アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち

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第三章 辺境派遣軍

第二十九話 作戦会議

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 皇宮前広場での皇太子ジークによる号令の後、昼食の時間となり、出陣式参加者はそれぞれ食事や休憩に向かう。

 皇太子であるジークは、ソフィアとアストリッドの二人を伴って皇宮の中へと歩いて行く。

 侍従に先導されながら三人が向かった先は、皇帝の私室であった。

 侍従が扉をノックすると応える声がした後、扉が開けられ、三人は皇帝の私室の中に入る。

 私室の中にいたのは皇妃のナナイであった。三人は、ナナイの元に向かう。

 ジークは、ナナイの前へ行くと口を開く。

「母上。これよりジークは戦地へ出征致します。どうか、御心安らかな日々を」

 そう告げると、ジークは母親であるナナイに深く頭を下げる。

 ナナイもジークに声を掛ける。

「ジーク。どうか無事で……アレクのことをよろしくね」

「承知しております……では」

 ジークはそうナナイに答えると、ソフィアとアストリッドを伴って皇帝の私室から廊下へと出た。

 ジークが廊下へ出ると、大勢のメイド達が廊下に並んでジークが皇帝の私室から出てくるのを待っていた。

 ジークの姿を見たメイド達が、ジークの元に集まり詰め寄ってくる。

「ジーク様!」

「ジーク様!」

「殿下!」

 すぐにソフィアがジークとメイド達の間に割って入り、メイド達を一喝する。

「下がれ! 貴様ら!」

 ジークはソフィアの肩に手を置いてたしなめると、メイド達に声を掛ける。

「よい。ソフィア……それで。どうした? お前達?」

 ジークに詰め寄ったメイドの一人が口を開く。

「ジーク様、どうかご無事で」

 そう言うと彼女は、両手で小さな布袋をジークに差し出す。

「……これは?」

「私が作ったお守りです。御持ち下さい」

 ジークはメイドから小さな布袋を受け取ると、お礼を言う。

「ありがとう」

 メイドの最初の一人がジークにお守りを手渡すと、他のメイド達も次々にジークにお手製のお守りを差し出す。

「私も作りました」

「ジーク様。どうかご無事で」

「御持ち下さい」

「みんな、ありがとう。私は必ず帰ってくる。約束しよう」

 ジークは、笑顔でメイド達に答えると、二人を連れて皇宮前広場に向かうべく廊下を歩いていく。

「ジーク様!」

「ジーク様!」

 ジークは、大勢のメイド達に見送られながら皇宮を後にする。





 ジーク達が皇宮の玄関に差し掛かったところで、ソフィアが呟く。

「……メイドの分際で。おこがましい」

 ソフィアは、メイド達に妬いていた。

 ジークが微笑みながら、ソフィアを諭す。

「そう、妬くな。ソフィア」

「ですが!」

 そう言い掛けたソフィアの口を、振り向いたジークの口が塞ぐ。

「んっ……んんっ……」

 ソフィアは、口の中に捩じ込まれた想い人の舌先が、自分の口の中を弄るように上顎を舐め上げると、その舌先に自分の舌を絡める。

「はぁ……あっ……ジーク様」

 キスし終えたソフィアは、うっとりとジークの顔を見上げる。

「ソフィアがいつもの笑顔に戻る『おまじない』だ。今日は大勢の人々が我々のために集まってくれている。君の素敵な笑顔を見せてやってくれ」

 ソフィアは照れて赤くなり、上目遣いにジークを見詰めながら答える。

「……はい」

 三人は、皇宮を後にし、皇宮前広場の馬車に乗り込む。





 帝国軍は、ジーク達の乗る馬車を先頭に帝都郊外の基地飛行場を目指して再び大通りを行進していく。

 皇太子ジークフリートとソフィア、アストリッド、帝国四魔将ヒマジン伯爵、帝国機甲兵団、教導大隊、東部方面軍の諸兵科の順であった。

 アレクたちの乗る馬車も、沿道の市民達から声援を受けながら大通りを走っていた。

 アルがアレクに話し掛ける。

「しかし、皇太子殿下は凄い人気だな。見ろよ、あの壁」

 アレクがアルが指で指し示す方向を見ると、大通りに面した建物の壁に壁画が描かれていた。

 その壁画は、上部に皇太子ジークフリートの肖像画、その下に空を飛ぶ飛行空母と飛行戦艦の艦隊、その下に爆撃されて逃げ惑う鼠人スケーブン達の姿の絵が描かれていた。

 アレクは、その壁画を見ながら考える。

(兄上は民衆に人気があるんだな……知らなかった)

 ナタリーが口を開く。

「私達も頑張らないとね!」

 ルイーゼが同意する。

「そうね」

 やがて帝国辺境派遣軍は、帝都郊外の基地併設飛行場に到着。東部方面軍の飛行空母群や飛行戦艦群、輸送船団に分乗すると、戦地であるヨーイチ男爵領へ向けて出発した。






 皇太子であるジークは、二人の護衛と東部方面軍総司令のヒマジン伯爵と共に艦隊旗艦の飛行空母の艦橋にいた。

 ジークがヒマジン伯爵に話し掛ける。

「ヒマジン伯爵。今回の親征は、よろしく頼む。早速、打ち合わせをしたいが」

「ご心配なく、殿下。それと打ち合わせするなら、教導大隊のジカイラ中佐も呼んだほうが良い」

 士官学校では『教官』と呼ばれるジカイラだが、軍に戻ると『中佐』の階級であった。

「そうだな。そうしよう」

 程なくジカイラが艦橋にやってくる。

「お呼びですか?」

「良く来てくれた中佐」
 
 ジーク、ヒマジン伯爵、ジカイラの三人で、簡単な作戦会議を行う。

 ヒマジン伯爵が概要を説明する。

「艦隊は、明日の朝に戦地に着くように段取りしてある。現在、敵の兵力、規模は不明」

 考えながらジークが口を開く。

「なるほど。……そうすると、まず情報収集からだな。……ジカイラ中佐。戦地に付いたら、教導大隊に航空偵察をお願いしたい」

 ジカイラが答える。

「判りました」

 ジークが続ける。

「敵の情報が欲しい。敵の宿営地や、その規模、装備、兵站、補給線、哨戒線、部隊構成など、判ったことがあれば、教えてくれ」

 ジカイラが答える。

「了解しました。……一つ尋ねても?」 

 ジークが答える。

「どうぞ。遠慮無く」

 ジカイラが質問する。

「今度の親征。殿下はどこまでやるつもりですか?」

「『どこまで』とは?」

鼠人スケーブンを絶滅するまで戦いますか?」

「……その必要は無い。鼠人スケーブンを帝国領土から、追い払えばそれで良い」

「判りました。基本的な方針が知りたかっただけです。」

「……ジカイラ中佐。貴方は父上の戦友であり、私の恩師でもある。……私に遠慮は無用だ」

「了解しました」

 

 最初の作戦会議は、『まずは敵の偵察』というところで落ち着いた。

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