アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち

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第三章 辺境派遣軍

第四十二話 業火と鋼鉄の鉄槌(二)

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 地上の陸戦隊から打ち上げられた緑の信号弾を合図に、ソフィアが率いる航空部隊は原生林に向けて一斉に爆撃を開始する。

 爆撃による轟音が原生林に響き、爆炎が原生林に燃え広がる。

 ソフィアも自分が乗る飛竜ワイバーンを低空へ降下させ、火炎ファイヤーブレスで原生林を焼き討ちにする。

 原生林から一斉に野鳥が舞い上がり四方へ逃げていく。

 航空部隊により繰り返し行われる爆撃と飛竜ワイバーン火炎ファイヤーブレスによって、次第に原生林に火災が広がっていく。

 炎に追われた鼠人スケーブンたちが火災の広がる原生林から開拓村の方へ逃げ出し始める。





 伝令がジークに報告する。

「殿下。敵が原生林から出てきました」

 ジークは攻撃命令を出す。

「よし! 砲撃開始だ!」

「はっ!」

 地上の陸戦隊から黄色の信号弾が打ち上げられると、飛行戦艦と蒸気戦車スチームタンクは原生林から出てきた鼠人スケーブンの軍勢に向けて一斉に砲撃を開始する。

 たちまち飛行戦艦艦隊と蒸気戦車スチームタンクの隊列に面した原生林と原野の境界部に爆発音が轟き無数の爆煙が巻き起こる。

 帝国軍の強力な一斉射撃により、原生林から出てきた鼠人スケーブンの軍勢は次々と吹き飛ばされていく。

 鼠合成獣ラットキメラ鼠食人鬼ラットオーガも例外ではなかった。

 


 

 飛行戦艦と蒸気戦車スチームタンクの一斉射撃をくぐり抜けた十体ほどの鼠合成獣ラットキメラ鼠食人鬼ラットオーガ鼠人スケーブンたちが陸戦隊に向けて突撃してくる。

 ジークが指示を出す。

「来たぞ! 帝国騎士ライヒスリッター前へフォー! 抜刀!」

 ジークは、アストリッドを伴って陸戦隊の前に出ると、サーベルを抜く。

「アストリッド、行くぞ」

「はい。ジーク様」

 先頭を走る鼠食人鬼ラットオーガが、右手に持つ棍棒を振り上げてジークに殴り掛かる。

 ジークは、サーベルを八相に構えると鼠食人鬼ラットオーガに駆け寄り、一気に間合いを詰める。

 アストリッドもジークと呼吸を合わせて駆け寄り、一気に間合いを詰める。

 ジークは、鼠食人鬼ラットオーガが振り上げた右腕の下をくぐり、走り抜けざまにその肘から先の腕をサーベルで斬り飛ばす。

 そして、素早く身を翻すと、鼠食人鬼ラットオーガの右膝の後ろ側をサーベルで斬り付ける。

 アストリッドは、鼠食人鬼ラットオーガの左脇を走り抜けると、ジークとタイミングを合わせて、鼠食人鬼ラットオーガの左膝の後ろ側を長剣で斬り付ける。

 同時に両膝の裏側の腱を切られた鼠食人鬼ラットオーガは、悲鳴を上げ、轟音を上げて仰向けに倒れた。

 二人の戦いぶりを見ていた陸戦隊の者達が気勢を上げる。

「おおっ!」

「殿下に続けぇ!」

 飛行戦艦と蒸気戦車スチームタンクの砲火をくぐり抜けた鼠合成獣ラットキメラ鼠食人鬼ラットオーガ鼠人スケーブンたちは、蒸気戦車スチームタンクにたどり着く前に陸戦隊によって次々に斬り伏せられていった。



 昼過ぎから始まった戦闘は、帝国軍の空陸一体となった集中砲火により、夕刻までに鼠人スケーブンたちの軍勢の壊滅により終息を迎えた。

 夕焼けの空に向けて、陸戦隊の者達が勝どきを挙げる。

 陸戦隊の将兵達の輪の中、寄せられる喝采と歓呼にジークは右手をかざして応えていた。

 アストリッドは、将兵達の喝采と歓呼に応えるジークを傍らでうっとりと見上げる。

 ヒマジンは、愛娘とその想い人の様子を少し離れた蒸気戦車スチームタンクのハッチから眺めていた。

 ジークは、日没前に開拓村に連絡要員を残して航空部隊と陸戦隊を飛行空母に収容すると、辺境派遣軍を州都キャスパーシティに向け進めた。




--少し時間を戻した 揚陸艇で州都キャスパーシティに向かう教導大隊。

 揚陸艇の廊下をルドルフが歩いていると、同じグリフォン小隊の、黒髪をツインテールにした魔導師の女の子アンナがルドルフに近寄り、赤いリボンのついた包みをルドルフに差し出す。

「小隊長、……これ、召し上がって下さい」

 アンナは、照れて赤くなりながらルドルフにそう告げて包みを手渡すと、走り去っていった。

 『尖った不良少年』のルドルフは、ジークのような『絶世の美形』でも、アレクのような『女の子のような綺麗な顔立ち』でも無かったが、イケメンであり、ルドルフに想いを寄せる女の子達が少なからずいた。

 ルドルフがリボンを解いて包みを開けると、中にはクッキーが入っていた。

 ルドルフは、包みの中のクッキーを食べる。

 クッキーは直ぐに食べ終えてしまったが、アンナが気持ちを込めたものを無下に捨てる事もできず、ルドルフは残ったリボンと包み紙をポケットに仕舞う。

 そのルドルフの前に廊下を歩いて来る者がいた。

 キャスパー・ヨーイチ三世男爵であった。

 ルドルフはキャスパーが来ると判ると、両手をポケットに入れてキャスパーを見下ろすように、廊下の真ん中に立ち塞がる。

 キャスパーの目にルドルフの姿が映ると、たちまちキャスパーはルドルフに詰め寄る。

「どけぃ! 賤民せんみんの分際で! 廊下の真ん中に立って、帝国貴族たる、この私を見下ろすとは! 身の程を知れ!」 

 ルドルフは軽蔑の眼差しでキャスパーを見下ろしながら呟く。

「うるせえよ。『お漏らしキャスパー』」

 キャスパーは、真っ赤になって細い目を釣り上げて金切り声を上げ、ルドルフに掴み掛る。

「キィイイイイ! キィサァマァアアア!」

 ルドルフは、キャスパーの顔面に右ストレートを食らわせると、続けざまにその頭を右足で蹴り飛ばす。

 キャスパーは、ルドルフの蹴りを側頭部に食らって白目を剥いて気絶し、壁にもたれ掛かるようにへたり込む。

 ルドルフはその場にしゃがむと、気絶して壁を背にして床にへたり込むキャスパーの顔を眺める。

(コイツ、本当に馬鹿なんだな……弱っちいのに)

 ルドルフは、ふと閃く。

 ルドルフは、気絶してへたり込むキャスパーの制服のズボンとパンツを脱がせると、顕になった包茎の男性器の先に余っている包皮を、ポケットから取り出した赤いリボンで蝶結びに結んだ。

(……我ながら傑作だ!)

 ルドルフはクスクス笑いながら、キャスパーのズボンとパンツを戦利品に持ち帰り、その場から去っていった。


 
 
 小一時間後。

 混濁する意識の中、キャスパーの耳に大勢の女の子の声が聞こえてくる。

「ちょっと! なに! あれ!?」

「やだぁ~!」

「あんな小さいのを見せびらかすなんて!」

「アレ、小指くらいじゃない?」

「見て! 見て! カワイイ!」

「リボンなんか結んで、何かのおまじない?」

「この人、お漏らしした人でしょ?」

「『お漏らししない』おまじないじゃない?」

「ちょっと! 貴女アナタ、アレ、突っついて見なさいよ!」

「嫌ぁ~!」

 キャスパーが目を開けると、キャスパーの周りには人だかりが出来ていた。

 そのほとんどは教導大隊の女の子たちで、下半身丸出しで男性器の包皮に蝶結びに赤いリボンを結んだキャスパーを見てクスクス笑っていた。

「なっ!?」

 キャスパーは驚いて立ち上がると、必死に周囲を見回して自分のパンツを探す。 

「無い! 私のパンツが無い! お前達、私のパンツを知らないか!?」

 男性器の包皮に蝶結びに赤いリボンを結んだ下半身丸出しで必死に自分のパンツを探すキャスパーを見て、更に女の子達が笑い出す。

「くそっ! お前ら! 笑うなぁ!」

 キャスパーは、自分の股間を両手で隠して、その場から走り去っていった。

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