アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち

StarFox

文字の大きさ
40 / 63
第三章 辺境派遣軍

第三十八話 男爵領 中央部東側 開拓村 防衛戦(三)

しおりを挟む
--深夜。

 開拓村の祝勝会を楽しんだアレクたちは飛行空母に戻り、それぞれの部屋で眠りに就いて休んでいた。

 ドアをノックする音でアレクが目覚める。

 エルザであった。

「アレク、ルイーゼ。起きた? 私たちの当直の時間よ」

「判った。すぐ行く」

 アレクはそう答えると、傍らのルイーゼを起こして装備を整える。

「ルイーゼ。当直の時間だ。行こう」

 二人は装備を整えると、部屋から廊下に出る。

 アレクとルイーゼが最後だったようで、他の小隊の仲間たちは準備を終えて、廊下で二人を待っていた。

 メンバーが揃ったユニコーン小隊は、格納庫へ行くと四機の飛空艇に乗り込む。

 整備員たちがアレクたちの乗る飛空艇をエレベーターに動かし、エレベーターを上昇させて飛行甲板に飛空艇を出す。






 アレクたちが乗り込む四機の飛空艇が、下弦の月が照らし出す飛行甲板を進んで行く。

 飛行空母が滞空する高度の高い上空は、地上より気温が低く、冷えた凍てつく空気がアレクたちの頬を撫でる。

 アレクが口を開く。

「行くよ。ルイーゼ」

「うん」

 アレクたちは飛行甲板から離陸して上空で編隊を組むと、決められた飛行ルートを飛び、哨戒任務を始める。

 アレクはルイーゼを気遣う。

「ルイーゼ。寒くない?」

「大丈夫」






 ユニコーン小隊は、決められたコースに従って小一時間ほど哨戒を続け、開拓村の北西部にある原生林の中を通る道路の上空に差し掛かる。

 ルイーゼは、ふと地上を見ると、道路の上で動いている『何か』に気が付く。

(何? あれ?)

 ルイーゼがアレクに話し掛ける。

「アレク、森の中の道路に何かいる!」

 アレクは、ルイーゼが指差す方向に目を向ける。

 ところどころ原生林の茂みが道路を覆っているが、薄暗い月明かりの中、夜の道路を隊列を作って進む『何か黒い物体』が居た。

(なんだ? アレは?)

 アレクは、ルイーゼに指示を出す。

「ルイーゼ、照明弾!」

「了解!」

「用意! …………撃て!」

 ルイーゼはアレクの号令で、原生林の中を通る道路に向けて照明弾を撃つ。

  飛空艇から発射された照明弾は、落下傘を広げると徐々に降下して、まばゆい光が原生林の中を通る道路を照らし出す。

 アレクたちに夜の道路を進む『何か黒い物体』の姿が見えてくる。





 
 それは、鼠の頭を三つ持ち、四本の前足と二本の後足、太く長い鼠の尻尾を持つ、河馬ほど大きさの化物の群れと鼠の頭を持った巨躯の化物たちであった。

 道路を隊列を組んで進む化物たちの周囲を鼠人スケーブンたちが続いて歩いていた。

 アレクが驚く。

「まさか! 鼠人スケーブン合成獣キメラか!?」

 ルイーゼが尋ねる。

合成獣キメラ!? あんなにたくさん!」

 それに人間の倍の背丈はある、鼠の頭をした食人鬼オーガの隊列。

 アレクが続ける。

「……奴ら、道路を北西に向かってる。確か、あの先には、別の開拓村が!」

 ルイーゼは、手元の照明で地図を照らし、アレクの言葉を確かめる。

「アレク。確かに北西に別の開拓村があるわ!」

 ルイーゼからの報告を聞き、アレクは考える。

(……どうする? このまま、空から敵部隊を追うか? それとも、空母に戻って中佐や大尉に報告するのが先か?)

 アレクは決断する。

「……ルイーゼ、一旦、空母に戻ろう。敵軍の移動をジカイラ中佐かヒナ大尉に報告しないと、大変な事になる!」

「了解!」

 アレクたちユニコーン小隊は、飛行空母に引き返した。






 飛行空母に戻ったアレクたちは、敵軍の発見と移動をジカイラに報告する。

 ジカイラは、アレクたちに休むように告げるとジークの元へ向かう。

 廊下を歩きながら、ジカイラは考える。

(敵軍に合成獣キメラ食人鬼オーガがいるとは……)

 ジカイラはジークの部屋をノックする。

「殿下。お休みのところ、失礼します」

「どうした?」

「哨戒機が敵部隊の移動を発見しました。原生林の中を北西の開拓村に向かっているようです」

「判った。すぐ行く」

 ジークは身支度すると、ジカイラと共に艦橋へ向かう。

 艦橋に赴いたジークは、ヒマジンや将校たちを呼ぶと直ぐに緊急の軍議を開く。

 ジカイラが艦橋に集まった者たちに地図で指し示しながら状況を説明する。

 敵軍に鼠合成獣ラットキメラ鼠食人鬼ラットオーガがいるという情報は、少なからず帝国辺境派遣軍を動揺させた。

 ジークが口を開く。

「夜間、原生林の中を移動しているのは、恐らく敵の主力部隊だろう。飛行戦艦と飛行空母、ヒマジン伯爵の陸戦隊を北西の開拓村へ向かわせる。無論、私も行く。」

 ジカイラが尋ねる。

「この村は?」

 ジークが答える。

「この村には、教導大隊を残す。ジカイラ中佐、後を頼む」

「了解」

 帝国辺境派遣軍の方針が決まったため、帝国軍は直ちに作戦行動に移る。





 深夜に非常呼集が掛かって起こされた教導大隊の学生たちは、皆、眠そうであった。

 教導大隊が揚陸艇に分乗して地上に降下すると、飛行戦艦と飛行空母は、北西の開拓者村を目指して移動し始めた。

 揚陸艇は村の郊外に着陸する。分乗して地上に降下した教導大隊は、揚陸艇の中で一晩を過ごした。

 揚陸艇は、蒸気戦車スチームタンクを格納できるほどの結構な大きさと広さがあり、アレクたちユニコーン小隊は、戦闘装備のまま揚陸艇の格納庫の座席に座って眠りに就く。

 ルイーゼはアレクの傍らでアレクの肩に寄り掛かって眠る。

 アルとナタリーも同様であった。
 
 
 


--翌日の早朝。

 未開の原野が連なる地平線に朝日が昇り始める。

 ユニコーン小隊が眠りに就く揚陸艇の格納庫の中に、突然、警報が鳴り響く。

 伝令が叫ぶ。

「敵だ! 鼠人スケーブンの軍勢が攻めて来たぞ!」

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

処理中です...