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しおりを挟む「は、はあ!?」
「殿下は、何もご存じありませんでしたの? 貴方が当たり前に享受していたあれら護衛は、我がミスルトゥの者たちですわ。そもそもの話、側妃殿下の家は爵位が低く財もなく、殿下の身の回りを守る人員が揃えられないと、我が家に陛下と側妃殿下が泣きつかれたから、仕方なく婚約が結ばれたのですよ。我が家は伯爵家の代わりに、妃殿下と殿下を暗殺から守っておりましたのに」
「な……!?」
まあ、ぶっちゃけると、私を守るついでみたいなものだけれども。
もちろん、王城には精鋭の近衛騎士たちもいるが、多くは軍を差配する侯爵家出の王妃の派閥の者だ。
第一王子派と第二王子派の派閥争いが激化し、暗殺が横行している昨今、誰が敵か味方かわからぬこの状況で、安易に信頼できる手の者以外を身の回りに置くことができなかった。
いつ裏切られ、背後からざくりといかれるか、わかったものではないもの。
その辺の警戒を逆手に取って、悪感情を吹き込み近衛騎士団に誤解を生ませ、第一王子派と仲違いさせてきた王妃殿下の手腕は、なかなかのものだったけれど。
実際、私も襲われかけたことあるし、割と毒の混入は日常茶飯事だ。
王妃殿下の手だとわかっているのに、巧妙に尻尾を掴ませてくれず、苦渋を舐めさせられること幾星霜。
我が家が素知らぬ顔して、毒を魔道具で対処してるのも、知らなかったのでしょうね、殿下は。
なかなか王妃殿下に子が授からず、陛下がひそかに愛していた令嬢を側妃として娶り無事子を授かった後、王妃殿下にも待望の子が生まれたのが、そもそも悲劇の始まりだ。
この国は、よほどのことがなければ、基本長子継承と定められている。
伯爵家出の側妃の子でありながら、公爵家出の王妃の子より先に生まれたグノー殿下は、後ろ盾があまりにも弱すぎた。
そうして、陛下に乞われ、権力を担うべく、同時期に生まれた私が婚約者として選ばれたのだ。
だから、病の床につかれる前に、側妃殿下が婚約者を大事にしろと口を酸っぱく言っていたのに。
グノー殿下は、初めての恋に浮かれて、ちっとも聞きやしなかった。
婚約破棄となったとしても、かなり煮え湯を飲まされた我が家が、掌を返して王妃派に付くことはないとはいえ、ミスルトゥ公爵家にもプライドがある。
瞳を細めた私は、くすりと唇に笑みを刷いた。
「婚約を破棄されたのですもの。後ろ盾も解消ですので、我が家の手の者を王城から引きあげさせました。ただそれだけのことですわ。当然でしょう?」
王妃殿下や、第二王子派閥の者から、幼少のみぎりよりひそかに暗殺者を送り込まれていたが、全て我が家が返り討ちにし、グノー殿下はここまで守られて育ってきたのだ。
その守りがなくなれば、果たしてどうなるのか?
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