53 / 61
第一章 ローズちゃん0歳。
リベンジの狼煙が高らかに上がる
しおりを挟む◇◇◇◇◇
場面はローズが消えた直後のサタンの領域、大聖堂の中へと戻る。
ロゼの魔法は重ねがけが出来ない。
ローズを自分の世界に連れて行った時点で、前の魔法は解けている。
故に止められていた時間は既に解けていた。
「ガアアアアア!」
「ふん」
夜叉猿が哮りながら殴りかかり、サタンが魔剣でそれを捌く。
大怪獣対大魔王の闘いは五分の凌ぎ合いとなってはいるが、どこか本域ではない様子だった。
魔法や術を使うことなく単純な殴り合いを繰り返している。
「おい。闇の王」
魔剣を構えるサタンの呼びかけに、夜叉猿は襲い掛かりながらそれに応える。
『何だ、大魔王』
それを捌きながらの再びサタン。
「何故、精霊の王が人族の味方につく」
以下略。
とても激しく殴り合いながらの会話です。
『我は人族の味方に在らず。あの娘の味方よ』
「何故だ。逃げ出すような腑抜けだぞ」
『グワーハッハッハッハ!』
「何がおかしい?」
『笑わせてくれるな』
「何だと」
『アレが尻尾を巻いて逃げるような玉なものか』
「………。」
『必ずリベンジをしに舞い戻ってくるぞ』
「………。」
『しかしだ、そうは言っても、今のあの娘の力では無謀にも見える』
「フン、ならば戻って来る訳がないではないか」
『グワッハッハッハ!』
「何がおかしい?」
『それをどうにかするのがあの娘よ。
アレはただの人族ではない。
正体は神に等しいナニカだ』
「フン。馬鹿らしい」
『摂理を捻じ曲げてでも、必ず勝機を手にして舞い戻ってくる。
しかも、それはもう間も無くだ。
我には女の未来が見えるからな』
「フン」
『コレはそれまでの暇つぶしの次いで、ただの繋ぎよ』
「戯言を」
『それまでは純粋な殴り合いを楽しもうではないか』
「チッ、暇人が」
『ぬ』
突然ピタリと、夜叉猿が殴りかかるのをやめてしまった。
「む?どうした?」
『クックック』
「何だ一体?」
訝しむサタンに対して、夜叉猿は顎をしゃくる。
『ほれ、後ろだ』
「っ!」
振り返ると、五間先にて、銀光の瞬きを後光にした人影が立っていた。
「おーほっほっほっほー!」
「ピッピッピッピ~」
[ロゼの高笑いのつもりの囀りです]
スライムを頭にのせた美女、成長したローズさんだ。
腰に手を当ててボインな胸を強調するように踏ん反り返っている。
「お待たせしましたわ」
「ピッピピッピ~、ピッピ?」
[待たせてごめん、寂しかった?と言っている]
長くなった銀の髪を後ろで一つに束ね、スリットの入った燃えるように赤いチャイナドレス姿のローズさんだ。
胸にはもちろん一輪の金の薔薇が見事に咲き誇っている。
西の大陸の衣装を錬金術で仕立て直したミスリル製の逸品だ。
大怪獣と大魔王のじゃれ合いは幕である。
暇つぶしの前座などはもう終いだ。
主役がパワーアップして、リベンジを果たしに参上したのだから。
『クックック、主よ』
夜叉猿が顎を撫でながら、いやらしく舐め回すような視線を向ける。
『見違えたではないか。
予想通りに美しく、何ともそそられる扇情的な肉体よ。
だが、完熟ボインまでは、あと五年といったところか』
「む」
予想通りのエロい目を向けて来やがって。
セクハラな発言など無視だ、無視。
それよりも、挨拶がまだだったな。
ローズさんは夜叉猿を無視してサタンを正面に見据えると、合掌してペコリと一礼してから名乗りをあげる。
「わたくしの名はローズ・アルファ・ザッツバーグ」
「ピッピッピッピ~、ピッピピッピ~」
[私はスライムのロゼ、先程そのような名前を頂きました、と言っている]
そこで区切ると、半身となり、ググッと重心を後ろに屈伸するよう深く腰を落とし、左右の掌底を突き出したカンフーポーズを決めて、いざ宣言する。
「我が薔薇薔薇拳で、サタンをバラバラにしに参りましたわ!」
「ピッピッピッピ~」
[それを見届けに参りました、と言っている]
バーンという幻聴の効果音と共に、燃ゆるローズさんのリベンジの狼煙がドーーンッと盛大に立ち上るという幻覚も見えた。
10
あなたにおすすめの小説
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる