アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち

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第三章 辺境派遣軍

第四十話 男爵領 中央部東側 開拓村 防衛戦(五)

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 ルイーゼの声を聞いたジカイラが叫ぶ。

投石器カタパルトだ! 回避! 避けろ!」

 次の瞬間、鼠人スケーブン投石器カタパルトから巨大な石が放たれる。

 放たれた巨大な石は、第四中隊のバジリスク小隊の隊列に飛んでくる。

「うわぁああ!」

 ジカイラの回避指示が早かったため、バジリスク小隊のメンバーに直撃こそしなかったものの、第四中隊は隊列を大きく崩してしまう。

 巨大な石は、キャスパー男爵の目の前に落下する。

「ヒィイイイイ!」

 キャスパーは腰を抜かしてヘタリ込み、恐怖のあまり失禁して、白目を剥いて失神した。

 ジカイラは形勢の不利を悟り、撤退の指示を出す。

「撤退だ! 村の中に退くぞ! ヒナ、撤退の合図を!」

「了解!」

 ジカイラからの指示を受けたヒナが撤退の合図である赤の発煙筒に点火すると、開拓村の東門が開かれる。

 再びジカイラが叫ぶ。

「退くぞ! 撤退だ!」

 第四中隊は、防御態勢を取りながら東門の中へと後退していく。

 失神したキャスパーは、バジリスク小隊の他の隊員によって両脇を抱えられ、引きずられていく。

 鼠人スケーブンたちの投石器カタパルトから散発的に石が飛んでくるものの、第四中隊に直撃することは無かったが、開拓村の木壁には大きなダメージを与えていた。




 第四中隊全員が開拓村の中に入り、再び東門が閉じられる。

 ジカイラは、アレクたち第四中隊を労う。

「お前達、良くやった。これで、充分、時間は稼げただろう。次の指示があるまで、揚陸艇の中で休め」

 アレクたち第四中隊は、揚陸艇に乗り込み、格納庫の座席に座る。

 アルは、座席に腰を下ろすと口を開く。

「何とかなったな。しかし、腹減ったなぁ……」

 未明の早朝から始まった戦闘は、既に昼を過ぎるまで続いていた。

 アルの言葉を聞いたナタリーは微笑み、小道具入れから袋に入ったクッキーを取り出すと、一つアルに手渡す。

「アル。お腹、空いてるでしょ? これしか無いけど……」 

 アルは、ナタリーから受け取ったクッキーを食べる。

「ありがとう」

 アルとナタリーの微笑ましい光景に、ユニコーン小隊の皆が笑顔を見せる。

 そのアレクたちユニコーン小隊の前を、失神したキャスパーがバジリスク小隊のメンバーに両脇を抱えられて引きずられていく。

 アルは、両脇を抱えられて引きずられていくキャスパーを横目で見ながら、アレクに呟く。

「あのオカッパ頭、普段は偉そうにしているのに、投石器にビビって失神したみたいだな」

 アレクも呟く。

「おまけに失禁までして……何が『帝国貴族』だ。情けない」

 エルザが口を開く。

「大の男がお漏らししちゃうなんて、よっぽど怖かったようね」

 ナディアも口を開く。

「彼、しばらくの間は『お漏らしキャスパー』って呼ばれるでしょうね」

 エルザとナディアの話を聞いたルイーゼとナタリーが口元に手を当ててクスクス笑う。

 トゥルムも口を開く

「なんて不名誉な『』だ」

 ドミトリーも口を開く。

「トゥルム。それは『』というより、『』だろうて』

 ドミトリーの言葉を聞いたユニコーン小隊の皆が笑い出す。




 ジカイラは、第三中隊の隊員に尋ねる。

「第三中隊! 住民の避難状況はどうだ?」

「開拓村の住民全員の揚陸艇への避難は完了しました」

「よし! 第一中隊と第三中隊は揚陸艇に乗り込め。準備が出来次第、離陸しろ。段階的に退くぞ!」

「了解しました」




 開拓村の住民と、第一、第二、第四中隊を乗せた揚陸艇が離陸する。

 離陸した揚陸艇は、地上三十メートルほどの上空で滞空する。 
 
 鼠人スケーブンたちの投石器カタパルトによる投石攻撃で、少しずつではあったが、開拓村の木壁は破壊されていた。

 ジカイラは、ヒナと共に木壁の櫓に登って状況を確認する。

鼠人スケーブンたちが木壁に取り付くまで、少し時間がありそうだな……)

 ジカイラが指示を出す。

「第二中隊、揚陸艇に乗り込め。撤退しろ。ヒナ、締め括りの魔法を頼む!」

「了解しました」

 第二中隊は木壁と櫓から離れて、揚陸艇に乗り込んでいく。

 ヒナは、笑顔でジカイラに答える。

「任せて!」

 ヒナは、両手を上げ天を仰いで魔法の詠唱を始める。

Manna,マナ、 människansマニスハンス alla・アラ saker・サケ
(万物の素なるマナよ)

Lokiロキ・ ochウー・ Anglebosasアングルボサ・ förstföddaフゥシュトフッダ
(ロキとアングルボサの長子)

 ヒナの足元に一つ、頭上に魔法陣が等間隔で六つ現れる。

Alltアルト det・デ・ ondaオンダ ・プ jakt・ヤクト efter・エフタ solen・スウォーレン och・ウー・ månenモーナン
(太陽と月を追い求める万物の災厄)

 大気中から無数の光線が鼠人スケーブンの軍勢の上空へ向けて伸びていき、雲を作る。

Jagヤー・ villヴィレ・ varaヴァラ・ medメデ・ digディー・ frånフォアン・ evigaエァヴィガ・ fängelserフィーゲルセー
(両極の牢獄より常世に現さんと欲す)

Varヴァー・ nuヌー・ Fenrirsフェンリル・ tänderテンダ・ här!!ハー!
(今、此処にフェンリルの牙となりて現出せよ!)

Penetreraペネティアラ min・ミン・ fiende!!フィエンデ!
(我が敵を貫け!)

氷結水晶槍クリスタル・ランス貫通雨撃ピアッシング・レイン!」

 ヒナが魔法の詠唱を終えると、魔法陣は光の粉となって大気中に砕け散った。

 上空の雲から、無数の氷の槍が鼠人スケーブンの軍勢に降り注ぐ。

 氷の槍は、投石器カタパルトと共に鼠人スケーブンたちの体を貫き、地面に刺さる。

 ヒナの魔法の効果を確認したジカイラが傍らのヒナに告げる。

「上出来だ。オレたちも揚陸艇に退くぞ。オレとお前が殿で最後だ」

 第三中隊とジカイラ、ヒナが乗り込んだ最後の揚陸艇が離陸する。

 


 こうして、開拓村の住民と教導大隊が分乗した揚陸艇は、州都キャスパーシティを目指して撤退した。

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