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領主と女中と満月の夜2
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「……え、と。じゃあその、脱いでくれる、の……?」
「え?」
ロアが不自然なほど視線を他所へやりながらマリアに尋ねたところ、マリアはまさしく「え?」という顔をした。
マリアが今着ているワンピースは、デコルテの上部あたりまでしか開かない。着衣のまま胸の上部を差し出すのは難しいだろう。
「……」
その事実に言われてから気づいたのか、マリアはしばし沈黙する。
太腿に関しては考えが及んでいたのに、不覚だ。
ロアは顔を真っ赤にして慌てて両手を振る。
「あ、あのね、別にさっきのは強要したんじゃなくて、なんだったら別の場所にするし、」
「前開きの服に着替えます」
「えっ、そこまでしなくても、」
「着替えます。ロアはあっち向いててください」
有無を言わさぬマリアの態度に、ロアは「はい」と頷いて、後ろを向く。
背後でクローゼットを開ける音がしたかと思うと、ワンピースを捲る衣擦れの音とともに、何やらガシャンガシャンゴトリと不可思議な音がした。
「……ねえマリア。それ何の音?」
「秘密です。振り向いたら怒りますからね」
着替えより音が気になって振り向きたくなる気持ちを精一杯抑え、ロアが待っていると。
「もういいですよ」
合図とともに振り返ると、マリアは寝間着に着替えていて、結っていた髪も下ろしていた。
この状態で吸血行為を行うのは新鮮で、不覚にもロアの胸は少しときめいた。
(……駄目駄目、いつも通りちゃんとしなきゃ)
心の中で頭を振って、ロアは仕切り直すようにもう一度ベッドの前に跪く。いつもはこの状態からマリアの首筋を噛みにいくのだが
(……ああそっか。胸を噛むならこの体勢じゃ無理だな)
思い直してロアは再度立ち上がる。
スマートに動けないほど動揺している自身に、思わずため息が零れた。
「ロア?」
「ううん、ごめん。マリア、今日は横になってくれるかな。そのほうが多分吸いやすいから」
「……そう、ですね」
マリアはそう言って、ベッドにゆっくりと横たわる。
心持、その表情は硬い。
「……力を抜いて、楽にしてね」
そう囁きながら、マリアに覆いかぶさるように、ロアはそっとベッドに両膝を乗せた。
彼女をこうしてベッドに押し倒すのは、初めてではない。
けれど、寝間着姿の彼女を見下ろすというこの状況が、ロアの心にじわりじわりと、嗜虐心に似た熱を生む。
シーツの上に広がる柔らかな栗色の髪、ロアを見上げる彼女の微かに潤んだ瞳、そしてほんのりと朱に染まるその頬が、ロアの熱に拍車をかけていく。
いつの間にか、喉が妙に乾いていた。
「ボタン、開けるね」
少し掠れた声でロアはそう確認してから、マリアの胸元のボタンに手を掛ける。
少しでも気を緩めれば震えそうになる指先に必死に力を込め、ロアはどうにか3つのボタンを外した。
手つきがぎこちなかったのが分かるのか、
「緊張、しているのですか」
当のマリアにそう問われてしまい、ロアは苦笑しながら頷いた。
「どうして?」
マリアの更なる問いに、ロアは上手く答えられない。
――だって、まるで今から君を食すみたいで。
それを口にしたら、きっと怖がられてしまう。
それだけは嫌で、ロアはぎこちなく笑った。
誤魔化す言葉すら口にする余裕がなくなっていることに気づいたロアは、早くこの行為を終わらせるべく寝間着の合わせ目に手をかけた。
綺麗な鎖骨のさらに下部、少女らしい膨らみに至る場所。
処女雪のように白く滑らかな、マリアの肌が目に入った。
その肌の温かさ、その皮膚の下の芳醇な血の匂いをロアの舌はよく覚えていて、視認しただけで喉の奥が鳴る。
いただきます、と。
普段なら一言掛けてから舌を這わすところを、今夜のロアはそれを失念していた。
否、言葉を掛ける余裕をなくしていた。
やはり満月の夜の月の引力は、吸血種の血を滾らせるのだ。
――そういうことにしておかなければ、言い訳ももうできない。
「え?」
ロアが不自然なほど視線を他所へやりながらマリアに尋ねたところ、マリアはまさしく「え?」という顔をした。
マリアが今着ているワンピースは、デコルテの上部あたりまでしか開かない。着衣のまま胸の上部を差し出すのは難しいだろう。
「……」
その事実に言われてから気づいたのか、マリアはしばし沈黙する。
太腿に関しては考えが及んでいたのに、不覚だ。
ロアは顔を真っ赤にして慌てて両手を振る。
「あ、あのね、別にさっきのは強要したんじゃなくて、なんだったら別の場所にするし、」
「前開きの服に着替えます」
「えっ、そこまでしなくても、」
「着替えます。ロアはあっち向いててください」
有無を言わさぬマリアの態度に、ロアは「はい」と頷いて、後ろを向く。
背後でクローゼットを開ける音がしたかと思うと、ワンピースを捲る衣擦れの音とともに、何やらガシャンガシャンゴトリと不可思議な音がした。
「……ねえマリア。それ何の音?」
「秘密です。振り向いたら怒りますからね」
着替えより音が気になって振り向きたくなる気持ちを精一杯抑え、ロアが待っていると。
「もういいですよ」
合図とともに振り返ると、マリアは寝間着に着替えていて、結っていた髪も下ろしていた。
この状態で吸血行為を行うのは新鮮で、不覚にもロアの胸は少しときめいた。
(……駄目駄目、いつも通りちゃんとしなきゃ)
心の中で頭を振って、ロアは仕切り直すようにもう一度ベッドの前に跪く。いつもはこの状態からマリアの首筋を噛みにいくのだが
(……ああそっか。胸を噛むならこの体勢じゃ無理だな)
思い直してロアは再度立ち上がる。
スマートに動けないほど動揺している自身に、思わずため息が零れた。
「ロア?」
「ううん、ごめん。マリア、今日は横になってくれるかな。そのほうが多分吸いやすいから」
「……そう、ですね」
マリアはそう言って、ベッドにゆっくりと横たわる。
心持、その表情は硬い。
「……力を抜いて、楽にしてね」
そう囁きながら、マリアに覆いかぶさるように、ロアはそっとベッドに両膝を乗せた。
彼女をこうしてベッドに押し倒すのは、初めてではない。
けれど、寝間着姿の彼女を見下ろすというこの状況が、ロアの心にじわりじわりと、嗜虐心に似た熱を生む。
シーツの上に広がる柔らかな栗色の髪、ロアを見上げる彼女の微かに潤んだ瞳、そしてほんのりと朱に染まるその頬が、ロアの熱に拍車をかけていく。
いつの間にか、喉が妙に乾いていた。
「ボタン、開けるね」
少し掠れた声でロアはそう確認してから、マリアの胸元のボタンに手を掛ける。
少しでも気を緩めれば震えそうになる指先に必死に力を込め、ロアはどうにか3つのボタンを外した。
手つきがぎこちなかったのが分かるのか、
「緊張、しているのですか」
当のマリアにそう問われてしまい、ロアは苦笑しながら頷いた。
「どうして?」
マリアの更なる問いに、ロアは上手く答えられない。
――だって、まるで今から君を食すみたいで。
それを口にしたら、きっと怖がられてしまう。
それだけは嫌で、ロアはぎこちなく笑った。
誤魔化す言葉すら口にする余裕がなくなっていることに気づいたロアは、早くこの行為を終わらせるべく寝間着の合わせ目に手をかけた。
綺麗な鎖骨のさらに下部、少女らしい膨らみに至る場所。
処女雪のように白く滑らかな、マリアの肌が目に入った。
その肌の温かさ、その皮膚の下の芳醇な血の匂いをロアの舌はよく覚えていて、視認しただけで喉の奥が鳴る。
いただきます、と。
普段なら一言掛けてから舌を這わすところを、今夜のロアはそれを失念していた。
否、言葉を掛ける余裕をなくしていた。
やはり満月の夜の月の引力は、吸血種の血を滾らせるのだ。
――そういうことにしておかなければ、言い訳ももうできない。
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