異世界のダンジョン・マスター

優樹

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ダンジョン・マスター第一部

20.第一章エピローグ

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 調査団との戦いから約二ヶ月、俺達の生活は落ち着きを取り戻していた。
 相変わらず冒険者達はやってくるが、防衛の方はメリルの働きでなんとかなっている。
 王国の動きはわからないが、キリネ村で情報収集をしているセレナによると、今のところ大規模な軍隊が派兵される様子はなさそうとのこと。そう言えば、皮肉にもダンジョンが出来たことによりキリネ村に訪れる人々が増えて、これから大きく発展していきそうだとも言っていた。
 ダンジョンという宝に誘引された冒険者達から金を落としてもらうため、商人達が様々な投資を始めたらしい。人間というのは全く利に聡い生き物である。
 後何年かすれば、キリネ村が都市となることもあるのかもしれない。

 ダンジョンに住む皆の生活も、以前のように戻った。
 違いと言えば、前よりもお互いが打ち解けてきて、仲が良くなったことだろうか。
 人間が嫌いなメリルも、セレナとリーゼに対しては険しい顔を見せなくなった。
 和気あいあいと会話するまではいかないが、それでも世間話程度はするようになったのだ。
 これから時間をかけて、もっと打ち解けていければいいと思う。
 ちなみに俺の生活にも多少変化があった。
 普段通り魔法の練習やセレナとの戦闘訓練、そしてリーゼとの雑談などは変わらないが、週に一度程度、そこにメリルとの晩酌が追加された。
 メリルは酒が入っても饒舌に喋るようなタイプではないので、結構静かな晩酌だったりするのだが、俺としてはその空気が居心地よく感じる。
 しかし、一度メリルの持ってきたお酒が、酒じゃなくてジュースだったことがあった。疑問に思ってメリルを見ると、メリルは一瞬眉根を寄せてから執務室を出ていき、しばらく後にアーシャを引っ張ってきた。どうやらアーシャが酒の中身を入れ替えたらしい。
 既に半分酔っ払った状態のアーシャがメリルに怒られながら、飲んでしまった酒の代わりにつまみを差し出したことにより、メリルの怒りは鎮静した。
 それからの晩酌には、たまにアーシャが合流するようになった。
 なんだかんだで、あの二人は良いコンビである。
 ちなみに飲んだ翌日は、アーシャはいつにも増して眠そうである。いや、いつも眠そうだからあまり区別がつかないっちゃつかないのだが。

 ダンジョンの方は、順調に開拓が進んでいる。第四層の開拓は概ね完了しており、後は細かい調整をすれば引越し作業に入れる。
 第四層の開拓がほぼ終わったことにより、結界陣で呼び出せる魔物もより強力なものとなった。とはいえまだぎりぎり中級に届くか届かないかという強さの魔物しか呼び出せないのだが。
 そう言えば結界陣の扱いに慣れたためか、過去に呼び出したことのある魔物であれば、その魔物をイメージしながら召喚を行うことにより、任意に呼び出すことが可能になった。
 しかし、今はまだ魔物のレパートリーを増やしていきたいので、任意召喚はほとんど実施していない。もっともっと多くの種類の魔物を呼び出せるようになったら、任意召喚で種族の統一を図って行きたいと思う。
 こうして俺達の生活は一時の平和が訪れた。願わくば、このまま穏やかな日々を過ごしたいものだ。

──人間界某所──
「失敗した? なぜですの!?」
 魔王征伐軍が結成されるどころではない、調査団すら次に派遣されるのはいつになるかわからない、そう報告されたエレーナが部下を叱責する。
「は、人間共の調査団が全滅したためです」
「全滅? どうしてそんなことが!」
「まともにやりあったら奴らの戦力では殲滅など出来ないでしょう、恐らく魔王か幹部が前線に出たのだと」
「恥知らずの魔族共、人間風情に自分たちで戦ったのですか!」
「はい、そうでなければ全滅などありえません」
 ダンジョンに全員が突入するわけではないのだ、よっぽどのことが無い限り、通常は全滅などありえない。
「こんな結果では、お姉さまに合わせる顔がありませんわ……」
「どうしますか?」
「今考えてるのよ! 静かになさい!」
「も、申し訳ありません」
「もういいわ、一旦下がって」
「は、失礼いたします」
 一礼して部下が出ていく。
「……どうすれば、どうすればいいかしら……」
 エレーナは何か案がないかと必死に考える。
「このまま終わるなんて絶対に認めませんわ」
 エレーナは所詮人間と期待はそこまで高くなかったが、自分の考えた案を破られたことに許しがたい屈辱を味わっていた。
「人間が駄目なら兵を使って……いや、駄目ですわ、それはお許しにならないでしょう」
 自分に兵を動かす権限はない、兵を動かすには上層部の許可が必要になる。
「いや、ですがあの手なら……そうですね、いけますわ」
 何事かを思いついたエレーナは、笑みを浮かべると早速準備へと取り掛かった。
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