親友は勇者 オレはケモ耳男子校で保健室の先生はじめます

花果唯

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第25話 調理場

 先生たちに続き、オレとリッカは食堂に向かった。
 スノウはまだ眠かったのか、保健室で二度寝を始めたので置いてきた。
 調理場に行くと明かりがついて、いい匂いが漂ってきた。
 シュロ先生とシオン先生にも心当たりがないようだが、誰かが準備を始めているようだ。

「先生、おはようございまーす! あ、チハヤ先生! 目を覚ましたんですね!」

 扉を開けると、元気な笑顔のアリスと目が合った。
 シャルとクコの姿もある。

「トハヤ先生、心配しましたよ。顔色はいいですが、ご無理はなさらず……」
「大丈夫?」

 三人そろって駆け寄ってきてくれて、先生は嬉しいです。泣いちゃう!

「オレは大丈夫だよ! むしろ絶好調!」

 風呂に入りたいとは思うが、それ以外の不調は一切ない。
 体が軽くてびっくりしている。

「元気だから、朝食作りも余裕!」

 残りは一人でやっちゃおうかな~、なんて言っていると三人がニヤリと笑った。

「実は……もうできました!」
「完成したところだったんですよ。あとは盛り付けだけです」
「味見もばっちり」

 じゃーん! と三人が示す方を見ると、確かにスープは完成しているし果物もカットしてあった。え、すごい!
 シュロ先生も驚いて目を見開いている。

「アリス、シャル、クコ……。いつもありがとうな。ほんと助かるよ!」

 シュロ先生がわしゃわしゃと三人の頭を撫でている。
 朝から美人が可愛い子たちを愛でてきゃっきゃしている、という尊い光景を見せて貰えて嬉しい。
 和んでいたら、なぜかオレの頭をわしゃわしゃしてくる手が現れた。

「リッカ、何をしている?」
「チハヤも褒めて欲しいのかと思って」
「違う! それに三日風呂に入ってないから汚いぞ」
「? 三日くらい普通じゃない? いい匂いするけど」
「! ええー……」

 三日くらい体を洗わなくても普通、そして、匂いを嗅いできたリッカに引いた。

「オレは毎日入りたいの」
「じゃあ、あとで一緒に行く」
「いや、一人で行くから」

 風呂——じゃなくて水浴びまでついてこられるのは嫌すぎる。
 リッカは放置して、姫三人組に話しかける。

「もう完成しているってことは、みんなはあまり寝てないんじゃないか?」
「それが! チハヤ先生に回復して貰ってから、元気いっぱいで!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねるアリスに同意して、シャルとクコも頷いている。

「あ、ぼくもそうなんだよ。古傷まで治ってさ。すごいね、チハヤ先生」

 シュロ先生に褒められるとデレデレ照れてしまう。
 こら、リッカ。オレのデレデレなほっぺを引っ張るな。

「チハヤ先生、聖女様みたい~」

 羨望のまなざしでそう言ってくれたが、実際の聖女がアレなので複雑な気持ちだ。

「それはあまり嬉しくない、かなあ」

 苦笑いを浮かべていると、アリスがハッと口を押えた。

「ごめんなさい! チハヤ先生、可愛いけど男の子だもんね」
「いや、複雑なのはそこじゃなくて……。それに可愛いのは君たちね」

 聖女の本性はあまり知られていないのかな? と思っていると、シャルが声をかけてきた。

「じゃあ、チハヤ先生は『賢者様』ですね」
「賢者?」
「賢者様は魔法に関して膨大な知識を持っていて、聖女様に負けないくらい高度な回復魔法も使えたと言われています」
「図書室に賢者様のお話の絵本があるよ」
「へー……ありがとう! あとで調べてみるよ」

 図書室も賢者も気になるから、開いている時間に調べてみよう。
 とにかく、今はお腹を満たそう。

「ちょっと調理場を使わせて貰うね」

 後片づけをしている途中だったようなので、残りはオレが引き受けることを伝えて、おにぎりのアレンジを始めた。

 前に昆布らしきものをみつけ、出汁をとっていたのでそれを使う。
 醤油もあるし、オレが日本で使っていた調味料は大体あったから、かつて召喚された勇者の中には日本人がいたんじゃないかと思っている。
 でも、おにぎりが知られていないのは、こちらの世界の人の口には合わなかったのかもしれない。

 そんなことを考えながら、おにぎりをほぐして出汁をかけ、『出汁茶漬け』にしようと思ったのだが……。
 思った以上に米が固くなっているから、煮込んでおかゆにすることにした。

「わあ、いい匂い~」

 アリスたちが鍋の中を覗き込んでいる。
 シオン先生とシュロ先生も気になるようで、後ろから見ている。
 おかゆを作っているだけなのに、とオレは笑ってしまった。
 リッカだけはおかゆよりオレの方に張り付いてる。
 邪魔だな……。

 アリスたちは、ニワトリの餌だからとおにぎりは食べなかったのだが、おかゆには興味があるらしい。
 それならば……ともう一つ作ることにした。
 
 炊いたこめじゃなくてもそんなに時間がかからなくてすむものだ。
 オリーブオイルで米を炒め、水と鶏がらスープを加え、しばらくかき混ぜながら加熱。
 芯がなくなったらチーズを加え、塩やコショウで味を調えてチーズリゾットの完成だ。
 なんとなくだけど、洋風のこちらの方がみんなの口に合う気がする。

 いつの間にか朝日が出て、食堂に生徒たちが訪れ始めていた。
 オレが調理するのと同時進行で、先生方が食堂の対応をしていたので、おにぎりアレンジ試食会はリッカと姫三人組で行うことになった。

「おいしい……」
「こんなにおいしいものをニワトリにあげていたなんて!」
「全部欲しいの」

 姫三人組はチーズリゾットの方を奪い合うように食べている。
 あ、先生たちの分……。

「僕はこっちがいい」

 リッカは昆布出汁の方がいいようで、独占して黙々と食べている。

「こら、オレの分も寄こせ」
「はい」

 そう言ってスプーンに掬って持ってきた。

「お前な……」

 一口じゃなくて、いっぱい食べたいんだ!
 それに、アリスたちがなんだかソワソワしながらこちらを見ているのが気になる。
 見ちゃいけないもの見ている感が出ているが、何でもないことだぞ!?

 リッカからおかゆを取り返すと、抱え込んでリッカから守りながら食べた。
 うまい……沁みる……。



 朝食タイムが終わり、後片付けも終わったところで解散した。
 リッカもしぶしぶ校舎に向かった。

「はー……食べたかったですねー、『チーズリゾット』」

 オレの前を歩いているシオン先生が深いため息をついている。
 今からみんなを治した件について話をするため、二人で移動中だ。

「すいません、また作るので」
「約束ですよ?」
「はい! 簡単なのでいつでもできますよ」

 シュロ先生にも散々文句を言われたし、いつでも作ります。
 夜食とかにもいいかもしれない。

 校舎の二階に上がって、たどり着いた扉の上には『図書室』の室名札がついている。
 今の時間は閉めているようで、シオン先生は鍵を開けて中に入った。
 オレが通った小学校の図書館に似ている。
 高い棚が並んでいるところを通ると、窓に囲まれて光が入る読書スペースがあった。
 六人掛けのテーブルが六つ並んでいて、そのスペースの周りにも低めの本棚がある。

「どうぞ、好きなところにおかけください」

 シオン先生が窓を開けながら声をかけてくれた。
 オレは近くにあった椅子に腰を下ろした。

 初めて来たところなのに、何だか懐かしい。
 小学校の図書館で、転校してきたばかりの京平が黙々と小難しそうな本を読んでいるのを見つけたオレは、隣で歴史のマンガを読みながら粘着したことを思い出した。

『なあ剣崎、これ見てみろよ』

 マンガの偉人の顔にらくがきされているのを見つけて京平に見せたら……。

『……ははっ』
『!』

 意外なことに少し笑ったからびっくりしたんだよなあ。

「お待たせしました」
「あ、はい」

 すべての窓を開けて、いい風が入っていたところでシオン先生がオレの前に座った。

「では、早速……。生徒たちを回復したときのことを教えて頂けますか?」
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