覇王はトラウマごと疫病神を愛しすべてを覆す

ちろる

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「俺は疫病神なんです……」

 時也ときやさんが慎重に俺の様子を窺いながら「疫病神?」と下から顔を覗き込まれて、コクリと小さく頷いた。

「人を殺しました……二人」

 その言葉に時也さんが息を詰めて、けれど優しい声で「ひじりちゃんは人を殺せるような子じゃねぇだろ?」と問い掛けてくるので、ぶんぶんっとかぶりを振ったらなだめるように背を撫でられる。

 その手が温かくて、きっと話したらドン引きされてしまうだろうということも容易たやすく唇から噴きこぼれた。

「俺、ゲイで……過去に二人付き合っていた人がいました。でも二人共、自殺と事故で死にました。俺が疫病神だったから……」

 それだけ呟いたら、時也さんは何だか苦虫を噛み潰したような顔をするから『ああ、やっぱ引かれた……』と思いながら、「すみません。俺、もう帰ります」と告げたのだけれど――。

 その瞬間、手首をギュッと掴まれた。

「ヤベェな……。俺、男は守備範囲外のはずなんだけど……。ズキューン!ハートに矢が刺さっちまった。そんな同じ秘密を抱えてるなんて言われたら、もうどうすりゃいいんだよ? 俺たち巡り会うべくして巡り会った神のお導きだろこれ。言っとくけど俺……気になったモンにはソッコー手ぇ出すから」

 言って、時也さんは俺の腕をグッと引いて、その薄くて形のいい唇を俺のそれに寄せてきた。

 驚きのあまり目も見開いたままの俺にはおかまいなし、口腔に潜り込んできた舌はやや性急で、セックスのためのキスなのだと無言で伝えてくるような熱を持っていた。

 むせせるようなキスは強引なのに甘く、俺の頭は何か糖分の水底みなそこに沈んだようにふやけ、思考が霧散して時也さんのけつくような舌に応えれば、自然と立ち上がったままだった身体をソファの上に縫いとめられていて。

 欲をはらんだ瞳が俺を見下ろしてくるけれど――。

(これは、駄目だ)

 そう、駄目なのだ。

 時也さんが同じ秘密を抱えていて、神の導きのような出会いだと言うのなら、俺は神に嫌われた疫病神なんだ。

「――俺と寝たら、死にますよ?」

 吐息が触れそうな距離にある時也さんの瞳を射抜くと、彼は一瞬だけグレーの瞳を見開いたけれど、すぐに面白そうに口の端を吊り上げてみせた。
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