43 / 63
第三章 辺境派遣軍
第四十一話 業火と鋼鉄の鉄槌(一)
しおりを挟む
飛行空母で北西部の開拓村の防衛の指揮を取るジークの元に伝令がやって来る。
ジークたちは、中央部東側 開拓村に敵軍が押し寄せジカイラ中佐率いる教導大隊が住民を連れて撤退した旨、報告を受ける。
傍らのヒマジンがジークに尋ねる。
「殿下。よろしいので?」
ジークは答える。
「私は、後をジカイラ中佐に頼んだ。『開拓村の放棄と撤退』は、その中佐が判断したことだ。住民に犠牲はなく、教導大隊の被害も軽微だ。見事というほかないだろう。中佐を責めるつもりはない」
「なるほど」
ジークが続ける。
「鼠人の大軍を相手に寡兵で戦うのだ。『拠点死守』など前世紀の戦術。こちらは機動力を生かし、臨機応変に行く必要があるだろう」
ジークは傍らの将校に尋ねる。
「それで。こちら側の敵軍の動きは?」
将校が答える。
「敵軍は未明に原生林の中に陣取ったままです。動きはありません」
ジークがヒマジンに指示を出す。
「ヒマジン伯爵。飛行戦艦は、原生林の敵軍に向けて単縦陣をとれ。陸戦隊と蒸気戦車も地上で同様の布陣を」
「了解しました」
ジークが傍らのソフィアに告げる。
「ソフィア、お前も出ろ。航空部隊の指揮を取れ。飛空艇を爆装させて、敵軍を背後から爆撃するのだ。飛龍の火炎と飛空艇の爆撃で、原生林から鼠どもを炙り出せ! 森ごと焼き払っても構わん!」
ソフィアは、ジークに深々と一礼する。
「御意」
ジークは周囲に告げる。
「敵軍を原生林から爆撃と火炎で炙り出し、飛行戦艦と蒸気戦車の火砲で敵軍を殲滅する。鼠人共に『業火と鋼鉄の鉄槌』を下すのだ!」
ジークの言葉に周囲はどよめく。
「おぉ!」
「業火と鋼鉄の鉄槌!」
ジークが続ける。
「私とアストリッドも地上へ降りる」
ジークからの指示に従って周囲が作戦行動の準備に移るべく動き始める中、ジークはヒマジンを呼び止める。
「……ヒマジン伯爵」
ジークから声を掛けられたヒマジンがジークの方を振り向く。
「はっ」
「……これへ」
ジークは、ヒマジンに近くに来るように手招きして促す。
「はい」
ヒマジンはジークの言葉に従って、ジークの傍に来る。
ジークは、傍らのヒマジンに地図を指し示しながら話し掛ける。
「……伯爵。貴殿はこの戦をどう見る?」
「と、言いますと?」
ジークは、真剣な表情でヒマジンに語り掛ける。
「……おかしいと思わないか? 鼠人《スケーブン》たちは、なぜ、生息地の西側、我がヴァレンシュテット帝国側に攻め込んでくる? 世界最強の軍事大国である我が帝国の辺境に攻め込んだところで、何万人もの多大な犠牲を払って奴らが得られたのは、何も無い原野といくつかの開拓村だ。地下資源や食糧がある訳ではない。奴らも割に合わないだろう。…………生息地の東側、前時代の軍備しか持たないトラキア連邦側へ攻め込んだほうが、生息地の拡大も食料の確保も楽だろう」
ジークの言葉にヒマジンは納得して頷く。
「……確かに」
ジークが続ける。
「鼠人《スケーブン》たちの装備は、鉈に木槍、それに投石器。大砲さえ持っていない。中世以前の古代人の文明水準程度だ。鼠合成獣や鼠食人鬼を錬成できるような魔法技術があるとは思えん。しかし、現に存在している。……我が帝国でも『生命創造』や『不老不死』といった類の倫理に反する魔法技術は『禁忌』とされ、帝国魔法科学省に封印されて密かに研究されているだけだ。知っている者も限られている」
ヒマジンが驚く。
「……まさか! 帝国の魔法技術の機密が漏洩していると!?」
ジークが続ける。
「いや、そうではない。……だが、何者かが、鼠人《スケーブン》たちに合成獣を錬成する魔法技術を与え、我が帝国に攻め込むように仕向けている。……『裏で采配を振るう何者かがいる』と私は見ている。……確証がある訳ではないがな」
ヒマジンが感心する。
「……なるほど。慧眼です」
ジークは、ヒマジンとの話を切り上げ、傍らのアストリッドに話し掛ける。
「頭の片隅に置いておいてくれ。……アストリッド、私達も地上に降りるぞ」
「はい」
ヒマジンは、前線へ向かうジークとアストリッドの背中を見送る。
(あの若さで、そこまで読んだか。流石、陛下の跡取り息子、見事な戦略眼だ。我が娘アストリッドの夫に相応しい)
半時ほどで飛空艇の爆装は完了し、ソフィアの乗る飛竜を先頭に飛行空母から続々と爆装した飛空艇が発艦していく。
帝国軍の航空部隊は編隊を組むと、敵軍が潜む原生林へ向けて飛び立っていった。
開拓村上空に滞空する飛行戦艦は、原生林に向けて単縦陣に陣形を組み替える。
地上に布陣する陸戦隊と蒸気戦車も原生林に向けて横一列横隊を敷く。
上空からも、地上からも、鼠人たちが原生林から出てきたら、一斉射撃を加えられる体勢を整えていた。
地上に降り陸戦隊の元にいるジークとアストリッドの元に伝令がやってくる。
「殿下。航空部隊から『緑の信号弾』が打ち上げられました。準備完了です」
ジークが伝令に指示する。
「よし! 作戦開始だ! 緑の信号弾を打ち上げろ!」
「了解!」
程なく地上の陸戦隊から緑の信号弾が打ち上げられる。
『業火と鋼鉄の鉄槌』作戦開始の合図であった。
ジークたちは、中央部東側 開拓村に敵軍が押し寄せジカイラ中佐率いる教導大隊が住民を連れて撤退した旨、報告を受ける。
傍らのヒマジンがジークに尋ねる。
「殿下。よろしいので?」
ジークは答える。
「私は、後をジカイラ中佐に頼んだ。『開拓村の放棄と撤退』は、その中佐が判断したことだ。住民に犠牲はなく、教導大隊の被害も軽微だ。見事というほかないだろう。中佐を責めるつもりはない」
「なるほど」
ジークが続ける。
「鼠人の大軍を相手に寡兵で戦うのだ。『拠点死守』など前世紀の戦術。こちらは機動力を生かし、臨機応変に行く必要があるだろう」
ジークは傍らの将校に尋ねる。
「それで。こちら側の敵軍の動きは?」
将校が答える。
「敵軍は未明に原生林の中に陣取ったままです。動きはありません」
ジークがヒマジンに指示を出す。
「ヒマジン伯爵。飛行戦艦は、原生林の敵軍に向けて単縦陣をとれ。陸戦隊と蒸気戦車も地上で同様の布陣を」
「了解しました」
ジークが傍らのソフィアに告げる。
「ソフィア、お前も出ろ。航空部隊の指揮を取れ。飛空艇を爆装させて、敵軍を背後から爆撃するのだ。飛龍の火炎と飛空艇の爆撃で、原生林から鼠どもを炙り出せ! 森ごと焼き払っても構わん!」
ソフィアは、ジークに深々と一礼する。
「御意」
ジークは周囲に告げる。
「敵軍を原生林から爆撃と火炎で炙り出し、飛行戦艦と蒸気戦車の火砲で敵軍を殲滅する。鼠人共に『業火と鋼鉄の鉄槌』を下すのだ!」
ジークの言葉に周囲はどよめく。
「おぉ!」
「業火と鋼鉄の鉄槌!」
ジークが続ける。
「私とアストリッドも地上へ降りる」
ジークからの指示に従って周囲が作戦行動の準備に移るべく動き始める中、ジークはヒマジンを呼び止める。
「……ヒマジン伯爵」
ジークから声を掛けられたヒマジンがジークの方を振り向く。
「はっ」
「……これへ」
ジークは、ヒマジンに近くに来るように手招きして促す。
「はい」
ヒマジンはジークの言葉に従って、ジークの傍に来る。
ジークは、傍らのヒマジンに地図を指し示しながら話し掛ける。
「……伯爵。貴殿はこの戦をどう見る?」
「と、言いますと?」
ジークは、真剣な表情でヒマジンに語り掛ける。
「……おかしいと思わないか? 鼠人《スケーブン》たちは、なぜ、生息地の西側、我がヴァレンシュテット帝国側に攻め込んでくる? 世界最強の軍事大国である我が帝国の辺境に攻め込んだところで、何万人もの多大な犠牲を払って奴らが得られたのは、何も無い原野といくつかの開拓村だ。地下資源や食糧がある訳ではない。奴らも割に合わないだろう。…………生息地の東側、前時代の軍備しか持たないトラキア連邦側へ攻め込んだほうが、生息地の拡大も食料の確保も楽だろう」
ジークの言葉にヒマジンは納得して頷く。
「……確かに」
ジークが続ける。
「鼠人《スケーブン》たちの装備は、鉈に木槍、それに投石器。大砲さえ持っていない。中世以前の古代人の文明水準程度だ。鼠合成獣や鼠食人鬼を錬成できるような魔法技術があるとは思えん。しかし、現に存在している。……我が帝国でも『生命創造』や『不老不死』といった類の倫理に反する魔法技術は『禁忌』とされ、帝国魔法科学省に封印されて密かに研究されているだけだ。知っている者も限られている」
ヒマジンが驚く。
「……まさか! 帝国の魔法技術の機密が漏洩していると!?」
ジークが続ける。
「いや、そうではない。……だが、何者かが、鼠人《スケーブン》たちに合成獣を錬成する魔法技術を与え、我が帝国に攻め込むように仕向けている。……『裏で采配を振るう何者かがいる』と私は見ている。……確証がある訳ではないがな」
ヒマジンが感心する。
「……なるほど。慧眼です」
ジークは、ヒマジンとの話を切り上げ、傍らのアストリッドに話し掛ける。
「頭の片隅に置いておいてくれ。……アストリッド、私達も地上に降りるぞ」
「はい」
ヒマジンは、前線へ向かうジークとアストリッドの背中を見送る。
(あの若さで、そこまで読んだか。流石、陛下の跡取り息子、見事な戦略眼だ。我が娘アストリッドの夫に相応しい)
半時ほどで飛空艇の爆装は完了し、ソフィアの乗る飛竜を先頭に飛行空母から続々と爆装した飛空艇が発艦していく。
帝国軍の航空部隊は編隊を組むと、敵軍が潜む原生林へ向けて飛び立っていった。
開拓村上空に滞空する飛行戦艦は、原生林に向けて単縦陣に陣形を組み替える。
地上に布陣する陸戦隊と蒸気戦車も原生林に向けて横一列横隊を敷く。
上空からも、地上からも、鼠人たちが原生林から出てきたら、一斉射撃を加えられる体勢を整えていた。
地上に降り陸戦隊の元にいるジークとアストリッドの元に伝令がやってくる。
「殿下。航空部隊から『緑の信号弾』が打ち上げられました。準備完了です」
ジークが伝令に指示する。
「よし! 作戦開始だ! 緑の信号弾を打ち上げろ!」
「了解!」
程なく地上の陸戦隊から緑の信号弾が打ち上げられる。
『業火と鋼鉄の鉄槌』作戦開始の合図であった。
0
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる