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第三章 辺境派遣軍
第二十六話 教導大隊と海賊剣
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--その日の夜。士官学校、会議室。
ジカイラとラインハルトは、士官学校の会議室にいた。
ラインハルトは、エリシスを伴って士官学校の会議室に転移門を通って現れ、ジカイラと打ち合わせしていた。
ジカイラが口を開く。
「……それで。オレにガキどもを引き連れて、辺境の戦場に行けってか?」
「そうだ。学生達に実戦を経験させる良い機会だろう? 百回の座学より一回の経験のほうが重要だ」
「確かに。それは同感だ。で、相手はどんな奴等なんだ? 鼠人なんて、初めて聞いたぞ?」
「私も初めてさ。原始的な連中らしい。情報部のケニーからの報告書の写しがある。目を通しておいてくれ」
ラインハルトは、ジカイラに羊皮紙の報告書の写しを渡す。
「士官学校の部隊編成は、どうする?」
「貴族組と平民組を合わせた一学年の八個小隊を一個中隊として、一学年と二学年で二個中隊だ」
「『教導大隊』とでも呼ぶか。一般兵力は?」
「ヒマジン伯爵の帝国機甲兵団と東部方面軍を付ける。何かあっても、あの兵力があれば対処出来るだろう」
ジカイラが呆れた口調で話す。
「帝国機甲兵団って、辺境のネズミ退治に、わざわざ帝国軍虎の子の飛行戦艦と飛行空母、蒸気戦車を出すのか!?」
ラインハルトは苦笑いする。
「ジークとアレク、二人の息子の初陣だ。それなりの体裁は取るさ」
ラインハルトの言葉にジカイラが笑う。
「ははは。……親バカだな」
「まぁな。君の息子も初陣だろう?」
「そうだ。アレクが初陣ってことは、ウチのガキも初陣だなぁ……」
ジカイラは、両手を頭の後ろで組むと、天井を見上げて考える。
(アルフォンスに、何か『初陣の記念』になる物をやるか……)
--翌朝。
アレクたちがいつものように学校へ行くと、朝礼で担任のジカイラから、今日は臨時の全校集会があるので、講堂に集まるように告げられる。
アレクたちは、互いに顔を見合わせながら、講堂へと向かう。
アレクがアルに尋ねる。
「なんだろう? 臨時の全校集会って?」
「さぁ?」
生徒が講堂に集まると、軍監が壇上に登り、演説し始める。
「静粛に! 傾注せよ! 昨今、帝国東部辺境において、蛮族が帝国領に越境して侵入してくる事案が発生した。これに対し、皇帝ラインハルト陛下は、皇太子であるジークフリート殿下にこの蛮族を討伐するよう勅命を下された。皇太子殿下の親征に際し、諸君達、士官学校の学生も『教導大隊』として従軍するようにとの御言葉である!」
アルがアレクに耳打ちする。
「……マジか?」
「……マジだろう」
軍監が続ける。
「諸君ら、士官学校学生諸君においては、実戦を経験する絶好の機会である! 諸君らが日々、研鑽してきたその力を、いかんなく発揮できるよう、一層、努力することを期待する! 詳細は、各位、担任の教官から説明を受けるように! 以上だ!」
軍監の演説に講堂の中は、騒然となる。
アルは興奮気味にアレクに語る。
「まさか、オレたちも戦場に出られるなんて! オレの斧槍の腕を見せてやる! 何だか、今からもう、興奮してきた!」
興奮気味のアルに対して、アレクは、自分と兄との差が広がったような気がして、複雑な心境であった。
(兄上が蛮族討伐の勅命を受けた。少しは差を縮めてきたと思っていたのに……兄上に更に差をつけられたか……)
アレクたちは教室に戻り、担任のジカイラから詳細な説明を受ける。
士官学校の学生は『教導大隊』として東部方面軍と共に任地へ向かうこと。任務中は、主に小隊単位で行動すること。学生は『少尉相当官』、小隊長は『中尉相当官』になること。軍規違反は、軍法会議に掛けられることなどであった。
ジカイラが口を開く。
「何か質問はあるか?」
アレクは挙手する。
ジカイラがアレクを指名する。
「いいぞ」
アレクが質問する。
「自分達が戦う『蛮族』とは、どんな者達ですか?」
「良い質問だ」
ジカイラは、ラインハルトから受け取った報告書の写しを広げると、アレクたちに読んで説明する。
鼠人の説明を聞いた学生達が次々に口を開き、教室内がざわめく。
「鼠人……」
「ネズミ人……」
「初めて聞いた……」
ざわめく生徒達にジカイラが告げる。
「静粛に! 原始的な文明しか持っていない相手だ。恐らく個々の実力も、装備も、お前達のほうが上だ。冷静に教練どおりに戦えば勝てるだろう。だからといって、相手を侮るなよ? お前達がフザケていても、相手は本気でお前達を殺しに来ることを忘れるな!」
ジカイラの言葉に教室内が静まり返る。
ジカイラが続ける。
「今夜二十二時に帝国東部方面軍 帝国機甲兵団の飛行戦艦と飛行空母がここへ来る。お前達、士官学校の学生は、それに乗り込んで帝都へ移動。明日の昼前に帝都で出陣式が行われる。任地へ向かうのは、それからだ。以上。……乗船する二十二時まで、各自、自由行動だ。解散」
そう言うと、ジカイラは一旦、教室を出るが、直ぐに教室の扉を開けてアルを呼ぶ。
「アル! ちょっと来い!」
「はい?」
呼ばれたアルは、怪訝な顔をしながら教室から出て、廊下で待つジカイラの元へ行く。
自分の傍らに来たアルにジカイラが告げる。
「アル。お前の初陣だな。これを持って行け」
ジカイラはアルにそう言うと、アルに海賊剣を渡す。
海賊剣を渡されたアルが驚く。
「これ!?」
「……オレが海賊時代から使っていた海賊剣だ。野戦や中距離は、斧槍で戦えるが、狭い屋内戦や船内、近距離はコイツを使え。……良いか? 武器は、戦場や戦況に応じて使い分けろ。デカければ良いってもんじゃない」
尊敬する父ジカイラから海賊剣を貰ったアルは、満面の笑みを浮かべてジカイラに答える。
「『デカくて良いのは、チン●だけ』でしょ?」
「そうだ」
ジカイラは、微笑んでアルの頭をくしゃくしゃに撫でると、職員室へ向かって廊下を歩いて行った。
(オレも、ラインハルトのことを『親バカ』とは、言えないな……)
ジカイラとラインハルトは、士官学校の会議室にいた。
ラインハルトは、エリシスを伴って士官学校の会議室に転移門を通って現れ、ジカイラと打ち合わせしていた。
ジカイラが口を開く。
「……それで。オレにガキどもを引き連れて、辺境の戦場に行けってか?」
「そうだ。学生達に実戦を経験させる良い機会だろう? 百回の座学より一回の経験のほうが重要だ」
「確かに。それは同感だ。で、相手はどんな奴等なんだ? 鼠人なんて、初めて聞いたぞ?」
「私も初めてさ。原始的な連中らしい。情報部のケニーからの報告書の写しがある。目を通しておいてくれ」
ラインハルトは、ジカイラに羊皮紙の報告書の写しを渡す。
「士官学校の部隊編成は、どうする?」
「貴族組と平民組を合わせた一学年の八個小隊を一個中隊として、一学年と二学年で二個中隊だ」
「『教導大隊』とでも呼ぶか。一般兵力は?」
「ヒマジン伯爵の帝国機甲兵団と東部方面軍を付ける。何かあっても、あの兵力があれば対処出来るだろう」
ジカイラが呆れた口調で話す。
「帝国機甲兵団って、辺境のネズミ退治に、わざわざ帝国軍虎の子の飛行戦艦と飛行空母、蒸気戦車を出すのか!?」
ラインハルトは苦笑いする。
「ジークとアレク、二人の息子の初陣だ。それなりの体裁は取るさ」
ラインハルトの言葉にジカイラが笑う。
「ははは。……親バカだな」
「まぁな。君の息子も初陣だろう?」
「そうだ。アレクが初陣ってことは、ウチのガキも初陣だなぁ……」
ジカイラは、両手を頭の後ろで組むと、天井を見上げて考える。
(アルフォンスに、何か『初陣の記念』になる物をやるか……)
--翌朝。
アレクたちがいつものように学校へ行くと、朝礼で担任のジカイラから、今日は臨時の全校集会があるので、講堂に集まるように告げられる。
アレクたちは、互いに顔を見合わせながら、講堂へと向かう。
アレクがアルに尋ねる。
「なんだろう? 臨時の全校集会って?」
「さぁ?」
生徒が講堂に集まると、軍監が壇上に登り、演説し始める。
「静粛に! 傾注せよ! 昨今、帝国東部辺境において、蛮族が帝国領に越境して侵入してくる事案が発生した。これに対し、皇帝ラインハルト陛下は、皇太子であるジークフリート殿下にこの蛮族を討伐するよう勅命を下された。皇太子殿下の親征に際し、諸君達、士官学校の学生も『教導大隊』として従軍するようにとの御言葉である!」
アルがアレクに耳打ちする。
「……マジか?」
「……マジだろう」
軍監が続ける。
「諸君ら、士官学校学生諸君においては、実戦を経験する絶好の機会である! 諸君らが日々、研鑽してきたその力を、いかんなく発揮できるよう、一層、努力することを期待する! 詳細は、各位、担任の教官から説明を受けるように! 以上だ!」
軍監の演説に講堂の中は、騒然となる。
アルは興奮気味にアレクに語る。
「まさか、オレたちも戦場に出られるなんて! オレの斧槍の腕を見せてやる! 何だか、今からもう、興奮してきた!」
興奮気味のアルに対して、アレクは、自分と兄との差が広がったような気がして、複雑な心境であった。
(兄上が蛮族討伐の勅命を受けた。少しは差を縮めてきたと思っていたのに……兄上に更に差をつけられたか……)
アレクたちは教室に戻り、担任のジカイラから詳細な説明を受ける。
士官学校の学生は『教導大隊』として東部方面軍と共に任地へ向かうこと。任務中は、主に小隊単位で行動すること。学生は『少尉相当官』、小隊長は『中尉相当官』になること。軍規違反は、軍法会議に掛けられることなどであった。
ジカイラが口を開く。
「何か質問はあるか?」
アレクは挙手する。
ジカイラがアレクを指名する。
「いいぞ」
アレクが質問する。
「自分達が戦う『蛮族』とは、どんな者達ですか?」
「良い質問だ」
ジカイラは、ラインハルトから受け取った報告書の写しを広げると、アレクたちに読んで説明する。
鼠人の説明を聞いた学生達が次々に口を開き、教室内がざわめく。
「鼠人……」
「ネズミ人……」
「初めて聞いた……」
ざわめく生徒達にジカイラが告げる。
「静粛に! 原始的な文明しか持っていない相手だ。恐らく個々の実力も、装備も、お前達のほうが上だ。冷静に教練どおりに戦えば勝てるだろう。だからといって、相手を侮るなよ? お前達がフザケていても、相手は本気でお前達を殺しに来ることを忘れるな!」
ジカイラの言葉に教室内が静まり返る。
ジカイラが続ける。
「今夜二十二時に帝国東部方面軍 帝国機甲兵団の飛行戦艦と飛行空母がここへ来る。お前達、士官学校の学生は、それに乗り込んで帝都へ移動。明日の昼前に帝都で出陣式が行われる。任地へ向かうのは、それからだ。以上。……乗船する二十二時まで、各自、自由行動だ。解散」
そう言うと、ジカイラは一旦、教室を出るが、直ぐに教室の扉を開けてアルを呼ぶ。
「アル! ちょっと来い!」
「はい?」
呼ばれたアルは、怪訝な顔をしながら教室から出て、廊下で待つジカイラの元へ行く。
自分の傍らに来たアルにジカイラが告げる。
「アル。お前の初陣だな。これを持って行け」
ジカイラはアルにそう言うと、アルに海賊剣を渡す。
海賊剣を渡されたアルが驚く。
「これ!?」
「……オレが海賊時代から使っていた海賊剣だ。野戦や中距離は、斧槍で戦えるが、狭い屋内戦や船内、近距離はコイツを使え。……良いか? 武器は、戦場や戦況に応じて使い分けろ。デカければ良いってもんじゃない」
尊敬する父ジカイラから海賊剣を貰ったアルは、満面の笑みを浮かべてジカイラに答える。
「『デカくて良いのは、チン●だけ』でしょ?」
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