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自分には友人と呼べる人が少ない。つくづく幹はそう思った。
宍戸館長に陶芸展示会のチケットを二枚預けられ、
「これは必ず来てください。お金払ったからって捨てては駄目ですからね」
にっこりときっぱり言った。
館長の恩人の展示会で、館長が50枚買い取ったらしい。必ず展示会を見に行く人に渡す約束事もしたらしく、幹もくれぐれもと言われた。
しかし幹の知り合いで陶芸に興味ある者はいず、香や高野を誘っても用事あるからと断れた。同じ職場では館長が皆に配っているので無理だったし…
桃果に電話したら、
「ごめーん。行けない」
「ご飯くらいならご馳走するよ」
「行ってもいいけど、行っちゃ駄目って言われてるし」
「誰に?」
「えっ。いやその」
桃果はわざとらしく慌てて、
「その日用事あるから、ごめん。行けないわ」
はぁー
「分かった。またそのうちに」
「ごめんね。誰か大学の人誘ってみれば」
「うん。探してみる」
とは言ったものの、幹は結構な人見知りなので、大学には簡単に誘える人なんていなかった。
「居たら最初から桃果は誘わない」
またため息を付いて、仕事へ戻った。
カウンターには5つ先輩の谷口咲がいた。
「先輩は展示会に行く人見つかりました?」
「なんとか。私5枚渡されたからやっとよ」
苦笑して言った。
「オレは2枚でもまだ見つかりません」
「絵画だったら兎も角陶芸ってなかなか難しいよね。若い人はあんまり興味ないだろうし」
「そうなんですよね」
幹はまたため息。
「あ、休憩どうぞ」
「じゃあ、宜しくね」
谷口の代わりにカウンターに座る。
展示会は今週末土日で終了する。最悪一人で二回行けばばれないだろうか、なんて考えていた。
「記帳するんだっけ?」
桃果の名前と住所を書くか。
どうやったら自分だけで誤魔化せるかと考える。
誰かを誘うなんて諦めていた。
「お願いします」
前に人が立っているのに気づかなかった。
「すいません」
顔を上げると、森川だった。
(一応聞いとくか)
そう思って、誘ってみることにした。
「森川くんって陶芸展示会行く気ある?」
「展示会ですか?」
突然のことで、戸惑った表情だった。
「館長から貰ったんだけど、だれも行ってくれなくて。もし暇なら土曜日とか一緒に…」
「行きます!」
力一杯言われ、今度は幹が戸惑う。
「そんなに陶芸好きだった?」
森川くんはハッとして、それから真っ赤になった。「そう言うわけでは…すみません。でも行きたいです」
「ありがとう。誰か連れてかないと館長に悪いから。助かった」
幹は森川が持ってきた3冊の本の貸出手続きを済ませると、
「詳しくは金曜日までに知らせるから」
「はい。」
「宜しくね」
幹はホッとして笑顔で森川を見送った。
宍戸館長に陶芸展示会のチケットを二枚預けられ、
「これは必ず来てください。お金払ったからって捨てては駄目ですからね」
にっこりときっぱり言った。
館長の恩人の展示会で、館長が50枚買い取ったらしい。必ず展示会を見に行く人に渡す約束事もしたらしく、幹もくれぐれもと言われた。
しかし幹の知り合いで陶芸に興味ある者はいず、香や高野を誘っても用事あるからと断れた。同じ職場では館長が皆に配っているので無理だったし…
桃果に電話したら、
「ごめーん。行けない」
「ご飯くらいならご馳走するよ」
「行ってもいいけど、行っちゃ駄目って言われてるし」
「誰に?」
「えっ。いやその」
桃果はわざとらしく慌てて、
「その日用事あるから、ごめん。行けないわ」
はぁー
「分かった。またそのうちに」
「ごめんね。誰か大学の人誘ってみれば」
「うん。探してみる」
とは言ったものの、幹は結構な人見知りなので、大学には簡単に誘える人なんていなかった。
「居たら最初から桃果は誘わない」
またため息を付いて、仕事へ戻った。
カウンターには5つ先輩の谷口咲がいた。
「先輩は展示会に行く人見つかりました?」
「なんとか。私5枚渡されたからやっとよ」
苦笑して言った。
「オレは2枚でもまだ見つかりません」
「絵画だったら兎も角陶芸ってなかなか難しいよね。若い人はあんまり興味ないだろうし」
「そうなんですよね」
幹はまたため息。
「あ、休憩どうぞ」
「じゃあ、宜しくね」
谷口の代わりにカウンターに座る。
展示会は今週末土日で終了する。最悪一人で二回行けばばれないだろうか、なんて考えていた。
「記帳するんだっけ?」
桃果の名前と住所を書くか。
どうやったら自分だけで誤魔化せるかと考える。
誰かを誘うなんて諦めていた。
「お願いします」
前に人が立っているのに気づかなかった。
「すいません」
顔を上げると、森川だった。
(一応聞いとくか)
そう思って、誘ってみることにした。
「森川くんって陶芸展示会行く気ある?」
「展示会ですか?」
突然のことで、戸惑った表情だった。
「館長から貰ったんだけど、だれも行ってくれなくて。もし暇なら土曜日とか一緒に…」
「行きます!」
力一杯言われ、今度は幹が戸惑う。
「そんなに陶芸好きだった?」
森川くんはハッとして、それから真っ赤になった。「そう言うわけでは…すみません。でも行きたいです」
「ありがとう。誰か連れてかないと館長に悪いから。助かった」
幹は森川が持ってきた3冊の本の貸出手続きを済ませると、
「詳しくは金曜日までに知らせるから」
「はい。」
「宜しくね」
幹はホッとして笑顔で森川を見送った。
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