0歳からいきなり最強無双〜薔薇の騎士が紡ぐ英雄譚〜

なーさん

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第一章 ローズちゃん0歳。

薔薇の監獄へようこそ。

 
 正面の大男。星の悪魔グリュエルドを見上げながら、先ずはこのセリフからだ。

「さぁ、どなたからお相手してくれますの?」

「我だ」

「え?」

 何の躊躇もなく、間髪入れずに返事を返してくるとは。

 予想外だった。
 グリュエルドの背後から響いた重低音の声に、ちょっとびっくりしてしまった。

「我からいかせてもらおう」

「ええっ!」

 まさか、そんな、馬鹿な。
 三人まとめて相手をしようと思っていたのに。
 先程のセリフの後、黙りこくるコイツらに。
「三人まとめてでも宜しくてよ」
 なーんて煽ってやるつもりだったのに。
 それを言わせてくれないなんて。

 魔戒騎士がグリュエルドをズイッと押し退けて、ローズちゃんを威圧的に見下ろすと、再び低い声を響かせる。

「我が相手だ」

 次いで大剣を突きつけながら自信満々に言い切る。

「真っ正面から叩き潰してくれるわ」

 虚を突かれたローズちゃんは思わず生返事を返す。

「え、はあ。貴方ですか」

 コイツかあ。コイツねえ。
 正直、コイツが一番弱そうなんだが。
 リュウキの記憶を探った結果、力技しか出来ないみたいだし。
 回避行動の選択肢が無い魔力頼みの防御力。
 私にとっては紙装甲だ。

「貴方、なんだか自信満々ですけど、その根拠は何処にありますの?」

「ククク、我の防御力は魔界随一である。
 小癪な術など全て跳ね返してくれるわ」

「そうですか」

 コイツは馬鹿なんだな。
 この尋常ではない一連の出来事を、頭を使わずにボーッと眺めていただけか。
 何か染み入るものはないのか?
 コイツは侮れないとか。
 危機感とかないのか?
 とんでもなく鈍いのだな。
 やれやれだ。
 他の二人は私への警戒を一層深めているぞ。
 隙あらば離脱しようと隙を伺っているくらいだ。

「お前のような天使など、幾度となく踏み潰してきたわ。
 我が勘違いを正してくれようではないか」

「ほう。なかなか言いますわね」

 大言壮語も甚だしい痛いヤツめ。
 コチラこそ、勘違いを正してくれようではないか。
 馬鹿にも分かりやすく格の違いを知らしめてやるとしよう。

「ならば刮目してみてくださいませ。
 わたくしの愛剣を目にしても、その余裕を続けられるのか、見ものですわ」

 言って、目の前に煌々と輝く光の玉を浮かべた。
 収納魔法である。
 ゼウスより譲り受けた数々の神器が収納されている。
 そこに右の手を入れて。

「ご紹介致しますわ」

 ゆっくりと、見せつけるようにその手を引き抜くと、一本の剣が握られていた。
 持ち手には四対八枚の天使の翼が装飾されている黄金の剣だ。
 神々しくも恐れ多い、やんごとない雰囲気を醸している、コレぞ正しく聖剣といった輝きである。

 その聖剣を見せつけるようにゆっくりと突き出して。

「真なる聖剣」

 その名を告げる。

「銘はウリエルと申しますわ」

「な?!」

 その名を聴いた途端に、魔戒騎士は仰け反り、驚きの声を上げた。
 びっくり大成功だ。

「ウ、ウリエル、だと。まさか」

 そうだ。
 そのまさかだよ、チミ。
 流石に知っているだろう。

「ええ。
 察しの通りですわ。
 かの有名な最強天使の魂が込められた聖剣ですわよ」

「そんな、馬鹿な」

 大天使ウリエル。
 四大天使筆頭であり、そこいらの神よりも位が高く、双子の女神よりも上位の存在である。
 対悪魔特効の攻撃力を持つ最強の天使だ。
 闇を祓い、魔を燃やし尽くす聖なる炎を操り、その必殺の一撃は万の悪魔を纏めて葬るほどだ。
 悪魔の撃墜数は天界最多を誇る。
 ウリエルを知らない悪魔など、生まれたてか単なる小物である。

「それでは、点灯式をさせていただきます」

 恭しくそう言って、手ずから魔力を注ぎ込むと。
 刀身が。
 ポウッと、明かりが灯るように。
 オレンジ色の輝きを放ち始めた。
 ゆらゆらと揺れる炎のような光だ。
 聖なる炎。
 それは、どんなに深い闇をも祓い、全ての魔を撃滅せしめる天界最強の切り札の一つである。

 恐る恐ると。
 魔戒騎士は小刻みに震えながら問いかける。

「そ、そ、それは、本物、なのか?」

 ローズちゃんは口元が三日月に見える悪い顔になった。
 ドッキリが成功して、テッテレーと言いたいくらいに嬉しいのだ。

「ええ、ええ。ほら、この剣先を見てくださいな」

 ウリエルを良く見えるように掲げて、ピッと指差しながら。

「この刀身でゆらゆらと炎のように揺らめいている光。
 これが聖なる炎ですわ。
 未だかつて、この炎に抗えた悪魔はおりませんの」

 ズイッと一歩、ローズちゃんが距離を詰めて。

「ねぇ、魔戒の騎士様」

 もう一歩、ズイッと進み。

「貴方自慢の防御力とやらは」

 更に一歩歩んで間合へと侵入し、そこで上目遣いで見上げる。

「この聖なる炎にも耐えられるのかしら?」

 ニヤニヤと三日月の口で笑うローズちゃん。
 とっても邪悪な笑顔である。

「…ぁ…な……ぁぁ…」

 カタカタと震える魔戒騎士。
 この時襲ったのは未知なる恐怖だった。
 大天使ウリエル。
 その天使と出会ったら、全力で逃げろというのが、悪魔たちの共通認識だ。
 それが。
 あの最強天使の。
 あの聖なる炎が。
 今、この目の前に。

「う…うぅ…」

 未だかつてない経験に。
 つい。
 何も考えずに。
 身体が勝手に。
 気がつくと。
 襲いかかっていた。

「うああああああああああ!」

 追い詰められて発狂してしまったのだ。
 サイズはあべこべだが、窮鼠猫を噛む。
 その感情に等しい。

 恐慌状態に陥った魔戒騎士。
 大剣を両手持ちに、大上段から振り下ろす。

「フッフッフ」

 ローズちゃんは聖剣を中段構えに、不敵に笑って告げる。

「サナダ新陰流」

 剣聖リュウキの剣技を、此処で披露する。

「【ナマス斬り】」

 相手の獲物を破壊する剣技である。
 フッと刹那の残滓を残して。
 ローズちゃんが丸ごと消えた。
 それは、大悪魔には認識出来ないほどの超高速の剣技だった。
 ローズちゃんは、左袈裟斬りと逆袈裟斬りをただただ繰り返す。
 剣先から持ち手まで。
 端から端まで全てをなます斬りにすると、最後は神炎を操作して、柄までの丸ごとを消失させる。

 キキキキキキキキキンッ!

 幾重にも重なる甲高い金属音。

「っ!」

 グラリ、バランスを失って片膝を付く魔戒騎士。

「な、何が?」

 自身の異常事態に気づいた時。

「なっ」

 無手だ。
 手に持つ大剣がない。
 柄もだ。丸ごと消失している。

 その時。

「む」

 二体の悪魔が動きを見せる。
 逃走しようと練り上げていた魔力で時空をこじ開けようとするが。
 しかし。
 そうはローズちゃんが許さない。

 ――馬鹿が。逃すかよ。

「えい!」

 それを完璧にマークしていたのだ。
 悪魔たちに先んじて、大地に聖剣を突き立てると、天に向かってカッコよく叫んだ。

「【薔薇の監獄】!」

 暗闇で覆われた悪魔の世界中を。

 バリバリバリバリバリバリバリバリ!

 蒼い稲妻が駆け巡る。
 それは、イルミネーションが一斉に点灯したかのような光景だった。
 濁り澱んだ深海のような空間を、幻想的な摩訶不思議なワンダーランドへと創り変えてしまった。
 天にはビッシリと網目状に張り巡らせた神の雷が、煌々と光を放ち続ける。

「っ!」

「っ!」

 二匹の悪魔が時空をこじ開けようと足掻くが。
 全然。
 まったく。
 うんともすんとも。
 びくともしない。

「うむうむ」

 ローズちゃんはその様子を満足気に眺めた後。

「皆様」

 そう呼びかけて、自身に視線を集めてから。

 バッと。
 両腕をバンザイしながら勢いよく叫んだ。
 芸術が爆発したかのように。

「この世界はわたくしが支配しましたわー。
 絶対に、絶対に逃がしませんわよ」

「グ」

「クッ」

 機を逃して唇を噛む大悪魔たち。
 それをニヤニヤと見やりながら、ご機嫌で告げる。

「お気に召してくれたかしら?お客様方。
 悪魔の世界、もとい、薔薇の監獄へようこそ。
 わたくし、偉大なる先人たちに敵討ちを誓っておりますの。
 必殺です。必ず殺すと約束しましたの。
 よって、絶対に許しませんので、あしからず」

 スカートをチョコンと摘んだカーテシーで締め括った。

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