アスカニア大陸戦記 皇子二人(Ⅲ) 世界大戦

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第五章 野営訓練

第百三十五話 野営訓練(九)

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 昼食を終えたアレク達は、砂浜で遊んだり寛いだりしていたが、ルドルフ達はアレク達の居る砂浜から少し離れた昼食の席と同じ場所で寛いでいた。

 ジカイラとヒナが学生達の様子を見に、見回りにやって来る。

 ジカイラは、笑顔でルドルフ達に告げる。

「お前達、楽しくやっているか?」

 ルドルフ達は、声をそろえて答える。

「「はい!」」 

 ジカイラが笑顔で続ける。

「そうか。なら良い。・・・貴族組の女子が、登っていた木から落ちたとかで、全身打撲と前歯三本を折る大怪我をしたからな。お前達も、ケガや事故には気を付けるように」

「判りました」
 
 ジカイラは思い出したようにルドルフを呼び止め、近くの木箱に腰を掛ける。

「・・・そうだ。ルドルフ」

「はい?」
 
 呼び止められたルドルフと、その傍らにアンナが立ち止まる。

「士官学校卒業後の進路は、考えているのか?」

「・・・小隊の皆とも話し合いましたが、中央軍への配属希望です」

「・・・そうか。中央軍か」

 ジカイラは、少し考える素振りを見せると、ルドルフに告げる。

「ルドルフ。・・・これは、まだ、内々の話だが、今度の帝国軍再編で中央軍に新しい部隊が新設される」

「新しい部隊ですか?」

「そうだ。オレ達、教導大隊の活動成果をもとにした『即応打撃群』という部隊が新設される」

 ジカイラの話を聞いたルドルフが関心を示す。

「即応打撃群・・・?」

 ジカイラが続ける。

「有事が起きた際に、直ぐに出撃して対応する攻性の精鋭部隊だ。お前達グリフォン小隊が中央軍を希望するなら、即応打撃群に推薦するぞ。・・・部隊運用は、この教導大隊を模倣したものらしいからな」

 ジカイラの言葉にルドルフとアンナは驚く。

 アンナが口を開く。

「ルドルフ、凄いじゃない! 精鋭部隊に推薦して貰えるなんて! 帝国軍のエリートよ! エリート!!」

 ルドルフは、戸惑いながらジカイラに尋ねる。

「大佐。大丈夫なんですか? オレみたいな不良を帝国軍の精鋭部隊に推薦なんてして・・・。アレク達の方が成績優秀なんじゃ??」

 ルドルフの懸念にジカイラは笑うと答える。

「ははははは。確かに。帝国軍では、上級職が二人居て、帝国ライヒス・騎士リッター・十字章クロスを二回授与されたアレク達ユニコーン小隊の方が評価は高い。だが、アレク達は同じ中央軍でも、ルードシュタット駐在希望でな」

 ジカイラが続ける。

「・・・士官学校への入学当初に素行が少々荒れていようと、今のお前は皇帝陛下から帝国ライヒス・騎士リッター・十字章クロスを授与された立派な上級騎士パラディンだ。常に帝国の前線に投入される即応打撃群にとって重要なのは、『現場で即戦力になるか、どうか』だ。座学の成績や上品さが求められる訳じゃない」

 ジカイラの言葉を聞いたルドルフは感じ入って目を閉じたまま、天を仰ぎ見る。

(帝国中央軍即応打撃群。帝国軍の精鋭部隊。間違いなく帝国軍のエリートだ・・・)

(このオレが帝国軍の精鋭部隊に推薦されるなんて・・・)

(母さん。もう苦労はさせない)

(アンナ。必ず幸せにしてみせる)

 ルドルフはジカイラを正視する。

「判りました。大佐。よろしくお願いします」

 そう言うとルドルフは、ジカイラに深々と頭を下げる。

 ジカイラは、木箱に腰掛けたまま、穏やかに微笑む。

「・・・決まりだな!」

 グリフォン小隊の仲間達が一斉にルドルフを囲むように集まって来て、それぞれ口を開く。

「やったな! 隊長!!」

「オレ達グリフォン小隊が精鋭部隊に推薦!?」

「凄い! 凄すぎるぜ!!」

「やったね!!」

「頑張った甲斐があったわ!!」

「信じられない! 私達が帝国軍のエリートだよ!? エリート!!」

 教官であり上官でもあるジカイラから帝国軍の精鋭部隊へ推薦され、エリートになれる喜びを分かち合う仲間達に囲まれ、ルドルフは感無量で胸が一杯になり涙ぐんでいた。

「それじゃ、他の小隊も見回らないとな。・・・じゃあな」

 ジカイラとヒナは、その微笑ましい光景に微笑むとグリフォン小隊の元を後にする。
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