アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち

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第三章 辺境派遣軍

第二十七話 親征前夜、飛行空母の部屋で

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 士官学校での全校集会が終わって解散となり、アレクたちは寮へ戻った。

 アレクたちは飛行空母に乗船するまでの時間で、昼食と夕食、入浴を間に挟んで、それぞれ荷物をまとめ、従軍の準備をする。



--夜。

 アレクたちは、予定の二十二時より少し早い時間に寮から士官学校へと向かう。

 士官学校へ向かうアレクたちの目に、士官学校併設の飛行場に停泊する帝国機甲兵団の飛行戦艦群と飛行空母群が見えてくる。

 飛行戦艦と飛行空母は、その巨大な船体を飛行場に留め、周囲の照明が飛行艦隊の勇姿を闇夜に照らし出していた。
 
 また、飛行戦艦や飛行空母の船体に無数にある窓から漏れ出る煌々とした光は、飛行戦艦や飛行空母をシャンデリアのように飾っていた。

 アレクは、飛行艦隊を見て呟く。

「凄い……」

 アルもアレクに同意する。

「ああ。すげぇぜ!」

 トゥルムも呟く。

「こんな巨大な戦艦や空母が、空を飛ぶというのか……」

 ルイーゼも飛行艦隊を見て呟く。

「綺麗ね……」

 傍らのナタリーが答える。

「大きなシャンデリアみたい」

 エルザがアレクに話し掛ける。

「アレク! 私たち、飛行空母に乗るんだよね? 早く行って、場所取りしよう!」

 ナディアもアレクに話し掛ける。

「そうよ! 席を確保しないとね! 私は、窓際の席が良いわ!」

 アルは、はしゃぐ二人をたしなめる。

「……お前ら、観光旅行に行く訳じゃないんだぞ!?」

 アルの言葉に皆が笑う。




 アレクたちは足早に歩き、飛行空母の乗艦タラップの前に行くと、タラップ前には兵士がおり、その兵士がアレクに尋ねる。

「どこの部隊だ?」

「教導大隊所属のユニコーン小隊です」

 兵士は、名簿と編成表を確認してアレクに答える。

「確認した。乗って良い。ラウンジで係の者が部屋へ案内する」

「了解!」

 アレクたちは、乗艦タラップを登り、飛行空母に乗艦する。

 乗艦タラップの先は格納庫になっており、最新のガンシップ型飛空艇が綺麗に並んでいた。

 アレクは、格納庫に並んでいる飛空艇を見て思わず口を開く。

「こっちも凄い……。全部、最新式の飛空艇だ!」

 アルも興奮気味に答える。

「ああ。士官学校のポンコツとは違う。……本物のガンシップだ!」

 キョロキョロと周囲を見ながら、アレクたちは格納庫を通り抜け、ラウンジに入る。

 飛行空母のラウンジは、高級ホテルのそれのような豪華な造りになっており、一面の壁全てがガラス張りで外の景色を眺めることが出来た。

 アレクがガラス越しに外を見ると、士官学校の夜景と飛行場に向き合って並ぶ飛行戦艦群が見えた。

 係員がアレクたちに話し掛けてくる。

「どこの部隊だ?」

「教導大隊所属、ユニコーン小隊です」

「了解。今から案内する」

 係員は、アレクたちを部屋に案内する。

 部屋の前に来ると、係員は名前を読み上げる。

「アレキサンダー・ヘーゲル、ルイーゼ・エスターライヒ。君達はこの部屋だ」

 係員は隣の部屋の前に行くと、再び名前を読み上げる。

「アルフォンス・オブストラクト、ナタリー・チャウデゥリー」

 係員は次々と隣の部屋の前に行き、部屋割りの名前を読み上げる。

「エルザ、ナディア・フロレスク」

「トゥルム・ドルジ、ドミトリー・ボグザ。以上だ。くつろいでくれたまえ。それでは失礼する」

 係員は、事務的にアレクたちを部屋に案内すると『自分の仕事は終わった』と、さっさとラウンジへと戻って行った。

 ドミトリーは、直ぐに案内された部屋に入る。

 トゥルムもドミトリーに続いて部屋の中に入ろうとするが、案内された部屋の前で固まっているアレクたちを不審に思い、話し掛ける。

「アレク? アル? 部屋の前で突っ立ったままでどうした? 中に入らないのか?」

「入るよ」

「オレも」

 アレク、アル、ルイーゼ、ナタリーは、同じ部屋に泊まる事にそれぞれ赤くなって照れていた。

 エルザは、照れている四人の様子を見て満面の笑みを浮かべながらルイーゼを茶化す。

「んん~? ルイーゼ。私が部屋を代わってあげようか?」

「大丈夫!」

 ルイーゼはエルザにそう言い切ると、耳まで赤くなりながらアレクの顔を見て口を開く。

「アレクと同じ部屋に泊まるから!」

 ナディアもニヤニヤしながら、ナタリーを茶化す。

「ナタリーも。私が部屋を代わってあげるよ~?」

「私も……大丈夫」

 アルは、照れながらナタリーに話し掛ける。

「ナ、ナタリー。と、取り敢えず、部屋に荷物を置こう!」

「……うん」

 アルとナタリーの二人は、案内された部屋に入って行った。

 アレクがルイーゼに話し掛ける。

「ルイーゼ」

「うん」

 アレクとルイーゼの二人は、案内された部屋に入って行く。

 廊下に残っているのは、エルザとナディアの二人になる。

 エルザがナディアに話し掛ける。

「……まぁ、ナディアと一緒だから、良いか」

「そうね」





 八人は、それぞれの部屋に荷物を置くと、再びラウンジに集まって窓際の席に陣取り、カウンターで飲み物や軽食を頼む。

 アレクは、パンを食べながら口を開く。

鼠人スケーブンって、どんな奴等なんだろう?」

 エルザは、したり顔で皆に解説する。

「私、村の長老から聞いたことがあるわ。『二本の足で立つ、人間サイズになったドブネズミ』だって言ってた」

 エルザの解説に他の小隊メンバー達が引く。

「うわぁ……」

 アレクは苦笑いしながら呟く。

「それは……あまり、触りたくないな」

 ルイーゼも、同意する。

「私も……」

 ナタリーも眉間にシワを寄せて、露骨に嫌な顔をする。

 エルザが解説を続ける。

「あいつらは人間を食べるし、共食いするし、凄く汚いから、他の獣人ビーストマン部族からも嫌悪されていたって。もし、私たちが捕まったら、食べられるわね」

 トゥルムは怪訝な顔をして口を開く。

「仮に、捕まったら、生きたままネズミにかじられるのか」

 ドミトリーも露骨に嫌な顔をしてトゥルムに答える。

「……嫌過ぎる」

 アルは、パンを食べながらエルザに尋ねる。

「デカいネズミなんだろ?」

 エルザは、果物の盛り合わせをつまみながら答える。

「普段は、穴を掘って地下に住んでいるみたい」

 ナタリーは、ホットミルクのカップを両手で持ちながら口を開く。

「そうなんだ」

 アルがエルザをからかう。

「お前、猫系の獣人ビーストマンなんだから、鼠人スケーブンを捕まえるの得意なんじゃないの?」

 エルザはムキになって答える。

「ちょ……、こんな『子猫のような愛らしい乙女』がネズミ取りなんて、やる訳無いでしょ!」

 エルザの言葉に皆が笑う。




 ラウンジで小隊のメンバーで集まってアレコレ話しているうちに、夜は更けて深夜になり、皆、寝るため、それぞれ割り当てられた部屋へ戻る。




 アルとナタリーは、部屋の中に入る。

 アルは、緊張気味にナタリーに話し掛ける。

「あの……ナタリー。着替えとかする時は教えてね。オレ、部屋を出るから」

 ナタリーは微笑んで答える。

「ありがとう。早速、着替えるわ」

「判った。部屋の前にいるから、終わったら教えて」

「うん」

 二人は交互に部屋を出て、制服を脱ぎ、部屋着に着替えを済ませる。 

 再び、アルが口を開く。

「明かり……消すけど。良い?」

 自分のベッドに腰掛けるナタリーが答える。

「うん」

 アルは部屋の照明を消す。

 アルが部屋の照明を消すと、窓際の壁のくるぶしくらいの高さにある、僅かな光を放つ常夜灯が灯り、壁から床を照らし出す。

 二人は、ベッドに入る。

 アルは、初めて女の子と同じ部屋で寝る緊張を紛らわせるため、ナタリーとは反対側の壁のほうを向いてベッドに入る。





 沈黙のまま、しばらく時間が過ぎる。

 ナタリーがアルに話し掛ける。

「……アル。まだ、起きてる?」

「起きてるよ。どうしたの?」

「……私。エルザの話を聞いたら、何だか怖くなっちゃって」

「そうなんだ」

鼠人スケーブンに捕まったら、どうしようって。……私、食べられたくない」

 薄明かりが灯る中、アルが部屋のベッドで寝返りをうってナタリーの方を向くと、ナタリーはずっとアルのことを見詰めていた。

「ナタリー。大丈夫だよ。オレがついているから」

 アルは、ベッドの上で上半身だけ起こすと、おどけて仰々しく決めポーズを取り、名乗りを上げる。

「我こそは、『黒い剣士』こと帝国無宿人ジカイラが一子、アルフォンス・オブストラクト・ジカイラ・ジュニア! 我が命に代えて、ナタリー姫をお守り致す!」

 ナタリーは、自分を安心させようと、決めポーズを取っておどけるアルを見て微笑む。

「アル。ありがとう」

 ナタリーの笑顔を見て、アルもベッドに入り毛布を被る。

 二人は薄明かりが灯る部屋で眠りに付いた。
 




--少し時間を戻したアレクとルイーゼの部屋。

 アレクとルイーゼは部屋に入る。

 ルイーゼは、部屋にアレクがいるにもかかわらず、制服を脱いで着替え始める。

 アレクは、ルイーゼの下着姿に目が釘付けになる。

 しなやかな筋肉が付いている細く長い四肢、膨らんでいる胸、くびれた腰、大きくて上を向いている発育した安産型のお尻。

 驚いたアレクが口を開く。

「ルイーゼ!?」

「どうしたの? アレク?」

 そう言いつつ、ルイーゼは、アレクの目を気に留める様子も無く、着替えを続ける。

 焦るアレクはベッドに腰掛けると、しどろもどろに答える。

「いや……、ホラ……、オレの前で着替えて、平気なの?」

 ルイーゼは口元に手を当てて微笑みながら話す。

「お互い、裸を見るのは初めてじゃないでしょ?」

「そうだけど……」

 着替えを終えたルイーゼは、アレクの隣に座る。

「アレクは着替えないの?」

「着替えるよ」

 アレクはルイーゼに言われるまま、着替え始める。

 アレクの下着姿を見たルイーゼは、赤面しながら告げる。

「アレク。……オチ●●ン勃ってる」

「うわっ!?」

 ルイーゼの下着姿を見て、思春期のアレクの体は敏感に反応していた。

「……ごめん」

「……良いの」

 アレクは手早く着替えを済ませる。といっても、制服を脱いだだけで、パンツ姿であった。

 ルイーゼは、アレクの着替えが終わったことを見計らって声を掛ける。

「明かり、消すね」

「うん」 

 薄明かりが灯る部屋で、二人はそれぞれベッドに入る。

 ルイーゼの下着姿に欲情して勃っていたのを見られ、気不味いアレクはベッドの中でルイーゼとは反対方向の壁の方を向く。




 しばらくすると、アレクのベッドの中にルイーゼが入ってくる。

 アレクの背中にルイーゼの女の柔肌の感触が伝わり、ほのかに石鹸の匂いが香る。

「ルイーゼ!?」

 驚くアレクにルイーゼが口を開く。

「アレク。……一緒に寝て良い?」

「うん」

「腕枕して。お願い」

「……良いよ」

 アレクはルイーゼに左腕を差し出すと、ルイーゼはアレクの腕に頭を置き、アレクに寄り添って体を預けてくる。

 ルイーゼが身体を密着させてきたため、肌と肌が触れあい、彼女が裸でベッドに入ってきたことにアレクが気付く。

 ルイーゼは、そっとアレクの股間に手を伸ばすと、そそり勃つ男性器の裏筋を下着越しに指先でなぞる。

 驚いたアレクがルイーゼを咎める。

「ダメだって、ルイーゼ! 射精するでるから!」

「出していいのに。……ふふ。ごめんなさい」

 いつになく積極的なルイーゼに、アレクが尋ねる。

「どうしたの?」

「……私、怖いの」

「怖いって、何が?」 

「今度の親征で、アレクに何かあったら、どうしようって……」

 自分の事を心配してくれるルイーゼに、アレクは笑って答える。

「大丈夫だよ。ネズミ人なんて、楽勝だから」

「……ホント?」

「本当さ。ジカイラ教官だって言ってただろう? 『個々の実力も、装備も、お前達のほうが上だ』って。それに、上級騎士パラディンの兄上も、帝国東部方面軍も、帝国四魔将のヒマジン伯爵も一緒さ。心配無いよ」

 アレクは無意識に兄ジークを頼りにしていた。

「アレク。初陣だからって、無茶しないでね。お願い」

「心配無い。約束するよ」

「ありがとう」

 しばらくすると、ルイーゼが穏やかな寝息を立て始める。

 アレクは、再び眠れない夜を過ごした。
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