アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち

StarFox

文字の大きさ
32 / 63
第三章 辺境派遣軍

第三十話 初陣

しおりを挟む
--翌朝。

 帝国辺境派遣軍は、定刻通りにヨーイチ男爵領州都『キャスパーシティ』上空に到着した。

 アレクたちは、先日、宿泊した時と同じ部屋に同じ部屋割りで泊まり、朝を迎える。

 アルとナタリーは、初日は同じ部屋に泊まることに緊張していたものの、二日目ともなると少し慣れたようであった。

 アレクとルイーゼも同様であったが、アレクは裸のルイーゼが傍らで寝ている『蛇の生殺し』状態が続いたため、寝不足気味であった。

 平民組、貴族組と朝食を食べ終わった頃に呼集が掛かり、アレクたちは武装して格納庫に集まる。

 格納庫では、二人の教官、もとい、ジカイラ中佐とヒナ大尉がアレクたちが集合するのを待っていた。

 ジカイラは、教え子たちが時間通り集まった事を確認して口を開く。

「傾注せよ! オレたち、教導大隊の初任務は、『偵察』だ! 飛空艇による航空偵察を行う! 小隊毎に別れ、担当する地域を偵察すること! 小隊長は、自分の小隊の担当地域を地図で確認するように!」

 傍らのヒナが地図を掲示板に貼り出すと、ジカイラは地図を指し示しながら説明を続ける。

「現時点では、敵に関する詳しい情報は、ほとんど判っていない! 敵の勢力範囲や宿営地、兵站施設、補給基地なども、ほぼ不明だ! 各員、可能な限り情報を集めろ! 各機のナビゲーターは、担当地域の偵察で確認したことを記録! 各小隊は、正午迄に飛行空母に帰投すること! 以上だ!」

 アルは、残念そうにアレクに話し掛ける。

「な~んだ。初陣は、偵察任務かぁ……」

 苦笑いしながらアレクが答える。

「まぁ、そんなもんだろ」

 エルザが地図を書き写しながら、二人に話し掛ける。

「文句言わないの! 楽な任務で良いでしょ?」

 アルは不満げに答える。

「それは、そうだけどさぁ……」

 トゥルムが異論を唱える。

「何を言っている? 『偵察』は重要だぞ! 敵の位置や陣地、兵力、装備が判らないで、どう戦う? まず『敵を知ること』が重要だ!」

 トゥルムの意見にアレクは素直に感心する。

「……なるほど」

 アレクたちは掲示板の前に行き、自分たちの小隊が担当する地域の位置を確認する。

 作戦区域となるヨーイチ男爵領は、アスカニア大陸の経済の動脈である『交易公路』も無ければ、大きな街道も鉄道も大河も港も無い。

 ヨーイチ男爵家が本宅を構える州都『キャスパーシティ』は、『都市』というより『田舎の町』であり、それの他は開拓集落が領内に点在しているだけであった。

 ヨーイチ男爵領は、なだらかな丘陵のある原野の中央に大きな原生林がある他、小さめの原生林と小川が原野に点在するという、まさに『帝国辺境の未開の開拓地域』であった。

 ルイーゼは、地図を見ながら呟く。

「今の私達のいる場所が、ここ。ヨーイチ男爵家のあるキャスパーシティの上空」

 小隊の仲間たちが頷くと、ルイーぜは解説を続ける。

「私達、ユニコーン小隊は、キャスパーシティの上空から真っ直ぐ東に進んで、ここまで行くっと。ヨーイチ男爵領の東南の一番端の地域の担当ね」

 アレクが答える。

「東南の一番端……だね。隣の地域の担当は、グリフォン小隊か……」

 グリフォン小隊は、ルドルフ・ヘーゲルが小隊長を務める小隊であった。




 アレクたちは、地図で自分たちが担当する地域を確認すると、出発時刻が近いこともあり、自分たちが乗るガンシップの所に行き、乗り込む。

ガンシップ『エインヘリアルⅡ』
カロネード砲 二門搭載
魔導発動機 二機搭載
複座式 戦闘爆撃機


 アレクは、小隊全員が飛空艇に乗り込んだ事を確認して整備員に告げる。

「ユニコーン小隊、出撃します!」

「了解!」

 整備員は、同僚と共にアレクたちが乗る四機の飛空艇をエレベーターに押して乗せると、同僚の整備員に向かって叫ぶ。

「ユニコーンが出る! エレベーターを上げろ!」

 整備員が動力を切り替えると、飛行甲板に向けてアレクたちが搭乗する四機の飛空艇は、エレベーターで上昇していく。

 程なく、アレクたちが搭乗する四機の飛空艇は、飛行甲板に出る。



 上空の冷たい風がアレクの顔を撫でる。

 アレクは、伝声管でルイーゼに告げる。

「行くよ。ルイーゼ」

「うん」

発動機始動モータリングスタート!」

 アレクは、掛け声と共に魔導発動機エンジンの起動ボタンを押す。

 魔導発動機エンジンの音が響く。

 ルイーゼが続く。

飛行前点検プリフライトチェック開始スタート!」

 ルイーゼは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。

魔導発動機エンジン航法計器エアーデータ浮遊水晶クリスタル降着装置ギア昇降舵フラップ全て異常無しオールグリーン!」

 ルイーゼからの報告を受け、アレクは浮遊フローティング水晶クリスタルに魔力を加えるバルブを開く。

「ユニコーン・リーダー、離陸テイクオフ!」

 アレクの声の後、大きな団扇うちわを扇いだような音と共に機体が浮かび上がる。

発進ゴー!」

 アレクは、クラッチをゆっくりと繋ぎ、スロットルを開ける。

 プロペラの回転数が上がり、風切り音が大きくなると、アレクとルイーゼの乗る機体ユニコーン・リーダーは、加速しながら飛行甲板の上を進む。

 やがて飛行甲板の終わりまでくると、二人の乗るユニコーン・リーダーは大空へと舞い上がった。



 二人の乗るユニコーン・リーダーは飛行空母の上を旋回して、小隊の仲間が離陸してくるのを待つ。

 直ぐにアルとナタリーが乗るユニコーン二号機が飛行空母を発進し、上昇してくる。

 続いて、ドミトリーとナディアが乗るユニコーン三号機とエルザとトゥルムが乗るユニコーン四号機が飛行空母から発進して上昇してくる。

 四機全てが揃ったユニコーン小隊は、自分たちが偵察を担当する地域を目指し、編隊を組んで向かった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

処理中です...