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第二章 国渡りへ
第五十話 魔獣白兎
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▷▶︎▷▶︎数分前に遡る·····。
「んー·····薪取ってくるって言ったものの··········。こんな原っぱに薪なんて落ちてないよな·····」
だだっ広い草原。
一目見て木片が落ちているのは確認できない。
しかし、早く戻らないと日が暮れてしまう。
暗くなる前に戻らないと心配をかけてしまうから、急がないと·····!
「《おいシロナ。あっちに小さな林があるぞ》」
突然頭に響く声。
ロギはなんだかんだ言って、こうして声を掛けてきてくれるようになった。
ツンツンして悪ぶってるけど、実は優しいのだ。
「あっ!」
言われた方角を見てみると、確かに林があった。
あそこに行けば枝くらいなら拾ってこれそう!
「ありがとうロギ!」
「《·····いいから、さっさと拾いに行こうぜ》」
「はいはい。素直じゃないなぁ」
「テメェがそれを言うなボケ」
いつもの言い合い。
なんか、コレも最近楽しくなってきている自分がいる事に驚いている。
コハクが先頭を飛んで林に向かう。
中は薄暗く少し気味が悪かったけど、キノコなど食べれそうな食料が豊富だった。
木もしっかりしているし、これなら十分に薪を拾って帰れるだろう。
両腕に枝を抱えて、これ以上は持てないと思った私は、林の中を探索しているコハクを呼んだ。
「コハクー!帰るぞーっ」
クー!と声は聞こえるのだが帰ってくる気配が無い。
不思議に思い、声のした方へ近づいて行くと·····
腐って穴の空いている切株に興味深々で釘付けになっているコハクがいた。
「コハク??何やってるんだ?そこに何かいるのか?」
コハクを抱き上げた私は、それを見て笑みが零れる。
「か、可愛い·····っ!」
そこに居たのは、頭に一角を生やした小さな白い子兎。
コハクより一回りくらい小さい。
目もくりくりしていて、上目遣いでこちらを伺っている。
「何だコイツ!·····すごい可愛い·····っ!!!初めて見た」
コハクを肩に乗せてしゃがみ、右手を伸ばし、
怖がらないようにゆっくり近づけさせる。
ビクッとして怖がりながらも、鼻を私の指に近づけさせ匂いを嗅ぐ兎。
「大丈夫·····。私は怖くないぞ?何もしないから·····」
と囁くと、思いが通じたのか指をペロッと舐めてきた!
か!!かっかかか、可愛い~~~~っ!!!
「よしよーし。いい子だなあんた。1人なのか?迷子になってるのか?」
「《おいおい。こんな所で油売ってる場合じゃねぇだろ。あの犬っころが待ってんだろ?》」
「も、もう少しだけだ·····!」
「《·····ハァ》」
仕方無い。あぁ、仕方ないんだ!
だってコハク以外の小動物を愛でる事なんで今まで無かったから、この可愛さが堪らない!
だんだん慣れてきたのか、頭も撫でさせて貰えるようになり、スリスリとしてくる。
そういえばこの角·····普通の兎にこんなの生えてたっけ?
よく見ると、爪も鋭いし、牙もある。
え?
兎ってこんな肉食系な感じあったかな·····?
私が世間知らずなだけなのか?
と、心の中で疑問に思いながら撫で続けていると、肩に乗っているコハクは兎が気に入らなかったのか唸り始め、遂には激しく威嚇しだした。
「グルルル·····ガァルルァァアア!!」
「え、コハク?!」
さっきまで大人しかったコハクが、突然怖い声で鳴き始めたので、それに驚いたのか白兎はその容姿から想像し難い金属音の様なかん高い声を発した。
「ギィィィィィィイイイ!!!!!」
「?!!、な、何だ急にっ?!·····耳がっ!」
思わず両手で耳を塞ぐ程の音量だ。
そして、取り乱した次の瞬間。
今度は野太く、ドスの効いた低い金属音が林に響き渡った。
同時に、林の奥からメキメキと木がなぎ倒されていく音が聞こえてくる。
何かが·····来る??!
遂にその姿を目にした時、私は恐怖で固まってしまった。
頭になんでも貫けそうな鋭い角が二本。
サーベルタイガーの様な太い牙。
引き裂くために特化された強靭な爪。
そして·····なんといっても、驚くべき所はその身体の大きさ!
軽く3メートルは超えている高さだ!
そこで漸く私は気付いた。
これは、動物の兎じゃない·····!
魔獣だ!!!!
「ギィァァアアアアアアア!!」
魔獣が私を見下ろしながら咆哮し、ロギが「《馬鹿野郎!!逃げやがれ!!!》」
と叫んでくれたおかげで硬直が解け、私は一心不乱に林の出口に向かって走り出した。
そして今現在·····▷▶︎▷▶︎。
「ああああああ!ルークーーー!!」
「ハァ·····何やってるんだあいつは·····。仕方ない·····。
レヴォル、ちょっとここ頼む」
現状を理解したルークは、すくっと立ち上がりに立て掛けておいた刀を手に取った。
「おっ、未来の旦那様カッコイイ~。でも気をつけてね?あれほどの魔獣はあまり見たことが無いから。
なかなか手強いかもよ~」
「フン·····。ご忠告どうも」
刀を抜き一蹴りで空高く飛び上がるルークの背中を見て、レヴォル一言。
「お手並み拝見といこうか」
と呟いた。
「伏せろっ!」
上空より聞こえた声に反応し、その場に伏せる。
ルークの強烈な一太刀が魔獣に振られたが、その刃は魔獣の分厚い皮膚を切り裂くことは出来なかった。
「く·····っ。堅いか·····」
一旦間合いをとり、再び構え次の攻撃を仕掛けようとする。
だが、相手も攻撃態勢に入り腕を大きく振り上げた。
まずい。
「ルーク!」
「大丈夫だ。お前はもっと後ろに下がれ、邪魔だ」
後ろも振り向かずに吐かれた言葉は、相変わらず癇に障る言い方だ。
心配して声を掛けたのに·····。
邪魔って何だっ?!邪魔って!!
·····まぁでも、確かに私が参戦したところで足でまといになるのは目に見えてる。
ここは素直に従うしかないか·····。
助けになりたい気持ちを抑え、私は邪魔にならないところまで下がって見守ることにした。
「··········ルーク」
魔獣の振りおろされた腕を華麗に避け、そのまま腕に乗り一気に登っていくルーク。
そのまま急所である首を狙うも、魔獣が反対の腕で阻止してきた為にまたもダメージは与えられなかった。
「·····。鬱陶しいな·····仕方ない、ここで魔力は消費したくなかったが·····
ふっ·····いいだろう。
お前を倒して、その肉を今晩のメインディッシュにしてやる。
覚悟しろ魔獣」
ルークは持っていた刀を地面に突き刺し、魔力を練り始める。
魔力が体に纏だし、そしてそれは全て刀に全集中したところで刀を抜き、魔獣に切っ先を向けた。
何かを仕掛けてくる。
そう感じた魔獣は大ジャンプをして上空から襲ってきた。
が、ルークはそこから動かない。
ジッと襲いかかって来る魔獣を睨みつけているだけだ。
このままでは殺られてしまう。
そうシロナは思った。
しかし、ルークは冷静·····。
「わざわざ狙いやすい様に来るとは·····馬鹿な肉だ」
そう言って刀を空に振り翳す。
すると刀から勢いよく水の刃が放たれ、そして空中で避けることの出来ない魔獣はそのまま刃の餌食となった。
刀を鞘に戻したと同時に、魔獣は地面に落下。
さっきまで狂暴だった魔獣は、ピクリとも動かなくなった。
「んー·····薪取ってくるって言ったものの··········。こんな原っぱに薪なんて落ちてないよな·····」
だだっ広い草原。
一目見て木片が落ちているのは確認できない。
しかし、早く戻らないと日が暮れてしまう。
暗くなる前に戻らないと心配をかけてしまうから、急がないと·····!
「《おいシロナ。あっちに小さな林があるぞ》」
突然頭に響く声。
ロギはなんだかんだ言って、こうして声を掛けてきてくれるようになった。
ツンツンして悪ぶってるけど、実は優しいのだ。
「あっ!」
言われた方角を見てみると、確かに林があった。
あそこに行けば枝くらいなら拾ってこれそう!
「ありがとうロギ!」
「《·····いいから、さっさと拾いに行こうぜ》」
「はいはい。素直じゃないなぁ」
「テメェがそれを言うなボケ」
いつもの言い合い。
なんか、コレも最近楽しくなってきている自分がいる事に驚いている。
コハクが先頭を飛んで林に向かう。
中は薄暗く少し気味が悪かったけど、キノコなど食べれそうな食料が豊富だった。
木もしっかりしているし、これなら十分に薪を拾って帰れるだろう。
両腕に枝を抱えて、これ以上は持てないと思った私は、林の中を探索しているコハクを呼んだ。
「コハクー!帰るぞーっ」
クー!と声は聞こえるのだが帰ってくる気配が無い。
不思議に思い、声のした方へ近づいて行くと·····
腐って穴の空いている切株に興味深々で釘付けになっているコハクがいた。
「コハク??何やってるんだ?そこに何かいるのか?」
コハクを抱き上げた私は、それを見て笑みが零れる。
「か、可愛い·····っ!」
そこに居たのは、頭に一角を生やした小さな白い子兎。
コハクより一回りくらい小さい。
目もくりくりしていて、上目遣いでこちらを伺っている。
「何だコイツ!·····すごい可愛い·····っ!!!初めて見た」
コハクを肩に乗せてしゃがみ、右手を伸ばし、
怖がらないようにゆっくり近づけさせる。
ビクッとして怖がりながらも、鼻を私の指に近づけさせ匂いを嗅ぐ兎。
「大丈夫·····。私は怖くないぞ?何もしないから·····」
と囁くと、思いが通じたのか指をペロッと舐めてきた!
か!!かっかかか、可愛い~~~~っ!!!
「よしよーし。いい子だなあんた。1人なのか?迷子になってるのか?」
「《おいおい。こんな所で油売ってる場合じゃねぇだろ。あの犬っころが待ってんだろ?》」
「も、もう少しだけだ·····!」
「《·····ハァ》」
仕方無い。あぁ、仕方ないんだ!
だってコハク以外の小動物を愛でる事なんで今まで無かったから、この可愛さが堪らない!
だんだん慣れてきたのか、頭も撫でさせて貰えるようになり、スリスリとしてくる。
そういえばこの角·····普通の兎にこんなの生えてたっけ?
よく見ると、爪も鋭いし、牙もある。
え?
兎ってこんな肉食系な感じあったかな·····?
私が世間知らずなだけなのか?
と、心の中で疑問に思いながら撫で続けていると、肩に乗っているコハクは兎が気に入らなかったのか唸り始め、遂には激しく威嚇しだした。
「グルルル·····ガァルルァァアア!!」
「え、コハク?!」
さっきまで大人しかったコハクが、突然怖い声で鳴き始めたので、それに驚いたのか白兎はその容姿から想像し難い金属音の様なかん高い声を発した。
「ギィィィィィィイイイ!!!!!」
「?!!、な、何だ急にっ?!·····耳がっ!」
思わず両手で耳を塞ぐ程の音量だ。
そして、取り乱した次の瞬間。
今度は野太く、ドスの効いた低い金属音が林に響き渡った。
同時に、林の奥からメキメキと木がなぎ倒されていく音が聞こえてくる。
何かが·····来る??!
遂にその姿を目にした時、私は恐怖で固まってしまった。
頭になんでも貫けそうな鋭い角が二本。
サーベルタイガーの様な太い牙。
引き裂くために特化された強靭な爪。
そして·····なんといっても、驚くべき所はその身体の大きさ!
軽く3メートルは超えている高さだ!
そこで漸く私は気付いた。
これは、動物の兎じゃない·····!
魔獣だ!!!!
「ギィァァアアアアアアア!!」
魔獣が私を見下ろしながら咆哮し、ロギが「《馬鹿野郎!!逃げやがれ!!!》」
と叫んでくれたおかげで硬直が解け、私は一心不乱に林の出口に向かって走り出した。
そして今現在·····▷▶︎▷▶︎。
「ああああああ!ルークーーー!!」
「ハァ·····何やってるんだあいつは·····。仕方ない·····。
レヴォル、ちょっとここ頼む」
現状を理解したルークは、すくっと立ち上がりに立て掛けておいた刀を手に取った。
「おっ、未来の旦那様カッコイイ~。でも気をつけてね?あれほどの魔獣はあまり見たことが無いから。
なかなか手強いかもよ~」
「フン·····。ご忠告どうも」
刀を抜き一蹴りで空高く飛び上がるルークの背中を見て、レヴォル一言。
「お手並み拝見といこうか」
と呟いた。
「伏せろっ!」
上空より聞こえた声に反応し、その場に伏せる。
ルークの強烈な一太刀が魔獣に振られたが、その刃は魔獣の分厚い皮膚を切り裂くことは出来なかった。
「く·····っ。堅いか·····」
一旦間合いをとり、再び構え次の攻撃を仕掛けようとする。
だが、相手も攻撃態勢に入り腕を大きく振り上げた。
まずい。
「ルーク!」
「大丈夫だ。お前はもっと後ろに下がれ、邪魔だ」
後ろも振り向かずに吐かれた言葉は、相変わらず癇に障る言い方だ。
心配して声を掛けたのに·····。
邪魔って何だっ?!邪魔って!!
·····まぁでも、確かに私が参戦したところで足でまといになるのは目に見えてる。
ここは素直に従うしかないか·····。
助けになりたい気持ちを抑え、私は邪魔にならないところまで下がって見守ることにした。
「··········ルーク」
魔獣の振りおろされた腕を華麗に避け、そのまま腕に乗り一気に登っていくルーク。
そのまま急所である首を狙うも、魔獣が反対の腕で阻止してきた為にまたもダメージは与えられなかった。
「·····。鬱陶しいな·····仕方ない、ここで魔力は消費したくなかったが·····
ふっ·····いいだろう。
お前を倒して、その肉を今晩のメインディッシュにしてやる。
覚悟しろ魔獣」
ルークは持っていた刀を地面に突き刺し、魔力を練り始める。
魔力が体に纏だし、そしてそれは全て刀に全集中したところで刀を抜き、魔獣に切っ先を向けた。
何かを仕掛けてくる。
そう感じた魔獣は大ジャンプをして上空から襲ってきた。
が、ルークはそこから動かない。
ジッと襲いかかって来る魔獣を睨みつけているだけだ。
このままでは殺られてしまう。
そうシロナは思った。
しかし、ルークは冷静·····。
「わざわざ狙いやすい様に来るとは·····馬鹿な肉だ」
そう言って刀を空に振り翳す。
すると刀から勢いよく水の刃が放たれ、そして空中で避けることの出来ない魔獣はそのまま刃の餌食となった。
刀を鞘に戻したと同時に、魔獣は地面に落下。
さっきまで狂暴だった魔獣は、ピクリとも動かなくなった。
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