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小寺先輩が、目を白黒させて。
でも、すぐにその言葉を咀嚼したように口を開いた。
「確かに……椎名、女みたいな顔してるもんな。そう言われても不思議じゃないかも。俺、ゲイの知り合いいるよ? フリーなんだ。会ってみる?」
しどろもどろになって「えっと……」と何も言葉を紡げずにいると。
「会ってみなよ、椎名。普通の男じゃなくて、ゲイ同士だったら上手くいくかもよ?」
小寺先輩が僕の返事も聞かずスマートフォンを取り出して誰かに電話をし始めて、僕はソワソワと、どうしたらいいのかと一人混乱してしまう。
「これから会えるって、二十九歳の男だよ。俺の同級生。『キュリオス』で」
「え……でも……僕……」
これは会うべきなのか?
今まで生きて来て同じゲイである人間に会ったことがない。
もしかしたら、同じマイノリティな人間同士、わかりあえるものがあるのかもしれない。
「会ってみなって、椎名。早くあんな男、忘れなよ」
来栖先輩が僕の肩に手を置いた。
この孤独を、この人間不信を解いてくれる、何か活路を見出してくれる、同じ思いを共有できる相手かもしれない。
僕はゆっくり頷いて、タクシーを呼んだ。
「見た目が派手だから見たら一発でわかるから、白髪の奴」と小寺先輩が告げてくれた。
車内で、思わずスマートフォンを取り出した。
僕は、まだ暖人の連絡先を消せていないし、着信拒否も出来ていない。
このことを、相談できる相手だろうか?
やがてタクシーが『キュリオス』に到着して、僕は店の入り口の前で大きく息を呑んだ。
どう転ぶだろう。
僕にとって、何か転機になるだろうか。
そっと店の扉を開けると、マスターが久しぶりに訪れた僕に微笑んで「いらっしゃい」と言ってくれて、僕も「こんばんは」といつもの挨拶を返した。
まだ早いカウンター席にはやっぱり他に人が居なくて、来栖先輩と来た以来だったその薄暗い照明のカウンター席に、白髪でピアスをジャラジャラ付けた男性が座っていた。
僕を見て──。
嫌な笑いを見せた。
一瞬で、ここに来てしまったことを後悔した。
でも、すぐにその言葉を咀嚼したように口を開いた。
「確かに……椎名、女みたいな顔してるもんな。そう言われても不思議じゃないかも。俺、ゲイの知り合いいるよ? フリーなんだ。会ってみる?」
しどろもどろになって「えっと……」と何も言葉を紡げずにいると。
「会ってみなよ、椎名。普通の男じゃなくて、ゲイ同士だったら上手くいくかもよ?」
小寺先輩が僕の返事も聞かずスマートフォンを取り出して誰かに電話をし始めて、僕はソワソワと、どうしたらいいのかと一人混乱してしまう。
「これから会えるって、二十九歳の男だよ。俺の同級生。『キュリオス』で」
「え……でも……僕……」
これは会うべきなのか?
今まで生きて来て同じゲイである人間に会ったことがない。
もしかしたら、同じマイノリティな人間同士、わかりあえるものがあるのかもしれない。
「会ってみなって、椎名。早くあんな男、忘れなよ」
来栖先輩が僕の肩に手を置いた。
この孤独を、この人間不信を解いてくれる、何か活路を見出してくれる、同じ思いを共有できる相手かもしれない。
僕はゆっくり頷いて、タクシーを呼んだ。
「見た目が派手だから見たら一発でわかるから、白髪の奴」と小寺先輩が告げてくれた。
車内で、思わずスマートフォンを取り出した。
僕は、まだ暖人の連絡先を消せていないし、着信拒否も出来ていない。
このことを、相談できる相手だろうか?
やがてタクシーが『キュリオス』に到着して、僕は店の入り口の前で大きく息を呑んだ。
どう転ぶだろう。
僕にとって、何か転機になるだろうか。
そっと店の扉を開けると、マスターが久しぶりに訪れた僕に微笑んで「いらっしゃい」と言ってくれて、僕も「こんばんは」といつもの挨拶を返した。
まだ早いカウンター席にはやっぱり他に人が居なくて、来栖先輩と来た以来だったその薄暗い照明のカウンター席に、白髪でピアスをジャラジャラ付けた男性が座っていた。
僕を見て──。
嫌な笑いを見せた。
一瞬で、ここに来てしまったことを後悔した。
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