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ダンジョン・マスター第二部
15.天界兵の襲撃-中編-
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オークリーダーは考えていた。
セレナは時間稼ぎをしろと言っていたが、あの敵はまずい。
逃げ延びた部下の報告の内容に加えて、今も遠くから感じる重圧。本能が警鐘を鳴らしていた。あれには勝てない、と。
ならば逐次戦力を投入して皆殺しにされるのを待つより、残された魔物達に全てを託して、敵に痛打を与えるべきではないか。
恐らくオークと残ったゴブリン全員でかかれば、一人は仕留めることが出来るだろう。
報告にあった斧槍を持った天界兵は倒せぬだろうが、手傷の一つくらいは負わせられるはずだ。
そうなれば、後はリザードマン達とアンデッド達がなんとかしてくれる。
彼らは知能の低い亜人であることとは関係なく、ダンジョンを守るために死ぬことに抵抗はなかった。
死ぬことへの恐怖はもちろんある。それは生きていればほとんどの生物が感じる自然な感情だ。
では、何故死ぬことに抵抗がないのか。それは、彼らはこのダンジョンに召喚されたことを感謝していたのだ。
通常、オークやゴブリンなどは邪悪な魔物であり、行動も粗雑で乱暴なものである。
しかし、召喚主である魔王の人柄が影響したのか、彼らは実に気のいい魔物達であった。
時たま悪ふざけをしてメリルに怒られることもあったが、それを不快に思ったことなどない。気分的には犬猫のようにじゃれついているだけなのだから。
度々様子を見に来るリーゼなどの人間に対しても、特に害を加えようという感情はなかった。
これはゴブリン達の生態を考えれば驚くべきことだ。
元々彼らは他の種族を襲って雌をさらってきては、自分達の子供を産ませるような種族である。
それが一人でのこのこと歩いているリーゼに性欲を抱かないどころか、むしろ小動物を保護するような気持ちで接していた。
そんな彼らであるからこそ、自らを犠牲にしてダンジョンを守るべきだと考えたのである。
「ブヒィッ! ブヒッ!」
オークリーダーが、自らの意志をゴブリンリーダーへ伝える。
「グギュッ? グギャア!」
一瞬命令を破るのかとゴブリンリーダーから疑問の声が上がるが、オークリーダーの瞳に込められた決意を見て、自分達もついていくことを決める。
「ブヒッ! ブヒァァァァァァ!!!」
「ギャアウ! グルォォォォォォ!!!」
オークリーダーとゴブリンリーダーの咆哮が第一層に鳴り響き、生き残っているオークとゴブリン達がそれに唱和する。
今、彼らの命をかけた戦いが始まろうとしていた。
……
唐突に第一層に響き渡った咆哮に、カイン達は立ち止まった。
「す、凄い叫び声ですね」
ロナがびくびくとしながら声を発する。
「まるで断末魔の叫びだ」
マイルも驚きの表情を浮かべながら続けた。
「ちげぇな、これは咆哮だ、それも、とびっきり気合の入った奴だ」
カインはマイルの意見を否定しながらも、楽しそうな表情で呟く。
「どうやら、あの広間で待ち構えているようですね」
イレーヌが指したのは、第二層へ向かう前の通る最後の広間。かなりの広さを持つそこには、遠目でもわかるほどに魔物達の気配が充満していた。
「おもしれぇ、やってやろうじゃねえか」
そんな気配に怖気づくこと無く、カインは広間へと向かう。
「次の階層に行くためには必ず通らねばならない道、ですか……仕方ありませんね」
イレーヌもそう言い、カインへと続く。
「ぼ、ボク達も行こう」
「ああ……」
そして、ロナとマイルも広間へと入っていった。
簡単な陣地が作られているその広間には、総数五十にも及ぶかという数のオークとゴブリン達が待っていた。
「グルウウウウオオオオォォォォォ!!!」
ダンジョンを揺るがすような大音響の咆哮が鳴り響き、一斉にオークとゴブリン達が突撃してくる。
「<<漆黒の槍よ、敵を貫け>>」
だが、魔物達が自分達のところに到達する前にイレーヌの魔法が発動する。唱えたのは闇属性中級魔法ダークランス。イレーヌの周囲から魔物の群れに向かって射出された数本の漆黒の槍は、魔物が密集していた地点に穴を穿つ。
「いくぜぇ!」
そこにすかさずカインが飛び込み、ハルバードを当たると幸いに振り回す。
まるで暴風のようなその嵐に近寄ったものはかすっただけでもその部分が削り取られ、運悪く直撃したものは体を爆散させられる。
「い、行きます!」
更に後方からはロナの弓が飛び、的確に魔物に手傷を負わせる。
その援護を妨害しようと近寄ったものにはマイルがあたり、流麗な剣さばきで魔物をロナ達に近寄らせない
即興にしては見事な連携に、オーク達は攻めあぐねていた。
だが、彼らは引くわけにはいかないのだ。なれば出し惜しみをしている場合ではない。
「ブヒィ!」
オークの指示で前に出たのはオークメイジとゴブリンメイジ。下級魔法を使いこなす彼らが一斉に魔力の集中を始める。
「グルウウウ……」
そしてゴブリンリーダーが大剣を担ぎあげると、オークリーダーに一瞬視線を向け、精鋭の部下を引き連れてカインへ走りだす。
それはまるで「後は任せた」と言っているようでもあった。
カインの元へ一足飛びでたどり着いたゴブリンリーダーは、手に持った大剣をカインの持つハルバードへと叩きつける。
ガキィッと凄まじい音を響かせながら両者の武器が噛み合う。
「ほう? こいつは多少骨がありそうじゃねえか」
「グギュルウゥゥゥ!」
力では相手が上だと判断したゴブリンリーダーは、一度距離を取ると部下へと指示を出した。
「ギャギャウ!」
指示を受けた部下達は、カインの周囲を取り囲むと各々が手に持った武器を構え出す。
「いっぺんにやろうってか? いいぜ、かかってこいよ」
一方囲まれているカインは焦った様子もなく、不敵な笑みを浮かべて手招きをしている。
「グルオォォォ!」
そしてゴブリンリーダーが戦いの口火を切るため、カインへと向かって大剣を振り下ろす。
カインはそれをハルバードの柄で受け止め、力任せに押し返す。
そこに背後からゴブリンが剣を振り上げ迫ってきていた。
カインはゴブリンリーダーを押し返した勢いに逆らわず、少し前方へ進んでから一気に振り返り、ハルバードをゴブリンへと叩きつける。
凄まじい速さで振られたそれをゴブリンは避けることが出来ず、頭上に掲げた武器ごと真っ二つに切り裂かれた。
しかし、仲間がやられても誰も動揺を見せず、次々とゴブリンがカインへと襲いかかる。
同様にゴブリンリーダーも体勢を立て直し、カインへと武器を振るう。
だが……カインは強かった。ゴブリン達の攻撃を最小限の動きで回避し、次々と切り伏せていく。
このままでは手傷の一つも負わせることが出来ずにゴブリン達は全滅してしまう……というところで、戦況に変化が起こった。
「マイルさん!!」
広間に響いたのはロナの悲痛な叫び。
そして、カインの目に映ったのは全身を血に染めたマイルの姿だった──
ゴブリン達が命を賭してカインと戦っている時、オーク達もまた命をかけて戦っていた。
魔法を使用するため魔力の集中を行なっているゴブリンメイジとオークメイジが、敵の後衛から猛攻を受けていたのだ。
彼らを守るためにオーク達は自分の体を盾にして、イレーヌが矢継ぎ早で使う魔法や、ロナが放つ矢を受け止めていた。
ロナの矢はともかく、イレーヌの魔法は一発一発の威力が大きく、受け止めるたびにオークが一人、また一人と地に倒れ伏す。
既に残されたオークの数も少なく、オークリーダーも大盾を持ってメイジ達の壁となっていた。
しかし、オーク達の尊い犠牲により、ようやくメイジ達の魔法が発動する。
「ギャッギャウ!」
「ブヒィィィ!」
彼らが使えるのは所詮下級魔法ではあるが、数を束ねれば侮れない威力になる。
直前で詠唱妨害は不可能だと判断したイレーヌ達は防御魔法を使用したが、今まで後衛を守るために突出していたマイルへ集中した魔法を防ぎきる事は出来なかった。
地面を揺らすほどの爆音が何度も響き渡り、土煙が晴れた時に現れたマイルは全身から血を流しボロボロになっていた。
「マイルさん!!」
その惨状に思わずロナが叫び声を上げる。
「ぐっ……くぅ……」
膝をつき荒い息を吐くマイルに、ロナが近寄る。
「動かないでください! 今治癒魔法を使います!」
ロナは腰から短杖を外すと、魔力の集中を始める。
しかし、それを許すオーク達ではない。すぐに追撃に向かおうとする。
だが、オーク達の被害もまた大きかった。メイジ達を守るために壁になったオーク達はほとんど死に絶え、残っているのは極わずか。既に体勢を立て直したイレーヌからは、マイルとロナに敵を近づかせまいと、再び攻撃魔法が矢継ぎ早に飛んできている。
これでは彼らの止めを刺すのは難しいだろう。そう判断したオークリーダーもまた、腹部に大きな傷を負っていた。
普段であれば分厚い筋肉と脂肪に守られているその腹部には大きな穴が空き、血が噴水のように吹き出していたのだ。
誰が見ても重症であり、そして助からない傷だった。
オークリーダーはそれでも毅然とした態度を崩さずに、残った部下に最後の指示を与える。
与えた指示は「一つでも多くの傷を相手に与えろ」である。
この場に立った時点で、生き残ることは放棄している。今更逃げること考える部下は一人もいなかった。
指示通り動き出した部下達を見据え、オークリーダーはその巨体を地に沈める。
ロナの叫びが広間に響き渡った時、カインは一瞬の隙を見せた。
それを逃さず、ゴブリンリーダーは部下と共に最後の攻勢をかける。
「グルルル……ルォォォォォォォ!!!!!」
味方に攻撃が当たることを全く気にしない全力の攻撃を全方位から叩きこむゴブリン達。
捨て身のその攻撃に、さしものカインも幾つかの攻撃をその身に受ける。
「ちっ、くそがあああああああああああああ!!!」
だが、手傷を負ったとは思わせない動きで、カインはハルバードを縦横無尽に振り回しゴブリン達を殺し尽くす。
数秒後、そこには立っている魔物は誰もおらず、脇腹や背中から血を流しているカインがいるだけだった。
イレーヌ達が相手にしているオーク達もほとんど生き残りはおらず、後はカインが手を出さなくても倒しきれるだろう。
戦闘には勝った。しかし、カイン達は少なくない被害を負ったのだった。
そして、倒れ伏したゴブリンリーダーとオークリーダーは、満足気な表情を浮かべて絶命していた──
セレナは時間稼ぎをしろと言っていたが、あの敵はまずい。
逃げ延びた部下の報告の内容に加えて、今も遠くから感じる重圧。本能が警鐘を鳴らしていた。あれには勝てない、と。
ならば逐次戦力を投入して皆殺しにされるのを待つより、残された魔物達に全てを託して、敵に痛打を与えるべきではないか。
恐らくオークと残ったゴブリン全員でかかれば、一人は仕留めることが出来るだろう。
報告にあった斧槍を持った天界兵は倒せぬだろうが、手傷の一つくらいは負わせられるはずだ。
そうなれば、後はリザードマン達とアンデッド達がなんとかしてくれる。
彼らは知能の低い亜人であることとは関係なく、ダンジョンを守るために死ぬことに抵抗はなかった。
死ぬことへの恐怖はもちろんある。それは生きていればほとんどの生物が感じる自然な感情だ。
では、何故死ぬことに抵抗がないのか。それは、彼らはこのダンジョンに召喚されたことを感謝していたのだ。
通常、オークやゴブリンなどは邪悪な魔物であり、行動も粗雑で乱暴なものである。
しかし、召喚主である魔王の人柄が影響したのか、彼らは実に気のいい魔物達であった。
時たま悪ふざけをしてメリルに怒られることもあったが、それを不快に思ったことなどない。気分的には犬猫のようにじゃれついているだけなのだから。
度々様子を見に来るリーゼなどの人間に対しても、特に害を加えようという感情はなかった。
これはゴブリン達の生態を考えれば驚くべきことだ。
元々彼らは他の種族を襲って雌をさらってきては、自分達の子供を産ませるような種族である。
それが一人でのこのこと歩いているリーゼに性欲を抱かないどころか、むしろ小動物を保護するような気持ちで接していた。
そんな彼らであるからこそ、自らを犠牲にしてダンジョンを守るべきだと考えたのである。
「ブヒィッ! ブヒッ!」
オークリーダーが、自らの意志をゴブリンリーダーへ伝える。
「グギュッ? グギャア!」
一瞬命令を破るのかとゴブリンリーダーから疑問の声が上がるが、オークリーダーの瞳に込められた決意を見て、自分達もついていくことを決める。
「ブヒッ! ブヒァァァァァァ!!!」
「ギャアウ! グルォォォォォォ!!!」
オークリーダーとゴブリンリーダーの咆哮が第一層に鳴り響き、生き残っているオークとゴブリン達がそれに唱和する。
今、彼らの命をかけた戦いが始まろうとしていた。
……
唐突に第一層に響き渡った咆哮に、カイン達は立ち止まった。
「す、凄い叫び声ですね」
ロナがびくびくとしながら声を発する。
「まるで断末魔の叫びだ」
マイルも驚きの表情を浮かべながら続けた。
「ちげぇな、これは咆哮だ、それも、とびっきり気合の入った奴だ」
カインはマイルの意見を否定しながらも、楽しそうな表情で呟く。
「どうやら、あの広間で待ち構えているようですね」
イレーヌが指したのは、第二層へ向かう前の通る最後の広間。かなりの広さを持つそこには、遠目でもわかるほどに魔物達の気配が充満していた。
「おもしれぇ、やってやろうじゃねえか」
そんな気配に怖気づくこと無く、カインは広間へと向かう。
「次の階層に行くためには必ず通らねばならない道、ですか……仕方ありませんね」
イレーヌもそう言い、カインへと続く。
「ぼ、ボク達も行こう」
「ああ……」
そして、ロナとマイルも広間へと入っていった。
簡単な陣地が作られているその広間には、総数五十にも及ぶかという数のオークとゴブリン達が待っていた。
「グルウウウウオオオオォォォォォ!!!」
ダンジョンを揺るがすような大音響の咆哮が鳴り響き、一斉にオークとゴブリン達が突撃してくる。
「<<漆黒の槍よ、敵を貫け>>」
だが、魔物達が自分達のところに到達する前にイレーヌの魔法が発動する。唱えたのは闇属性中級魔法ダークランス。イレーヌの周囲から魔物の群れに向かって射出された数本の漆黒の槍は、魔物が密集していた地点に穴を穿つ。
「いくぜぇ!」
そこにすかさずカインが飛び込み、ハルバードを当たると幸いに振り回す。
まるで暴風のようなその嵐に近寄ったものはかすっただけでもその部分が削り取られ、運悪く直撃したものは体を爆散させられる。
「い、行きます!」
更に後方からはロナの弓が飛び、的確に魔物に手傷を負わせる。
その援護を妨害しようと近寄ったものにはマイルがあたり、流麗な剣さばきで魔物をロナ達に近寄らせない
即興にしては見事な連携に、オーク達は攻めあぐねていた。
だが、彼らは引くわけにはいかないのだ。なれば出し惜しみをしている場合ではない。
「ブヒィ!」
オークの指示で前に出たのはオークメイジとゴブリンメイジ。下級魔法を使いこなす彼らが一斉に魔力の集中を始める。
「グルウウウ……」
そしてゴブリンリーダーが大剣を担ぎあげると、オークリーダーに一瞬視線を向け、精鋭の部下を引き連れてカインへ走りだす。
それはまるで「後は任せた」と言っているようでもあった。
カインの元へ一足飛びでたどり着いたゴブリンリーダーは、手に持った大剣をカインの持つハルバードへと叩きつける。
ガキィッと凄まじい音を響かせながら両者の武器が噛み合う。
「ほう? こいつは多少骨がありそうじゃねえか」
「グギュルウゥゥゥ!」
力では相手が上だと判断したゴブリンリーダーは、一度距離を取ると部下へと指示を出した。
「ギャギャウ!」
指示を受けた部下達は、カインの周囲を取り囲むと各々が手に持った武器を構え出す。
「いっぺんにやろうってか? いいぜ、かかってこいよ」
一方囲まれているカインは焦った様子もなく、不敵な笑みを浮かべて手招きをしている。
「グルオォォォ!」
そしてゴブリンリーダーが戦いの口火を切るため、カインへと向かって大剣を振り下ろす。
カインはそれをハルバードの柄で受け止め、力任せに押し返す。
そこに背後からゴブリンが剣を振り上げ迫ってきていた。
カインはゴブリンリーダーを押し返した勢いに逆らわず、少し前方へ進んでから一気に振り返り、ハルバードをゴブリンへと叩きつける。
凄まじい速さで振られたそれをゴブリンは避けることが出来ず、頭上に掲げた武器ごと真っ二つに切り裂かれた。
しかし、仲間がやられても誰も動揺を見せず、次々とゴブリンがカインへと襲いかかる。
同様にゴブリンリーダーも体勢を立て直し、カインへと武器を振るう。
だが……カインは強かった。ゴブリン達の攻撃を最小限の動きで回避し、次々と切り伏せていく。
このままでは手傷の一つも負わせることが出来ずにゴブリン達は全滅してしまう……というところで、戦況に変化が起こった。
「マイルさん!!」
広間に響いたのはロナの悲痛な叫び。
そして、カインの目に映ったのは全身を血に染めたマイルの姿だった──
ゴブリン達が命を賭してカインと戦っている時、オーク達もまた命をかけて戦っていた。
魔法を使用するため魔力の集中を行なっているゴブリンメイジとオークメイジが、敵の後衛から猛攻を受けていたのだ。
彼らを守るためにオーク達は自分の体を盾にして、イレーヌが矢継ぎ早で使う魔法や、ロナが放つ矢を受け止めていた。
ロナの矢はともかく、イレーヌの魔法は一発一発の威力が大きく、受け止めるたびにオークが一人、また一人と地に倒れ伏す。
既に残されたオークの数も少なく、オークリーダーも大盾を持ってメイジ達の壁となっていた。
しかし、オーク達の尊い犠牲により、ようやくメイジ達の魔法が発動する。
「ギャッギャウ!」
「ブヒィィィ!」
彼らが使えるのは所詮下級魔法ではあるが、数を束ねれば侮れない威力になる。
直前で詠唱妨害は不可能だと判断したイレーヌ達は防御魔法を使用したが、今まで後衛を守るために突出していたマイルへ集中した魔法を防ぎきる事は出来なかった。
地面を揺らすほどの爆音が何度も響き渡り、土煙が晴れた時に現れたマイルは全身から血を流しボロボロになっていた。
「マイルさん!!」
その惨状に思わずロナが叫び声を上げる。
「ぐっ……くぅ……」
膝をつき荒い息を吐くマイルに、ロナが近寄る。
「動かないでください! 今治癒魔法を使います!」
ロナは腰から短杖を外すと、魔力の集中を始める。
しかし、それを許すオーク達ではない。すぐに追撃に向かおうとする。
だが、オーク達の被害もまた大きかった。メイジ達を守るために壁になったオーク達はほとんど死に絶え、残っているのは極わずか。既に体勢を立て直したイレーヌからは、マイルとロナに敵を近づかせまいと、再び攻撃魔法が矢継ぎ早に飛んできている。
これでは彼らの止めを刺すのは難しいだろう。そう判断したオークリーダーもまた、腹部に大きな傷を負っていた。
普段であれば分厚い筋肉と脂肪に守られているその腹部には大きな穴が空き、血が噴水のように吹き出していたのだ。
誰が見ても重症であり、そして助からない傷だった。
オークリーダーはそれでも毅然とした態度を崩さずに、残った部下に最後の指示を与える。
与えた指示は「一つでも多くの傷を相手に与えろ」である。
この場に立った時点で、生き残ることは放棄している。今更逃げること考える部下は一人もいなかった。
指示通り動き出した部下達を見据え、オークリーダーはその巨体を地に沈める。
ロナの叫びが広間に響き渡った時、カインは一瞬の隙を見せた。
それを逃さず、ゴブリンリーダーは部下と共に最後の攻勢をかける。
「グルルル……ルォォォォォォォ!!!!!」
味方に攻撃が当たることを全く気にしない全力の攻撃を全方位から叩きこむゴブリン達。
捨て身のその攻撃に、さしものカインも幾つかの攻撃をその身に受ける。
「ちっ、くそがあああああああああああああ!!!」
だが、手傷を負ったとは思わせない動きで、カインはハルバードを縦横無尽に振り回しゴブリン達を殺し尽くす。
数秒後、そこには立っている魔物は誰もおらず、脇腹や背中から血を流しているカインがいるだけだった。
イレーヌ達が相手にしているオーク達もほとんど生き残りはおらず、後はカインが手を出さなくても倒しきれるだろう。
戦闘には勝った。しかし、カイン達は少なくない被害を負ったのだった。
そして、倒れ伏したゴブリンリーダーとオークリーダーは、満足気な表情を浮かべて絶命していた──
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