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第一章 ローズちゃん0歳。
憤怒のローズちゃん
しおりを挟む「お、ほ、ほ、ほ、ほ」
「ピッピ~」
そんな一幕はあったが、直ぐに気を取り直した。
やらなければならない大事な事がある。
アイツをぶちのめす。
ラスボス攻略までの策を練らなければならないのだ。
神眼で見た結果を元に、実際に接触した事からの分析と解析を実行する。
「ふむ」
熟考する。
大魔王サタンのスペックと今の自分を比較する。
体力、膂力はお話しにならないくらいに負けている。
母親譲りの超人の肉体だが、そこは未だ三歳児の発展途上につき完敗だ。
頼みの魔力も向こうが倍は上だと推測する。
時が止まっているのにも関わらず、グルグル巻きの拘束を解けなかったのだ。
魔力には意思が働くものだ。
硬くなれと念じれば硬くなり、伸びろと思えば伸びていく、ある程度のコントロールが出来るのだ。
あの時が止まった空間では、奴の魔力からはその意思を感じ取れなかった。
それを抜け出せないのだから。
まあ、その辺は妥当なところだろう。
技術面は未知数だが、気配の消し方など魔力の使い方は悪くはなかった。
まぁ諸々を踏まえたところ、導き出した答えは。
結果―――勝率0%。
ゼロ。
ゼロである。
現時点での勝機は皆無。
流石に無理だ。
強みの神の魔力も負けている。
それも倍も開きがあるのだ。
技術云々ではなんとも埋められない力の差である。
「ふむ」
此処でローズちゃんは瞳を閉じて無表情となり、自問自答を繰り返す。
勝機はゼロ。敗色は濃厚だ。
このままでは負けて殺され、それで終わりだ。
ならば、諦めるというのか?
――――否だ。
ギリッと奥の歯を噛み締めて、眉間にはシワが寄る。
ならばどうする?
撤退か?
尻を捲って逃げるというのか?
――――否だ。
さらにさらに。
ギリギリと奥の歯を強く噛み締め、口の端からは血が零れ落ちる。
ならばどうする?
成長するまで隠れて、リベンジの機会を待つのか?
その間にアヤツは大暴れだ。
人族が犠牲になっても良いとでも言うのか?
――――断じて否だ!
負けそうだから逃げるのか?
馬鹿が!
逆境を跳ね返してこそが正義の味方だろうが。
窮地を避けてはならない、それが英雄たる所以である。
それに主人公とは、最後には必ず勝つ、そういう宿命だろうが。
しかし、だ。
それよりも、何よりもだ。
ここで、こめかみにはビシッと青筋が立ち、漏れ出す口調が完全に素になってしまう。
「ふざけるな、よ、クソ、が」
沸々と込み上げてくる怒りの焔に、小さな身体をこの上なくフルフルと震わせて。
アイツは私に記念すべき初黒星を与えてくれたのだ。
そして、言ったのだ。
調子にのるな、人族と。
悪魔如きがだ。
たかが元大天使如きがだ。
この月を司る次期女神様にだ。
女神の中の女神にだぞ。
調子にのっている?
誰がだ?!コラ!
お前の方が調子に乗っているだろうが!
ローズちゃんをなめやがって、このたわけが者が!
左右の拳をギリギリと握り締め。
「おおおおおお!」
天に向かって力一杯に吠えた。
「アイツは百発殴ーる!」
これは決定だ。
やられっぱなしでいられるものか。
このままでは武人としての矜持が崩壊する。
「ちっくしょーーっ!!サタンのアホーっ!」
プンスカするローズちゃんを、頭上の命の恩人がぴょこぴょこ跳ねながらフォローに入る。
「ピッピッピッピ~」
「あ、少々取り乱しましたわ」
「ピピッ~ピピッ~」
フフフ。
まぁまぁ、ひとまず落ち着いて、そして頑張って、ですか。
応援ありがとうございます、おスライム様。
このローズちゃんめが、貴方様の為に全力で頑張る所存でございます。
「おスライム様、冷静になれました。感謝致します」
憤怒から一転して、穏やかに続ける。
さて、と、ならば叡智を駆使するか。
このまま楽々ミッションクリアと思っていたのにな。
腕を組み、頭を働かせるローズちゃん。
「うーーーーーーん」
そうして記憶を漁り尽くした結果。
「しょうがありませんわ。
最終手段、奥の手を使いますわ」
「ピッピ?」
「ええ、奥の手ですわ」
「ピピっ」
「でもな~」
「ピピ?」
「うーん」
その後の展開を考えたローズちゃんは、顔を曇らせ思わず躊躇してしまった。
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