0歳からいきなり最強無双〜薔薇の騎士が紡ぐ英雄譚〜

なーさん

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第一章 ローズちゃん0歳。

イカつい大男の情けない顔面はメシウマである。

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 魔戒騎士を軽く一蹴した後。

「お、おお」

 ローズちゃんはポカンと上を、呑気なお顔で眺めていた。

 凄い頑張っているな、アイツ。
 思わず淑女らしからぬ声が漏れてしまったほどである。

 マメ娘が見上げた先には。

「おおおおおおおおお!!!」

 黒いローブ姿の大男。
 天井ギリギリ、二十メートルというところか。
 グリュエルドが左右の拳をギュウギュウに握り締め、天に向かって吠えて吠えて吠えまくっている。
 必死も必死。
 一気呵成に魔力を練っているところだ。
 どうやらカニ男との闘いの最中から頑張っていたようである。

「はっはっはー!チャージ完了だぜ!」

 準備完了とばかりにローズちゃんを見下ろすグリュエルド。

「ほう」

 ローズちゃんの口端がニッと持ち上がった。

 やる気だな。やる気満々だな、おい。
 ローズ、カニ男なんかよりも、よっぽどワクワクするぞ。

 天に広がる網目状に煌めく蒼い雷模様を背景に、ご満悦のグリュエルド。

「はっはっはっはっはー!」

 その周囲には夥しい数の魔法陣が展開していた。
 ザッと百を超えるくらいの数が。
 白黒と明滅を繰り返す幾何学模様が、まるで満天の綺羅星の如く瞬いている。

 壮麗にして美麗な景色だ。
 ムードチックこの上なく、是非に恋人と眺めたいところだ。
 最も、熱苦しいのが景観を損ねてはいるが。

「いくぜ!いくぜ!いくぜ!いくぜ!」

「おお」

 テンションマックスだな。
 血管がブチ切れそうな勢いではないか。
 主導権を握ったつもりだな、おい。
 おいおいおいおい。
 まさか、勢いだけでなんとかなる実力差だと、勘違いをしているのか?
 フッフッフ。
 馬鹿め。
 ならば好きにすれば良い。
 コチラは何もせずとも、その邪悪なる面持ちを、是非に歪めてやるとしようではないか。
 唖然とするアホヅラへ変えてやるから待ってろよ。

「おおおおおおお!!!」

 悪魔の咆哮が合図となり、闘争の火蓋は切って落とされた。

 吠える、吠える、吠える、吠える。

「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 百を超える魔法陣からの、一斉射撃が始まる。

 ドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

 黒い弾丸がマシンガンの如く乱射された。
 毎秒十という弾丸を吐き出しまくりである。
 まるで、黒い雨が土砂降りで降り注いでくるかのような光景だ。

 完全に逃げ場のないこの状況にも。

「うふふ」

 てんで。
 微塵にも。
 ローズちゃんの余裕はまるで揺るがない。
 お上品な薄ら笑いのままに直立不動を貫く。
 腰に手を当てて見上げたまま微動だにしない。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!

 ローズちゃんは特にそのまま。
 何も抵抗もせずに。
 一ミリも動くことなく。

「ウフフフフ」

 土砂降りの黒い雨に飲まれて煙の中へと消える。

「オラオラオラオラ!」

 目標を見失おうとも構わずに、悪魔は吠える。
 一気呵成に、一瀉千里に。
 吠えて吠えて吠えまくった。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 グリュエルドは、一心不乱に撃ちまくった。
 全力の全開を全力で疾駆した。
 息継ぎすらもなく、全ての力を振り絞り。

「まだまだー!」

 チャージした魔力が底をついても、自身の生命エネルギーに切り替えてまで、尚も撃ちまくる。

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!

 元に戻れなくなる、その寸前を見極めながら。
 放たれた弾丸は軽く十万を突破する。

「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ」

 猛撃は終わり、肩で息をする苦しげなグリュエルド。
 完全にガス欠状態。
 スタミナを回復するまでの余裕もなく、此処で一息つける。
 これ以上は力の根源が弱まってしまい、弱体化してしまうだろう。

「ふう。どうだ、この野郎」

 ローズのいたであろう場所は、モクモクと煙に塗れて確認出来ず。

「少しは効いたか、化け物マメ娘め」

 それを、グリュエルドは忌々しげに睨みつける。
 この大悪魔はカニ男と違って馬鹿ではない。
 故に、察する。
 大天使どころではない。
 あれはそれ以上の化け物だ。
 圧倒的な格上である事は理解した。
 そして、コレでやれたとも思ってはいない。
 しかし、マメ娘の余裕の薄ら笑いくらいは崩せた筈。
 それは予想というよりも祈りであり願望だ。
 これだけやってダメならば、勝ち目など一ミリもないのだから。

「………。」

 そして、審判の時がやって来る。
 もうもうと立ち上る煙が、晴れるのと同時に。

「おーほっほっほっほー!」

 見計らったかのようなタイミングで、高笑いのBGMが奏でられた。
 やっぱり、当然のようにマメ娘が登場した。
 元気溌剌にして、全くの無傷。

「おーほっほっほっほー!」

 ギラギラと凶悪に輝く右手の剣をクルクルと振り回して、その健在ぶりをアピールしている。
 むしろ元気になってしまったかのような振る舞いである。

「あ、あ、あ、あ。そんな、馬鹿、な」

 大悪魔のイカつい顔面がくしゃりと歪み、なんとも情けない顔となる。

「お、これはまた」

 それを見たローズちゃんは。

 ―――白飯三杯は食えるな。

 オカズになると思った。
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