14 / 35
領主と女中の誕生日2
しおりを挟む
「マリア―、どうー?」
ロアは試着室のカーテンの向こうに向かって声を掛ける。すると中から弾丸のような速さで返答があった。
「開けないでくださいよ!? 絶対ですからね!?」
その返答にロアは思わず吹き出す。
流石に試着中にカーテンを開けるような真似はしない。
それも水着の試着中ならなおさらだ。
「……むぅ」
下着の上から水着を試着したマリアは、しかめ面をしながらも、姿見でじっくりと自身の姿を確認する。
上下が分かれている、いわゆるビキニタイプはやはり駄目だ。
胸が小さいのがより貧弱に見える。
もう少し、寄せて上げて、カップで固定すればいいのかもしれないが、所詮は一時のテクニックで、動いているうちに谷間は消える。
そもそも、今日は水着を購入する予定などなかったし、面倒な試着などもってのほかだったのに、ロアが「演劇の開演まで時間があるし、せっかくだから夏物の洋服を見ていかない? わあ、水着が50%オフだって!」などと言葉巧みにマリアを特設の水着売り場に誘ったのである。
(確かに、「機会があれば行きます」とは言いましたけど。何もそんなに急いで水着を準備しなくてもよくないですか? いつ行くかもわからないのに……)
ちなみにロアは試着を早々に終わらせている。
というのも、バストサイズからして選べる水着がごく限られていたのだ。店員も苦笑する、恐ろしい胸囲である。
一方で『どれでもお好きなものを選んでくださいね』と店員に言われたマリアは半ばヤケになりながら、試着を終えた。
「どうだった? どっちにするの?」
試着室の目の前のソファーに座っていたロアが、にこにこしながらマリアを出迎えた。
「……必然的にこっちで」
マリアがふてくされた顔をして持ち上げたのは、きわめてオーソドックスなワンピースタイプの水着である。
「しっくり来てない顔だね。まだ時間あるし、他のも見ない?」
「……もう試着するのに疲れました」
「んー、そう? せっかくだからマリアのお気に入りの水着を見つけてほしいんだけどなぁ」
「私は別に、機能性さえあればそれで。……ビキニ似合わないですし。特にこだわりもないですし」
元来、マリアは衣装、装飾品、化粧品など、年頃の娘がこだわりそうなものにはあまり執着がない。
マリアがこだわりを持つものといえば、甘いお菓子と日本(ジャポン)の物珍しい武器ぐらいだ。
ロアはマリアの両肩を掴む。
「だからだよぉ。似合う、似合わないじゃなくて、着たいなって思うのを見つけてほしいんだよ。もし私がいないほうが選びやすかったら、席外してるから。ね?」
「じゃあ、そうしてもらえますか?」
マリアの言葉にロアはうぐ、と泣きそうな顔で唇をかむ。
「ちょっと、自分で言っておいて傷つかないでくださいよ!」
「き、傷ついてないもん! 分かった、向こうの休憩スペースで座ってるから、ゆっくり決めてね! お財布も預けておくから!」
ロアはそう言って、マリアに財布を握らせて走り去っていった。
ひとり売り場に残されたマリアは、手に持っていた2着をもとの場所に戻し、再度別の水着を物色していく。
しばらくして、まるで洋服のワンピースのような形の水着がマリアの目に留まる。
大柄の花柄といい、裾のふわりとしたデザインといい、とても華やかで、色合いも爽やかだ。
(あぁ、これならきっと、可愛いと……)
吸い寄せられるように、その水着を手に取ったとき、マリアは我に返った。
基準が。
基準が違う。
自分の好みからではなく、無意識に『彼女が喜んでくれそうなもの』を選びそうになった自身に、マリアは大きくため息をついた。
ロアは試着室のカーテンの向こうに向かって声を掛ける。すると中から弾丸のような速さで返答があった。
「開けないでくださいよ!? 絶対ですからね!?」
その返答にロアは思わず吹き出す。
流石に試着中にカーテンを開けるような真似はしない。
それも水着の試着中ならなおさらだ。
「……むぅ」
下着の上から水着を試着したマリアは、しかめ面をしながらも、姿見でじっくりと自身の姿を確認する。
上下が分かれている、いわゆるビキニタイプはやはり駄目だ。
胸が小さいのがより貧弱に見える。
もう少し、寄せて上げて、カップで固定すればいいのかもしれないが、所詮は一時のテクニックで、動いているうちに谷間は消える。
そもそも、今日は水着を購入する予定などなかったし、面倒な試着などもってのほかだったのに、ロアが「演劇の開演まで時間があるし、せっかくだから夏物の洋服を見ていかない? わあ、水着が50%オフだって!」などと言葉巧みにマリアを特設の水着売り場に誘ったのである。
(確かに、「機会があれば行きます」とは言いましたけど。何もそんなに急いで水着を準備しなくてもよくないですか? いつ行くかもわからないのに……)
ちなみにロアは試着を早々に終わらせている。
というのも、バストサイズからして選べる水着がごく限られていたのだ。店員も苦笑する、恐ろしい胸囲である。
一方で『どれでもお好きなものを選んでくださいね』と店員に言われたマリアは半ばヤケになりながら、試着を終えた。
「どうだった? どっちにするの?」
試着室の目の前のソファーに座っていたロアが、にこにこしながらマリアを出迎えた。
「……必然的にこっちで」
マリアがふてくされた顔をして持ち上げたのは、きわめてオーソドックスなワンピースタイプの水着である。
「しっくり来てない顔だね。まだ時間あるし、他のも見ない?」
「……もう試着するのに疲れました」
「んー、そう? せっかくだからマリアのお気に入りの水着を見つけてほしいんだけどなぁ」
「私は別に、機能性さえあればそれで。……ビキニ似合わないですし。特にこだわりもないですし」
元来、マリアは衣装、装飾品、化粧品など、年頃の娘がこだわりそうなものにはあまり執着がない。
マリアがこだわりを持つものといえば、甘いお菓子と日本(ジャポン)の物珍しい武器ぐらいだ。
ロアはマリアの両肩を掴む。
「だからだよぉ。似合う、似合わないじゃなくて、着たいなって思うのを見つけてほしいんだよ。もし私がいないほうが選びやすかったら、席外してるから。ね?」
「じゃあ、そうしてもらえますか?」
マリアの言葉にロアはうぐ、と泣きそうな顔で唇をかむ。
「ちょっと、自分で言っておいて傷つかないでくださいよ!」
「き、傷ついてないもん! 分かった、向こうの休憩スペースで座ってるから、ゆっくり決めてね! お財布も預けておくから!」
ロアはそう言って、マリアに財布を握らせて走り去っていった。
ひとり売り場に残されたマリアは、手に持っていた2着をもとの場所に戻し、再度別の水着を物色していく。
しばらくして、まるで洋服のワンピースのような形の水着がマリアの目に留まる。
大柄の花柄といい、裾のふわりとしたデザインといい、とても華やかで、色合いも爽やかだ。
(あぁ、これならきっと、可愛いと……)
吸い寄せられるように、その水着を手に取ったとき、マリアは我に返った。
基準が。
基準が違う。
自分の好みからではなく、無意識に『彼女が喜んでくれそうなもの』を選びそうになった自身に、マリアは大きくため息をついた。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。
そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。
夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。
それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになるのでご安心ください。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
ハナノカオリ
桜庭かなめ
恋愛
女子高に進学した坂井遥香は入学式当日、校舎の中で迷っているところをクラスメイトの原田絢に助けられ一目惚れをする。ただ、絢は「王子様」と称されるほどの人気者であり、彼女に恋をする生徒は数知れず。
そんな絢とまずはどうにか接したいと思った遥香は、絢に入学式の日に助けてくれたお礼のクッキーを渡す。絢が人気者であるため、遥香は2人きりの場で絢との交流を深めていく。そして、遥香は絢からの誘いで初めてのデートをすることに。
しかし、デートの直前、遥香の元に絢が「悪魔」であると告発する手紙と見知らぬ女の子の写真が届く。
絢が「悪魔」と称されてしまう理由は何なのか。写真の女の子とは誰か。そして、遥香の想いは成就するのか。
女子高に通う女の子達を中心に繰り広げられる青春ガールズラブストーリーシリーズ! 泣いたり。笑ったり。そして、恋をしたり。彼女達の物語をお楽しみください。
※全話公開しました(2020.12.21)
※Fragranceは本編で、Short Fragranceは短編です。Short Fragranceについては読まなくても本編を読むのに支障を来さないようにしています。
※Fragrance 8-タビノカオリ-は『ルピナス』という作品の主要キャラクターが登場しております。
※お気に入り登録や感想お待ちしています。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる