【短編集】気ままにショートストーリー

黒子猫

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「あるパクチーの物語」

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私は、パクチー。
このレストランの野菜。
私には、悩みがある。
それは、私達はいつもお客さんに嫌われること。
『うわっ、パクチーだっ!私嫌い!!』
『パクチーって亀虫の臭いするよなー』
そんな風に言われて、皿の隅に追いやられ、食べられずに終わる……そんな所を沢山見てきたの……。
同じ臭いが強い野菜でも、にんにくさんや韮(にら)さんは、人気があるのに……。
以前言ったことがある。
「にんにくさん達は、人気あっていいわね」って。
にんにくさんは言ったわ。
「私を嫌いな人間は嫌いでいいのよ。
私には私のファンがいるんだから!」
にんにくさんも韮(にら)さんも堂々としていた。
私にはそれが羨ましかった。
私にもファンがいれば……。
私を好いてくれる人を見ることが出来れば……!
私はそう思うのだけど、なかなかそんな声を聴くことは出来なかった。
厨房には様々な野菜達がいた。
にんにくさんや韮(にら)さんも羨ましかったけど、もっと憧れの存在がいた。

誰にでもオールマイティーに好かれじゃがいもさん。
どんな料理にも合うし、煮ても焼いても炒めても喜ばれる。
強く主張する個性じゃないから、どんな野菜とだって馴染む。

……いいなぁ……。
私もそうなりたい。
こんな個性なんて捨てて、みんなと上手くいって、喜ばれる存在になりたいの……。

そんなことを考えていたら、なんだか悲しくなってきた。
だって、生まれ持った個性は変えられないものね……。

ある日、じゃがいもさんと話す機会があった。
じゃがいもさんは言っていた。
「私って、平凡よね……」
私は驚き、すぐに言った
「でも、あなたは誰とでも上手くやれるし……」
「でも個性がないのよ。あなたやにんにくさんみたいに……」
「そんな……」
私は、それぞれに悩みがあるのだと知った。
私が良いと憧れる個性が、本人には良く思えないこともあるのだと……。
にんにくさんにこの事を話した。
「自分の個性を認められたら、もっと楽になれるのにね。私はメインになることはほとんどないけど、最高の脇役だと思ってるの!」
……確かに……。
じゃがいもさんは、メインになることは良くあるけれど、名脇役になることはそんなにない。
でも、それは悪いことじゃなく、ただの個性の違いなんだ……。

最近、オーナーと話す機会があった。
「私は、お客様に臭いとか嫌われてるのに、なぜ食材としていれるのですか?」
オーナーは笑う。
「確かに……。君を嫌いと言う人もいるかもしれない。でも、オレは君(パクチー)が好きだし、君のことを好きだっていうお客さんもいるんだよ。君が気付いてないだけで。
ほら……。今来ているお客さんもそうだよ。うちの常連さんだ」
私は厨房の小窓からホールの様子を覗いた。
そこには、パクチーを美味しそうに食べている人がいた。
「君は確かに臭いがキツイ。亀虫みたいだって言う人もいるよね。でもオレはパクチーにテンション上がるし、亀虫の臭いなんて思ったこともないし、むしろ好きな匂い!……自信持っていいんだよ……」

……私は、すぐに自信が持てるかは分からないけど、……嬉しかった。
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