灰色ノ魔女

マメ電9

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第一章 白黒から虹色に

第二十一話 特訓

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ガシャンガシャンと、鉄が擦れる音。

幻聴で頭を抱えていた私の後ろに来た人物は、昨日武術を教えてくれると言っていたジェイトだった。

「魔法の練習は捗ってるか~?‥‥ってどうしたよシロナ。そんな暗い顔して‥‥なんかあったか?」

「え、あ、いや‥‥何でもない。それより何だ?その大荷物」

鉄の擦れる音の正体。
袋に包まれていたため外見では把握出来なかったが、ジェイトは地面にその袋を置き中身を全てひっくり返した。

中身は様々な種類の武器。
直剣、刀、短剣、レイピア、鎌槍その他諸々‥‥。

「わ~‥‥。武器ってこんなに種類があるのか!でも重たかったんじゃ‥‥?」

「どれがシロナにピッタリの武器か分かんねぇしな。あと、俺は多種多様な職場を経験した男‥‥このぐらい担げて当然なんだよ」

な、なるほど‥‥。

ジェイトがやって来た事に気づいたルークは、練習的の調整が終わるとこちらに近づいてきた。

「いいタイミングだ。丁度魔法の練習も終わる頃だった。あとは任せていいか?」
「おう!いいぜ、次は俺が先生だ!覚悟しろよォ~シロナ!」

ジェイトは無駄に気合い満々だ。
それより、あとは任せたって??

「え?ルークはどっか行くのか?」

「離れで仕事してくるだけだ。何かあったら呼んでくれていい‥‥‥‥何だ?俺がいないと不安か?」

コイツはまたそーゆー意地悪な感じで煽ってくる。
不安?
冗談‥‥。
誰があんたと一緒じゃなきゃ嫌と言った?!

「そんなわけあるか!!バカ!」
「はいはい。ジェイト気をつけろよー。シロナはこう見えて狂犬だからな」
「だっ、誰が狂犬だ!!!」

言いたい放題いいやがって~!

だが、こんなのいつもの事。
ルークは立ち去って行った。

「おーい。痴話喧嘩はその辺にして、特訓するぞ~」

「ち、痴話げ‥‥っ?!」

「ほら、なにボーッと突っ立ってんの。まずは直剣からな!」

そう言って私に剣を無造作に放り投げた。

「ちょっ!」

さやに納まっているものの、剣を投げられたら怖いし、しかもジェイトは軽々しく扱っているが私は一応女なわけで‥‥。

なんて、文句を心の中で言いながら両手で剣をキャッチする。

やっぱり重い‥‥。

「ほら!抜いて抜いて、あの練習棒に斬りかかってみろ」

剣の構え方や振り方を一通りの事を教えて貰い、言われた通りした。

したのだが‥‥上手く扱えない。

剣を振るうというより、剣に振り回されているの方が正しいだろう。
仕方ない。
仕方ないんだ。

だって私の身長は150cm無いのだから。
背の低い私に、この長い直剣は合わなかった。

「うーん、駄目だな。シロナ次行くぞ」

直剣‥‥カッコイイから使いたかったけど‥‥

残念。

それから槍、レイピアと続けて使ってみたが、どれもこれもしっくりこず。

最後に短剣を渡された。

短剣‥‥確かに私のサイズ的にはピッタリ。
軽いし、身軽に動けるし、扱いやすい。
でも短剣は超接近戦になる。

大丈夫だろうか‥‥。

「ん、シロナには短剣だな!」
「うーん。でも私接近戦はちょっと‥‥」
「‥‥怖いか?」

不安気な顔でコクリと頷く。

「まぁ確かに短剣は直剣と違ってリーチが短いからな。‥‥でも俺は向いてると思うぜ」

どこにそんな確信があるのか。

「何でそう思うんだ?」

「シロナって結構華奢な体型だろ?オマケにあの狂ったトカゲからも逃げ続けれてた。要するにすばしっこい。相手の懐に潜り込めるし、避けるのも練習すれば容易になるだろうからって理由だ」

練習‥‥。
正直まだ怖かった。
俯いているとジェイトは言葉を続けた。

「それにだ」
「?」

「さっきの見てたぜ?スゲェ電撃だったじゃんか。接近戦がダメな相手に出会したら、あの魔法を食らわしてやればいい!折角使えるようになったんだ。バンバン使ってこーぜッ!」

ぜ、のタイミングで私の背中をバシッと叩く。

確かに魔法を使えるようになった。
ならいける‥‥のか?

そこで、あの声が頭をよぎる。



《魔法を使うな》


あれは‥‥どういう意味なんだ‥‥。


姿も分からない存在にかけられた言葉に困惑を隠せないでいた。


それから夕方まで短剣での特訓が始まった。

スナップのかけ方。
脚運び。
避ける練習も。

ジェイトいわく、私は飲み込みが早いらしい。
教えられた事は大体覚えた。

最後に魔法がもっと上手くなったら、短剣の刃の部分に魔法属性を纏わせることができるらしい。
だから、私の場合は電撃を剣に纏わせてリーチを伸ばしたりが出来るってこと‥‥。

まぁそれは、まだ私には難しかったので、ジェイトは私専用の短剣を作ってまた来ると言い帰って行った。

今日は沢山動いた。
おかげで全身が筋肉痛でやばい。
特に腕と太ももが‥‥っ!

段差とか登るだけで痛みが走った。

私はコハクの元へ向かって家に連れて帰ったが家にまだルークの姿は無い。

まだ離れにいるのかな。

コハクを肩に乗せて仕事場を覗きに行った。

太陽は沈みかけていて、空は綺麗な茜色に変わっていく時間。
そろそろお腹も減ってきた。

「ルーク?こっちは終わったぞ」

中に入ると数十種類の薬草と薬品が机に散乱しており、ルークは出来上がった薬を瓶詰めする作業をしていた。

かなり集中しているのだろう‥‥。
部屋が暗くなっているのにも関わらず、蝋燭も灯さずにいた。

「シロナか、お疲れ。俺ももう少ししたら終わるから先に部屋で待っててくれ」

「分かった。でもせめて灯くらいつけて仕事しなよ」

「あぁ、悪い‥‥気づかなかった」

私は部屋の壁に設置してあるランタンに魔法で火をつけた。

でも‥‥。
それがいけなかった。


突然激しい頭痛が襲ってきた。

キーン
と耳鳴りもなる。

な、何だ‥‥これ‥‥っ?!
頭‥‥が‥‥っ!
割れ‥‥る‥‥‥‥っ

「う、ぐっ‥‥」

あまりの激痛で、その場で崩れるように倒れた。

視界が暗くなり、シロナ!と叫んで呼びかけてくるルークの姿と、心配そうに顔を覗き込むコハクの姿を最後に‥‥。


私は‥‥気を失った。



失った‥‥はず‥‥だったのだが‥‥。

気づくと私は何も無い真っ暗な空間に、呆然と立ちつくしていた。

「?」

何が‥‥起きた?
ここは‥‥夢か?

夢にしては意識がかなりハッキリしていた。
不思議な感覚。
でもこの空間。
どう考えても現実的じゃない。

果てしなく、どこまでも、どこまでも闇の世界。

しかし一箇所だけ。
ボワッと淡く光る場所があった。

そこを目印に私は足を動かした。

筋肉痛も無いから、やっぱり夢か‥‥
なんて考えながら。

灯りの元へ近づくと、数本の背の高い燭台が火を灯しており。

何か、人のような影の周りに対照的になるよう配置されていた。

人‥‥

いや、違う。

更に近づくと、それは人ではなかった。

大きな鉄の板がバツ印になっていて、そこにソレは鎖で縛り、繋がれたいた。
首に鉄の首輪、足首にも、手首に拘束されている。

黒髪のボサついた長髪。
頭に鋭い角が二本。
右目は前髪で隠れていて、左目の頬に三本の線が入っている。
オマケにドラゴンのような尻尾まで‥‥。

目を閉じていたソレは、ゆっくりと瞼を開き。
その瞳は金色に光っていて、私の顔を見た。

「‥‥あぁ糞が、こんな所にまで来やがりやがって」

ソレの外見はまさに



だった。
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