覇王はトラウマごと疫病神を愛しすべてを覆す

ちろる

文字の大きさ
35 / 85

35

しおりを挟む
***


ひじりちゃん、どうした? 店に来るなんて何かあったのか?」

 真夜まやくんと話した翌日、俺は『ネロック』に足を運んで、VIPルームで時也ときやさんが来るのを今か今かと待っていた。

「すみません……時也さん。なんか、時也さんが接客しているところ、見たくなって。――時也さん、やっぱり輝いてますよね。本当にこの仕事が好きなんですね」

「まぁ、俺はこれ一本で生きてきたからなぁ。でも、前も言ったけど最近はしんどいんだ。聖ちゃんっていう恋人がいるのに……悲しませてる、よな? 俺も心苦しくてさ。マジでごめん」

 時也さんのために入れたボトルで喉を潤しながら、(さて、どう切り出そう――)と思わず俯くと、時也さんは俺からグラスを奪い取って唇を掠めてきた。

 アルコールの味のキスだ。

「言ったよな? 俺の直感って高確率で当たるって。聖ちゃんが今日ここに来たの……俺にホスト辞めて欲しいけど、辞めさせたら悪いから離れるとか考えてるだろ? だから接客なんて見に来たんだろ?」

「――それは……」

「昨日さ、真夜からメッセージが来たんだ。聖ちゃんが苦しんでるって。どんなことかは言ってくれなかったけど……やっぱしんどいよな。俺みたいなん相手にしたら。ただ――俺はいつでも聖ちゃんに刺される覚悟だ。つーか、もう刺して欲しくてさ。俺も正直、仕事と聖ちゃんとの葛藤でどうしたらいいのかわからなくなってる。楽になりてぇ」

 言って、時也さんはスーツの内ポケットからナイフを取り出すから、俺は目を見張ってしまった。

「と、きやさん……?」

「聖ちゃんがVIPに来たって聞いて、店の厨房からくすねてきた。仕事にも恩義があって愛してる。けど――聖ちゃんも死ぬほど愛してる。こんなどっち付かずな人間……殺してくれないか?」

「……どうして、俺が殺すんですか? 俺が刺したら時也さんも俺と刺し違えて一緒に連れてってくれるって言ったじゃないですか」

「聖ちゃん、本当に一緒に死んでくれんの?」

 俺の瞳を覗き込んだ時也さんの視線は、いつもの冗談ではない真摯しんしなもので、本気なのだろうということがわかって、思わず唾を飲み込んだ。

 ゆっくり、ナイフを握りしめる――。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(2024.10.21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。 幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。 逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。 見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。 何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。 しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。 お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。 主人公楓目線の、片思いBL。 プラトニックラブ。 いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。 2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。 最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。 (この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。) 番外編は、2人の高校時代のお話。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

処理中です...