39 / 85
39
しおりを挟む
「……父さんは、聖にも幸せになって欲しいと思ってる。お前の性癖を受け入れた。会社を継がせるつもりもない。過去の不幸の分まで幸せになって欲しいと思っている。なのに――どうして聖は幸せになれないんだろうな……」
「……俺はもう時也さんから離れるから……そうしたらきっと美聖も目が覚めるよ。俺のせいできっと目覚めないだけだよ。幸せなんか……望んじゃいけないんだ……」
父さんはもう何も言わなかった。
俺の幸せを願ってくれるのは嬉しいけれど、俺には幸せになる権利なんかないんだ。
そんなこと初めからわかっていたはずなのに、どうして俺は時也さんの手を取って、美聖を焚きつけるようなことを言ってしまったんだろう。
さっきだって、美聖のことで電話がなければ俺は時也さんを刺そうとしていた――。
甘い誘惑のまま、時也さんの未来を奪おうとしていたんだ。
(許されない……こんなの……)
「……帰ろう。父さん。……俺が全部終わらせるから。そうしたらきっと美聖も目覚めてくれるはずだよ……。俺の幸せは……願ってくれなくても大丈夫。一人で生きていけるように強くなるから」
「でも聖――」
「……いいんだっ! 俺は幸せになんかなれない! そんなの全部わかってる! 生まれてきちゃいけなかったことも! ……苦しいよ……。幸せになんかなれないのに、幸せになれなんて言われたら苦しいよ……もう、やめて……お願いだから……」
頬が生温い液体で濡れている感触に、自分の弱さをまざまざと痛感させられたようで、むりやり袖で拭ってみるけれど止まってはくれなくて。
どうして、こんな不運を背負っているのだろう。
時也さんなら、あの人ならもしかしたら俺の疫病神ごと包み込まれて、振り払ってもらえるかもしれないと思った。
それだけのオーラを纏う人だった。
けれど、それでも俺の抱える不幸は消えてくれなかった。
だったらもう、どんな人でも無理じゃないか。
(俺は一生一人なんだ――)
「……俺はもう時也さんから離れるから……そうしたらきっと美聖も目が覚めるよ。俺のせいできっと目覚めないだけだよ。幸せなんか……望んじゃいけないんだ……」
父さんはもう何も言わなかった。
俺の幸せを願ってくれるのは嬉しいけれど、俺には幸せになる権利なんかないんだ。
そんなこと初めからわかっていたはずなのに、どうして俺は時也さんの手を取って、美聖を焚きつけるようなことを言ってしまったんだろう。
さっきだって、美聖のことで電話がなければ俺は時也さんを刺そうとしていた――。
甘い誘惑のまま、時也さんの未来を奪おうとしていたんだ。
(許されない……こんなの……)
「……帰ろう。父さん。……俺が全部終わらせるから。そうしたらきっと美聖も目覚めてくれるはずだよ……。俺の幸せは……願ってくれなくても大丈夫。一人で生きていけるように強くなるから」
「でも聖――」
「……いいんだっ! 俺は幸せになんかなれない! そんなの全部わかってる! 生まれてきちゃいけなかったことも! ……苦しいよ……。幸せになんかなれないのに、幸せになれなんて言われたら苦しいよ……もう、やめて……お願いだから……」
頬が生温い液体で濡れている感触に、自分の弱さをまざまざと痛感させられたようで、むりやり袖で拭ってみるけれど止まってはくれなくて。
どうして、こんな不運を背負っているのだろう。
時也さんなら、あの人ならもしかしたら俺の疫病神ごと包み込まれて、振り払ってもらえるかもしれないと思った。
それだけのオーラを纏う人だった。
けれど、それでも俺の抱える不幸は消えてくれなかった。
だったらもう、どんな人でも無理じゃないか。
(俺は一生一人なんだ――)
23
あなたにおすすめの小説
僕の目があなたを遠ざけてしまった
紫野楓
BL
受験に失敗して「一番バカの一高校」に入学した佐藤二葉。
人と目が合わせられず、元来病弱で体調は気持ちに振り回されがち。自分に後ろめたさを感じていて、人付き合いを避けるために前髪で目を覆って過ごしていた。医者になるのが夢で、熱心に勉強しているせいで周囲から「ガリ勉メデューサ」とからかわれ、いじめられている。
しかし、別クラスの同級生の北見耀士に「勉強を教えてほしい」と懇願される。彼は高校球児で、期末考査の成績次第で部活動停止になるという。
二葉は耀士の甲子園に行きたいという熱い夢を知って……?
______
BOOTHにて同人誌を頒布しています。(下記)
https://shinokaede.booth.pm/items/7444815
その後の短編を収録しています。
ポケットのなかの空
三尾
BL
【ある朝、突然、目が見えなくなっていたらどうするだろう?】
大手電機メーカーに勤めるエンジニアの響野(ひびの)は、ある日、原因不明の失明状態で目を覚ました。
取るものも取りあえず向かった病院で、彼は中学時代に同級生だった水元(みずもと)と再会する。
十一年前、響野や友人たちに何も告げることなく転校していった水元は、複雑な家庭の事情を抱えていた。
目の不自由な響野を見かねてサポートを申し出てくれた水元とすごすうちに、友情だけではない感情を抱く響野だが、勇気を出して想いを伝えても「その感情は一時的なもの」と否定されてしまい……?
重い過去を持つ一途な攻め × 不幸に抗(あらが)う男前な受けのお話。
*-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-*
・性描写のある回には「※」マークが付きます。
・水元視点の番外編もあり。
*-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-*
※番外編はこちら
『光の部屋、花の下で。』https://www.alphapolis.co.jp/novel/728386436/614893182
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
【完結】言えない言葉
未希かずは(Miki)
BL
双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。
同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。
ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。
兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。
すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。
第1回青春BLカップ参加作品です。
1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。
2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)
鈴木さんちの家政夫
ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。
FBI連邦捜査官: The guard FBI連邦捜査官シリーズ Ⅲ
蒼月さわ
BL
脅迫状が届いたニューヨーク市長を護衛するためFBIから派遣された3人の捜査官たちの活躍を書いた表題作他、表向きは犬猿の仲、けれど裏では極秘に付きあっているクールで美形な金髪碧眼のエリート系×ジョーク好きな男前のセクシィ天然イタリア系の二人を中心とした本編「FBI連邦捜査官シリーズ」の番外編や登場人物たちの短いエピソードなど。
以前にアルファさんで連載していたアメリカを舞台に事件を捜査する連邦捜査官たちの物語です。
表紙イラストは長月京子様です。
【完結】エデンの住処
社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。
それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。
ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。
『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。
「兄さん、僕のオメガになって」
由利とYURI、義兄と義弟。
重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は――
執着系義弟α×不憫系義兄α
義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか?
◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる