灰色ノ魔女

マメ電9

文字の大きさ
10 / 56
第一章 白黒から虹色に

第十話 弟子

しおりを挟む
夢を見た。

あのドラゴンの記憶の夢を。

魔力が流れ込んだあの時に・・・。

ドラゴンの今まで生きてきた映像が断片的に、時間も飛び飛びだったけど。

その中に一つ気になることがあった。

まだ子供の頃の記憶。
誰かの肩に乗って、その人の頬に擦り寄る。
するとその人はこちらを向き、微笑みながら頭を撫でるのだ。

その人はフワフワの長髪に、私と同じ灰色の髪をしていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そんな事を思い出していると、ルークが私の名前を呼んだ。

「シロナ?シーローナー?」
「え?」
「え?じゃない。さっきから呼んでるのに・・・大丈夫か?」

どうやら何回も呼ばれていたみたいだが、全く気づかなかった。
さっき気を失ったところだから心配されて当然だ。

ちょっと反省。

「大丈夫だ、ごめん。ちょっと考え事してた」

「それならいいが、あまり無茶はしてくれるなよ・・・。それじゃあ少し時間もあるようだし、俺はこれから街に薬の材料の買い出しに行ってくるから、お前はここで待ってろ。いいな?」

分かったと返事をしようとしたら、私のお腹が代わりにグ~と返事をした。

朝から何も食べてないし、もう時計の針は1時を過ぎている。
当然お腹が減るに決まっている。
それでもやっぱり恥ずかしいので、急いでお腹を抑える。

でも、その音はしっかりルークの耳に入っていた。

「はいはい。ご飯だろ?先に買ってきてやるから、大人しく待ってろ」

「あーもー!うるさーーーい!!!!/////」

クスクスと笑いながらルークは外に出て行った。

「まったく・・・あの男にはデリカシーってのが無いのか!なぁ!おチビ?」
「クゥッ!」

子ドラゴンは元気よく返事をする。
本当に元気になって良かった・・・。
これから、この子が1人で生きていけるまで一緒に過ごす事になる。
あ、そういえば・・・

「おチビ・・・お前名前とかあるのか?」
「クゥ?」
「はは。そりゃ無いよな」

一応聞いてみたけど、聞いたところでなんて言ってるのか分からないし、ここは私が名付けるしか無いみたいだ。

「ん~じゃぁ私が付けるか・・・。私がシロナだから、クロとかどうだ?」

我ながら安直すぎる名付け。

クロという名を聞いた子ドラゴンは猛拒否行動!
首を横に振って表現した。

「で、ですよね~」

仕方ない、ちゃんと考えよう・・・
ドラゴンの子供、ホワイトドラゴン、白竜、ハク・・・

そこで私はピンときた。

「コハク・・・なんてどうだろ?」
「クゥ!クゥ!」

コハクという名に喜んでいるのか、子ドラゴンは宙をクルクルと回り飛ぶ。
どうやら気に入ったみたいだ。

「ならこれからお前の名は、《コハク》だ!よろしく」

こちらこそ!と言わんばかりに、コハクはシロナの頬をペロペロと舐める。

「コハク~っくすぐったいぞー!」
「クゥ~」

2人がじゃれあっていると、突然、店の扉が勢いよく開いた。

もうルーク帰ってきたのか??
随分早い帰りだな・・・

しかし、入ってきたのはルークではなかった。

シロナの腰の高さくらいの身長の子供が入ってきたのだ。
いや、ただの子供ではない。

頭にはルークの様な獣耳があって、タヌキのような尻尾も生えている。
そして、顔には左右に各2本ヒゲが生えていた。

どう見ても魔物だった。

「店長~!ごめんなさい遅くなっちゃいました!店番どうで・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

目が合い、沈黙が広がる。

あぁ・・・嫌な予感。
といいますか、これ、前にも同じような展開が・・・・。

「お、おおおおおおおお、おおおおお前!!!!何で人間がここに居るんだ!!!」

速攻人間とバレた。
まぁ仕方ない。ルークから貰ったローブはさっき店に入った時に脱いでしまっていたのです。
仕方ない。
仕方ない。

・・・さて、この状況どうしようか・・・。
相手は完全に私を警戒モード。
ルークも不在。エレティナは工房に籠っている。
私を弁解してくれる人がいない状況。

極めてマズイ・・・。

すると魔物が先に動いた。
「人間め!僕たちの店を乗っ取るつもりだな!そんな事させてたまるかァー!」
「!!?」

魔物はシロナに向かって走り出し、殴りかかろうとしてきた。
思わずシロナは目を閉じてしまうが、肩に乗っていたコハクが前に飛び出し、魔物の腕を思いっきりガブッと噛みついた。

コハクの歯は鋭い。私も噛まれた時かなり痛かった。
それは魔物だろうと同じこと。
悲鳴が店に響き渡る。

「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」





コハクのおかげで何とか魔物は落ち着いてくれた。
相当痛かったようで涙目になっている。
今なら私の話を聞いてくれそうなので、今までの経緯を説明した。
やはりこの流れ、トトーの時と同じような気がする・・・。

「何だ~!あんちゃんとこの助手だったのか~!それならそうと早く言ってよね。僕早とちりしちゃったじゃないか」
すんなりと信じてくれた。
え?ちょろすぎない?
ちょっと不安なんだけど。

「そ、そんな簡単に信じてくれていいのか??」
魔物はローブに向かって指をさした。
「あの毛皮ローブからあんちゃんの魔力を感じる。アレを持ってるって事で十分信用できるよ」
「そうなんだ・・・」

確かにアレにはルークが少し細工を入れたと言っていた。
何か魔法をかけているのかもしれない。
とにかく、信じてもらえたようで良かった。

ホッと胸をなでおろすと、魔物が手を伸ばしてきた。
「僕の名前はポルク!店長の弟子でここで働いてるんだ。よろしくね」

その魔物はニカーっと笑っている。
私もつられて頬が緩み、その手を握った。
「私はシロナ。この子はホワイトドラゴンのコハクだ。こちらこそよろしく」

挨拶を終えるとポルクは受付の椅子に座った。

ポルクはエレティナの弟子・・・なら魔具とかも作ったりできるのかな。

「まだ子供なのに弟子で働いてるってすごいな」
「まぁ弟子って言っても、ここで店番するのと納品に行くくらいしかさせてもらってないんだけどね」
「へ~納品もしてるのか・・・」

意外にもちゃんと店してたんだな、この店。

するとポルクは何か思いついて受付から身を乗り出した。
「そうだ!シロナ!これから僕納品に行くんだけど、一緒に行かない??」

「は???」

突然すぎるお誘い。

「今回の納品量が多くて僕一人じゃ一気に持ち運べないんだよ!お願いシロナ!」
両手の平を合わせてお願いされる。

え~・・・・

どうしよう・・・・・








数分後・・・・・

店の扉がギィっと開く。
「シロナ~。飯買ってきたぞ~」

ルークが屋台のごはんを持って帰ってきた。
しかし店内には誰もいない。
人の気配すらしない。

「・・・?トイレでも行ったのか・・・?」

机にご飯の入った紙袋を置く。するとその横に置手紙があることに気付き、それを手に取る。

「手紙?」

そこには、こう記されていた。

「(ルークへ   エレティナのお弟子さん。ポルクと一緒に出掛けてきます。 シロナより)」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

処理中です...