その首、皇帝陛下への手土産に貰い受ける!」
ナナシが目にもとまらぬ速さで左手を伸ばして将軍十号の顔を掴むと、護衛のソユット兵達は一斉にナナシに斬り掛かる。
ナナシは、一斉に斬り掛かって来るソユット兵達の方へ向けて、振り向きざまに右手を水平に払いながら、魔法を唱える。
「雑魚が! 真空破断!!」
ナナシが払った手の位置に魔法陣が現れると、真空の刃が出現し、斬り掛かって来たソユット兵達の身体を上半身と下半身に一刀両断する。
ナナシは、恐怖に顔を歪める将軍十号の顔を左手で掴んだまま、右手の人差し指で首元を突く。
「・・・首から下は要らんな・・・。「Взорваться,Максимальная,производительность!!」
(爆裂せよ! 威力最大!!)
ナナシが魔法を唱えると、右手の人差し指の先に紫色に光る魔法陣が現れ、将軍十号の首から下の身体を木っ端微塵に爆裂させる。
将軍十号は一瞬で絶命し、ナナシが左手で掴んでいる頭部は、白目を剥いて口を半開きに開ける。
「飛行!!」
将軍十号を殺害したナナシは、その首を手にしたまま、魔法で空へと飛び上がる。
ナナシは、再び魔神マイルフィックの背に乗る。
「・・・待たせたな」
ナナシが戻った魔神マイルフィックと帝国魔界兵団は、その飛行高度を下げると、ソユット軍第十陣の頭上を低空で威嚇飛行する。
低空で頭上を飛ぶ魔神マイルフィックと上級悪魔、下等悪魔達の姿を見て、指揮官の居ないソユット軍第十陣の兵士達は、恐怖で大混乱に陥る。
魔神マイルフィックは、大陸各地に伝わっている、世界の成り立ちを記しているとされる古文書『アスカニア創世記』において、『滅びと災厄の魔神』と記されていた。
「bu bir canavar!!」
(魔物だぁ!!)
「Aman Tanrım! lütfen yardım et!!」
(おぉ、神よ! お助け下さい!!)
マイルフィックは、地上で恐慌状態に陥って逃げ惑うソユット軍を見て、不気味な笑い声をあげると、両手を広げて悪魔語で魔法を唱え始める。
マイルフィックの下に一つ、頭上に十個の巨大な魔法陣が現れる。
やがてソユット軍の上空に巨大な火球が表れ、それはゆっくりと地表寸前まで下がると大爆発を起こす。
轟音と共に大爆発した火球から広がった爆風と爆炎が地表を覆う。
爆炎は、ソユット軍兵士も、重砲も、牛車も、ソユット軍第十陣の大半を焼き尽くして消し飛ばした。
空から大爆発によるキノコ雲を見届けたナナシが呟く。
「ほう? まだ生き残りが居るようだな」
指揮官が居らず、魔神マイルフィックの第十位階魔法により壊滅的打撃を受けたソユット軍第十陣の生き残りの兵士達は、手に持っていた武器や盾を投げ捨てて一斉に逃げ出し始める。
上級悪魔、下等悪魔達は、地上に降り立つと、敗走するソユット軍第十陣の生き残りの兵士達に追撃をかけ、容赦なく攻撃を加える。
空から悪魔達による一方的な殺戮を眺めながら、ナナシが呟く。
「・・・ソユットの狂信者どもよ。この地にお前達の神の加護は無いぞ。唯一の救いは、お前達に『死は平等に訪れる』ということだ。地獄の底で帝国領に土足で踏み込んだ己の愚さを悔いるがいい。せいぜい、お前達の神に祈ることだな」
ナナシ伯爵が率いる帝国魔界兵団とソユット軍第十陣の戦闘は、一時間ほどで決着が着き、ソユット軍第十陣の壊滅で幕を閉じた。
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