0歳からいきなり最強無双〜薔薇の騎士が紡ぐ英雄譚〜

なーさん

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第一章 ローズちゃん0歳。

わたくしは怪盗ローズ、薔薇の騎士ですわ、と、天然でボケたのは内緒である。


 低く野太い声で。

「何だ、お前?」

 そう問いかけたのは、星の悪魔グリュエルド。
 黒いローブ姿の両腕に鉄甲を装備したイカつい大男だ。
 目の前の自身の四分の一にも満たない小さな幼女を上から容赦なく睨みつけている。
 ザ・悪魔という、恐怖の顔面を持つ三メートルを超える大男だ。
 この大男が腕を組み、威圧感を向ける先は、小さな小さな愛らしいヒラヒラのスカートを履いた姫騎士である。

 それはまるで、童話のワンシーンのようだった。
 姫騎士の目元を隠す怪しげな銀縁の仮面メガネが、摩訶不思議な御伽話を演出している。
 主人公が悪者を退治する、そんな物語のご開帳だ。
 どちらが主人公なのかは、一目瞭然である。
 月光の如く煌めく銀の髪。
 鏡のようなピカピカと瞬くシルバーメイル。
 胸のど真ん中で咲き誇る黄金の薔薇。
 何処から見ても生粋のベビーフェイスであり、
 その幼な子が、これでもかと薄い胸を張り、ゴツい大男を見上げる様は微笑ましくも実に堂々とした主人公っぷりである。
 この色々と映え散らかしている幼女が、この強面の悪役を倒したら痛快だし、負けたらブーイングは必至となる。

 さて。

 その主人公が大男を見上げながら不敵に笑ってみせるところから物語が動き始める。

「フッフッフ」

 ――雑魚が。イキっておるわ。

 名乗りの刻、アゲインである。
 さっきはちょっと失敗だったから。
 早速のリベンジといこうではないか。
 本名はまだ内緒だから。
 えーと、この怪盗のような仮面にちなんで。

 スカートをちょこんと摘み、澄ました感じで名乗り始める。

「わたくしは怪盗ローズ。薔薇の騎士、ですわ」

 どうだ!このやろー!

「は?」

「え?」

 あれ?何か間違えたのか?

「お前、怪盗なのか、はたまた騎士なのか、一体どっちなんだよ」

「ぬ」

 しまった、間違えたであります。
 しかもバレると恥ずかしい天然のボケでありますよ。
 今、まさに、恥ずかしー。
 だとしても!
 それでも表情は決して崩さないぞ。
 間違いなど認めてはならない。
 それが王者というものよ。
 うおお!
 頑張れ、私の顔面よ。
 引き攣ってはならん。
 しかしコイツ、鋭いツッコミを返してきやがって。
 図体の割に細かい奴だ。
 スルーしろよ、まったく。
 さらには、また本名を入れてしまったではないか。
 うっかりしてしまった。
 さっきよりも大失敗である。
 とりあえずここは一つ、冷静に取り繕うとしよう。
 落ち着け、自然に、あくまでも冷静にだ。

「お好きな方でお呼びくださいませ」

 どうだ!考え得る中で完璧な返しだろう。

「はあ?変な奴だな」

 む、乙女に変とか言うな。
 まあ、しかし、変か。
 変だな。私も変だと思うぞ。
 それにしても、少しは頭が回るようだ。

「貴方、私を侮るような目を向けてきませんのね?」

 そう。
 コイツはこんなに弱そうな私を、警戒しているのだ。
 リュークの時のような侮りを見せない。
 既に魔力を練り上げるのも完了しており、咄嗟の回避行動も、受け止めて防御するにも、はたまた攻撃に移るのでもと、どうとでも動けるようにしている。
 まぁ、私の前ではその全てが無駄なのだがな。

「それはそうだろうが。
 俺たち悪魔は魔力が全てだ。
 姿形なんざ関係ねえ。
 小さくとも強い奴なんざいくらでもいるからな」

「へえ、それは、それは」

 知ってるぞ。
 悪魔は魔力しか能のない阿呆う共だということを。

「それに、だ。
 俺は目の前で対峙すれば、相手の魔力を見る事が出来る」

「それは、また、凄い能力ですわね、うふふ」

 ニッコリと微笑んで先を促してやる。

「だがよ」

 グリュエルドはジロリと探るような目を向ける。

「俺にはお前の魔力が全然見えねーんだよ」

「うふふふふふ」

 ローズちゃんは笑みを深めた。
 可愛らしくも悪い顔だ。
 口元が三日月を描く、そんな錯覚をさせる邪悪な笑みである。

 はっはっは。
 笑わせてくれるなよ。
 大悪魔ごときでしかないお前が、この私を測ろうとするな。
 私とお前では、格がまったく違うのだよ。
 私は月の女神だぞ。
 太陽神アポロンと並び立つ存在だ。
 全能神ゼウス、戦女神アテネに次ぐ第三位の地位が確約されているのだ。
 太陽神は男神共を、月の女神は女神たちを統べるのだぞ。
 最上位の神である我が魔力が、未だ人の身とはいえ大悪魔如きノミ虫に感知出来るはずもなし。
 私の魔力はお前の一千万倍だぞ。
 デカ過ぎて逆に見えないのだよ。

「ここに乱入して来るような奴が、まさか魔力が無いなんて考えられないだろう?
 何でだ?お前は一体何者なんだ?」

 はっはっは。
 知らないとはいえ、勇気があるな。
 褒めてつかわすか。

「うふふ。流石は大悪魔、鋭いですわ」

「その銀髪、お前、まさか……。」

 神族において、髪の色は得意属性を示している。
 火属性なら赤、水なら青、闇なら黒く、聖なら金となる。
 そして、銀髪は得意不得意など無く、全属性が高いレベルにあり、最上位という事を示す。
 ちなみにローズちゃんは全てが高いレベルに有り、中でも雷が最も得意で、その属性の頂点に君臨する雷神トールと同じレベルにいる。

「大天使なのか?」

 グリュエルドは神候補の大天使あたりだと当たりをつけた。

 うふふと、お上品に微笑むローズちゃん。

 惜しいな。ビジュアルは天使そのものだが。
 天使なんかよりもずっと格上、双子の女神の完全なる上位互換、女神たちを統べる月の女神よ。
 やれやれ。
 しょうがない。
 情けをかけてやるか。
 真実を教えてしんぜよう。

「いいえ」

 ローズはゆるゆると首を振り、ニッコリと告げる。

「ただの生まれたての、天使のように可愛いらしい人族ですわ」

 そう、これが真実。
 未だこの身は人族なのだ。

「ハッ」

 グリュエルドは鼻で笑い、呆れたように言う。

「そんな人族なんていねーよ」

 心外である。
 ただのはともかく、息が吸えなければ苦しいし、心臓が止まれば普通に死ぬ。
 人族のところは本当に本当なんだけど。
 生まれて一日も経っていないんだけど。


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