こんな僕の想いの行き場は~裏切られた愛と敵対心の狭間~

ちろる

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 やっぱりというか案の定というか。

 暖人はるとと少しだけ仮眠して、激しい情交による恥ずかしいような腰の鈍痛と、かされ過ぎたせいで若干掠れた声帯を抱えながら家で別れて会社に出社すると。

 僕がゲイであることは周知の事実になっていて。

 でも──。

 後ろ指を差す人もいたけれど、多くは温かに受け入れてくれて、息を殺すように何かに怯えながら生きる毎日はもうどこにもなくなって。

 暖人に「今日、会社に行ったら僕がゲイだって知れ渡ってるかも」って言ったら、「そん時は本当に俺がさらう……つーか、もう俺が養ってやるから安心して仕事辞めろ」なんて言ってくれたりもして。

 幸福感に包まれていると、来栖くるす先輩が話しかけてきた。

椎名しいな、昨日どうだった?」

 にっこり笑顔を返す。

「来栖先輩のお陰で、また暖人とやり直せることになりました。暖人が勝っちゃったみたいです」

 苦虫を嚙み潰したような顔をした来栖先輩に、僕はあの日、勝ち誇ったような顔をした来栖先輩と同じように勝ち誇った視線を向けて。

「は? どういうこと?」

「昨日、来栖先輩たちがあんな人と会わせてくれたお陰で、僕はまた暖人に連絡する勇気が持てて、来栖先輩たちが僕がゲイだってことを言いふらしてくれたお陰で、僕はもうコソコソ生きずに済むようになりました。全部、来栖先輩のお陰です」

 来栖先輩が忌々いまいましいものを見るように僕を見つめてきた。

「椎名、あんな男と一緒に居たらきっと後悔するよ?」

「僕は後悔なんてしませんよ? 今が夢みたいに幸せなんです。僕と暖人をもう一度一緒にしてくれた来栖先輩は、やっぱり先輩です。これからもよろしくお願いしますね?」

 笑顔で小首をかしげると、来栖先輩が舌打ちをして踵を返して行って。

 僕と暖人は、もうきっと、ずっと一緒で、一人で生きていかなくちゃいけないなんていう辛さも払拭ふっしょくされた。

 永遠の愛があるかなんてわからないけれど、この先、どんなことがあっても、暖人を愛していくという事実は消えようもない“記憶”となって僕の中に永遠に残っていくと信じているし、確信もしている。

 こんな僕の想いの行き場は──。

 いや、“こんな僕”って言ったら暖人が怒るからもう言わない。

 僕の、こうやってマイノリティだけど生きている僕の。
 孤独とか寂しさとかやましさとか、そういうもの全て暖人が受け入れてくれたから。

 僕はもう、これからは強く生きていけると思うんだ。
 何一つ、後ろめたさなんて感じずに済むと思うんだ。

 でも、最後にもう一回だけ言わせて、暖人。
 怒らないで、言わせて。

 こんな僕の想いの行き場は、暖人、ただ一人だったよ。

                             - END -
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