アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち

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第三章 辺境派遣軍

第三十七話 告白

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 アレクたちユニコーン小隊は、無我夢中で目の前の敵と戦っていた。

 アレクが切り結んでいた鼠人スケーブンを斬り伏せた時、後続の敵がいない事に気が付く。

 周囲を見渡すと、鼠人スケーブンの軍勢は敗走していた。

 アル、トゥルム、エルザが正面の敵を倒すと、小隊の戦闘は終息する。

 アレクは、肩で荒い息をしながら口を開く。

「はぁ……はぁ……勝ったのか?」

 アルも同様であった。

「ふぅ……どうやら……そうみたいだな」

 エルザが両手剣を地面に突き立てて呟く。

「あぁ~ん。疲れたわ。もぅ~、汗だく! 早くお風呂に入りたい!」

 ナディアも座り込んで呟く。

「そうね。私も早くお風呂に入って、冷たいフルーツパフェが食べたい!」

 トゥルムは、敗走していく鼠人スケーブンの軍勢を眺めながら口を開く。

「見ろ。鼠人スケーブン達が逃げて行くぞ」

 ルイーゼが呟く。

「勝ったのね。私達」

 アレクが答える。

「ああ」

 戦闘が終わり、立ち尽くすアレクたちユニコーン小隊の前の原野には、無数の鼠人スケーブン達の屍が横たわっていた。






--夕刻。

 帝国辺境派遣軍と鼠人スケーブンの初の本格的な地上戦であったが、初戦は帝国軍の圧倒的な勝利に終わった。
 
 帝国軍は、敗走する鼠人スケーブン達を深追いせず、補給と整備を行い交代で休息を取る。

 教導大隊は、揚陸艇に乗り飛行空母へ帰還した。

 アレクたちのユニコーン小隊にも哨戒や警戒といった任務が交代で割り振られたが、当直の時間までは自由時間となった。

 飛行空母に戻ると、小隊全員が身体に付いた血と汗と土埃を洗い流そうと、大浴場へ向かう。

 入浴を済ませた小隊の仲間たちは、ラウンジのいつもの席に集まる。

 女の子達は、早速、ラウンジのカウンターでフルーツパフェを頼むと、席に持ってきて食べ始めた。

 アレクがパフェを食べているルイーゼに話し掛ける。

「ルイーゼ。それ食べ終わったら、一緒に開拓村に行かないか?」

「開拓村?」

「そう。今回の戦勝を祝って、開拓村の人達が祝勝会をやってくれるみたいだから、一緒に行こう」

「うん!」

 ルイーゼは、アレクからのデートの誘いに笑顔で答える。

 アレクとルイーゼの会話を聞いていたアルもナタリーを誘う。

「へ~。開拓村の祝勝会ねぇ~。……ナタリー、オレ達も行ってみよう!」

「うん」

 四人の会話を聞いていたエルザとナディアも、身を乗り出して話に加わる。

「えー! 何、何!? 開拓村のお祭り? 私も行くー!」

「私も行く! 屋台とか、出てるかな?」

 『お祭り』という単語に、普段は無口なトゥルムとドミトリーも反応する。

「開拓村の祭りか! 恐らく、酒が出るだろう! 私も行くぞ!」

「うむ! 拙僧も、久々に屋台で『骨付き肉』を頂こう!」

 結局、ユニコーン小隊全員が開拓村の祝勝会に行くため、連絡便の揚陸艇に乗り込む。

 

 

 連絡便の揚陸艇は、飛行空母の飛行甲板から地上の開拓村の郊外に降下する。

 揚陸艇から開拓村の祝勝会に行く学生達が続々と降りてくる。

 自由時間といっても戦時下であるため、ユニコーン小隊全員のみならず、地上に降りた学生は、全員、制服を着て帯剣していた。

 既に辺りは暗くなり、村の大通りには篝火かがりびが灯され、大通り沿いに出店や屋台が出ていた。

 地上に降りたユニコーン小隊は、アレクとルイーゼ、アルとナタリー、エルザとナディア、トゥルムとドミトリーの二人づつに分かれて、開拓村の祝勝会を楽しんでいた。

 田舎の素朴な開拓民たちによる、細やかなお祝いに小隊の皆の心が和む。

 トゥルムは、開拓村の男たちと戦闘時の武勇伝を酒の肴に麦酒を飲み、ドミトリーは屋台の骨付き肉を頬張っていた。

 エルザとナディアは、ナンパした貴族組の男子学生たちに、屋台や夜店の物を色々と奢って貰っていた。

 



 アレクとルイーゼは、祝勝会の喧騒から少しは慣れたところにある、通りに面した東屋にいた。

 アレクは、東屋の椅子に腰掛け、祝勝会の喧騒を眺める。

 ルイーゼがアレクに話し掛ける。

「久し振りにのんびりできそうね」

「そうだな」

 東屋で二人きりになったので、ルイーゼがアレクに甘える。

 ルイーゼは、椅子に座るアレクの肩に手を置くと、アレクの膝の上に座り、首に両手を回す。

 ルイーゼの瞳が上目遣いにアレクを見つめる。

「アレク……私のこと好き?」

「好きだよ」

「愛してる?」

「愛してる」

「面と向かって言ってくれたの、初めてじゃない?」

「そうかな」

「そうよ」

「一つ、聞いても良い?」

「良いよ」

「毎日、裸で一緒に寝ているのに、私には何もしないのね。他のメイドたちには、色々とえっちな事をしていたのに」

 ルイーゼからの問いにアレクが答える。

「君を傷つけたくない。大切に想っているから」

 ルイーゼは恥じらいながら口元に手を当て微笑む。

「オチ●●ン、あんなに勃っているのに?」

 アレクは以前、下着越しにルイーゼに指先でなぞられ、射精しそうになったことがあった。

 アレクは、苦笑いしながらルイーゼに尋ねる。

「コレが欲しくなったの?」

 アレクの言葉にルイーゼは頬を赤らめて恥じらう。

「もぅ……」

 ルイーゼは、改めてアレクのエメラルドの瞳を見詰める。

「……私もアレクが好き。初めて出会った時から。貴方の澄んだ瞳を見た時から、ずっと」

 ルイーゼの言葉にアレクは照れる。

 ルイーゼが続ける。

「私、士官学校での暮らしや、この戦争がずっと続けば良いって思ってる。アレクと一緒にいられるから。皇宮に戻ったら、貴方は皇子で、私はメイド。だから……」

 そこまで言うと、ルイーゼはアレクの胸にすがりつく。

「ルイーゼ」

 アレクは、ルイーゼを優しく抱き締め、頭を撫でる。




 二人は、東屋から少し離れた祝勝会の喧騒を眺める。

 戦時下での、束の間の平和を楽しむ人々の姿。人々の営みが二人の目に映っていた。

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