親友は勇者 オレはケモ耳男子校で保健室の先生はじめます

花果唯

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第30話 プロポーズ?

「番?」

 オレに質問されたリッカは、きょとんとしていたが……。

「…………」

 そのまま固まってしまった。
 しばらく回答を待ってみたがまったく動かない。
 熟考中か?
 瞬きすらしていない気がするのだが……大丈夫?

「えっとー……『番』って何か分かる?」
「分かるに決まっているだろ」

 リッカは子どものようなところがあるから、意味が分からなくて止まっているのか? と思ったが違うらしい。
 さすがに分かるか。

「……チハヤは僕と番になりたいの?」

 オレがした質問がそのまま返ってきた。
 もしかして、オレがそれを望んでいるから尋ねたのだと勘違いさせてしまったのだろうか。
 そうだとしたら申し訳ないので、すぐに返事をした。

「いや、なりたいわけじゃないけど」
「!」

 リッカは『ガーン!』という効果音がついていそうな顔をしている。
 あ、その気がなくてもはっきり否定されたらショックか。
 告白してないのにフラれる、みたいな。
 オレは生徒の悩みとかきく先生なんだから、もっと言い方に気をつけないと……!
 反省していると、リッカはまた神妙な顔で質問をしてきた。

「じゃあ、誰と番になるの?」
「誰ともならないけど……」
「…………」

 そう答えると顔が険しくなった。え、何で?

「本当に? 勇者は? スノウは?」
「はあ? 京平は親友だし、何でスノウが出てくるんだ?」 

 どっちも候補として出てくるのが意味不明すぎる。
 オレはふわふわした感じの女の子がいいのだが、ここは男子校だから男同士で恋愛とかが自然なのだろうか。
 そんなことを考えていたら、リッカは椅子から立ち上がってオレのところまできた。

「チハヤが倒れたときに、『僕が守らないと』って思った」

 倒れたとき——というとみんなを治したときか。
 そういえば、出会った頃はよくつき飛ばされたけど……今はなくなったかも?
 バリーとか誰かがオレにちょっかいかけてきたら、すぐに飛んでくるのは守ってくれていたのか?

「僕と番になろう」
「え?」

 正面に立つリッカがオレの両手を掴んで、真剣なまなざしを向けてきた。
 このセリフって……獣人の間ではプロポーズになるのでは!?
 ど、どうしよう!
 何気なく聞いてしまったことから、思いがけない方向に話が進んでしまっている!

「『番』とか考えたことなかったけど……。チハヤが僕のものだって分かりやすくなるし、そうするのが一番いい」
「な、何を言っているんだ? ならないって……」

 いつからオレはお前のものになったんだ? というツッコミをしたいのだが、色々と混乱していて頭が追いつかない。

「なんで?」

 リッカが不機嫌そうに詰めてくるが……。

「なんで、って……。『番』って、人生を共にしたいくらい好きな人となるものだろ?」
「僕はチハヤが好きだから言ってるんだけど」
「!」

 リッカの言葉にびっくりした。
 ストレートな言葉って胸に刺さるというか——。

「そ、その『好き』は違うんじゃないかな……?」
「?」

 今度はリッカが顔をしかめている。

「シオン先生とか、シュロ先生も『好き』だろ?」
「……二人とも嫌いじゃないけど」

 素直に好きと言えばいいのに何のツンデレだ。

「番にしたいと思うのはチハヤだけ。僕が一番にみつけた。だから僕のだ」

 オレは早い者勝ちの景品か? なんて思っていたら、リッカの長いしっぽがオレに巻きついてきた。
 やっぱり厚みのある長いふかふかしっぽは可愛い……!
 効果があったことを察知したのか、リッカが少し笑った。

「僕と番になったら触り放題だよ?」
「うぐっ……」

 それは魅力的だけど、しっぽに釣られて番になるなんておかしいだろ!?
 でも、このしっぽを毎晩撫でながら眠れたら最高だなあ。
 ……なんてしっぽの魔力と戦っている間に授業のチャイムが鳴り、ハッとした。

「リッカ、チャイムが鳴ったぞ」
「……サボる」
「駄目だ。またキオウ先生に迎えに来て貰いたいのか?」

 名残惜しいがしっぽを解いてリッカの背中を押して進むと、心底不服そうだが保健室を出た。
 オレも見送るために扉まで行く。

「授業が終わったらまた来る」
「はいはい。急げよ」

 急げと言っているのに、堂々といつも通りの様子で校舎に向かうリッカの背中に苦笑しながら、オレは保健室の扉を閉めた。

「ほんとに変な方向にいっちゃったな……」

 はあ、と大きなため息をつく。
 付き合うことになった女の子に告白されたときもドキドキしたが、そのときよりも妙に緊張したというか……今になって顔が熱くなってきた。

 幼さがあるリッカだからこそ純粋な想いだと感じたのだろうか。
 リッカのお父さんであるシオン先生とか、シュロ先生に相談してみようかな……?



 ※ 



 授業が終わり、夕食も終わってひと段落したところで、オレは水浴びをすることにした。
 リッカに知られると「一緒に行く!」と言われそうなので、忍びのようにこそこそ動いた。
 宣言通り授業が終わるたびにやってきたリッカは、オレが番になると頷くまで言うつもりのようだったから、ひとまず「人前でその話をしたら絶交だ」と言ったら分かってくれた。

 分かってくれた……とは思うんだけど、更に物理的に距離が近くなっているような気がする。
 隙があればオレにしっぽを巻いてくるというか……。

 ベタベタするのは好きじゃないと言ったら、無言でしっぽを渡されたから、一応一撫で二撫で……三撫で四撫でさせて貰ったけどさ。

 とにかく、リッカの目を盗んで一人になったこの隙に体を綺麗にしたいと思う。
 みんなは気温が高い昼間に入ったり、川に行ってすっきりしているらしい。
 オレは春みたいな気候でも暖かいお湯じゃないと嫌だ。凍えるって!
 職員寮の水浴び場で洗おうとしたら、シュロ先生がついてきてくれることになった。
 アイテムでお湯にする、と聞いた記憶があるから、温めるために来てくれるのかと思ったら……。

「え、シュロ先生も水浴びするんですか?」
「もちろん」

 水浴び場の前にある脱衣所に入ると、一緒に脱ぎ始めたので驚いてしまった。
 見てもいいのだろうか……!

「……何?」

 思わず手で目を塞いでいたら、シュロ先生の怪訝そうな声が聞こえてきた。

「シュロ先生の裸を見ることに罪悪感が……!」
「馬鹿なこと言ってないで、早くチハヤ先生も脱ぎなよ。もしかして、ぼくに脱がして貰いたいの?」 
「そんなことさせられません!」

 慌てて脱いでいる間に、シュロ先生は前も隠さず豪快に水浴び場に進んで行った。かっこいい!
 そして、とてもとてもお美しいお体をしておりますね!
 しかも、体に髪と同じ黄緑のグラデーションで魔法陣のような模様がついている。
 両腕と背中、腰辺りにもある……。
 刺青のようにも見えるのだが、色が薄いから怖さはなくただただ綺麗だ。
 思わず見惚れてしまったが、オレも服を脱ぎ捨てて急いで追いかけた。

 水浴び場は教室より少し狭いくらいの空間で床は石材っぽい。
 部屋の中央が三段下がりの丸いくぼみになっていて、その中心からお湯が噴水のように吹き出ている。
 一段目の足首くらいまでもうお湯が溜まっていて、ちょっと公園などにある水遊び場……というより、現状は足湯?
 噴水のところで何かしているシュロ先生に近づく。

「お、来たね。普段は水なんだけど、今はお湯にしてるんだ。獣人って冷たくても平気なんだけど、エルフのぼくは寒いんだよね。チハヤ先生もそうじゃない?」
「はい、無理です! 普通に凍えます」
「だよね。今日はのんびり腰くらいまで溜めようかな。……チハヤ先生、何か話したいこととかありそうだし?」
「!」


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