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「おかえりなさい、颯くん」
リビングの扉をくぐると由貴が既にシャワーを浴びていたようで、バスローブ姿で白磁の素足を組みながらソファでくつろいでいた。
「ああ……」
短く返事をしてネクタイを引き抜いていると、由貴が「――で、陽ちゃんと話していたみたいですけど、連絡先は訊けましたか? 今日こそおつかいはちゃんと出来たんですよね?」なんて話し掛けてくるから。
俺は不機嫌さを隠そうともせずに由貴の隣に座ってスーツの内ポケットから煙草を取り出すと、一本銜えて火を点けた。
また、バレないように煙と一緒に溜め息も吐き出す。
「テメェのおつかいとやらは遂行した。けどな――」
そこで言葉を切ると由貴は俺の硬質な顎のラインを掌で辿ってくるので、思わず身体にも火が点きそうになって焦る。
そんな俺の焦りを知ってか知らずか、艶めかしい手付きで内腿を撫で擦りながら「けどな? なんですか?」と際どい部分に指を這わせてくるから厄介だ。
「小鳥遊は俺のことが好きだとさ。どうする?」
「どうするってどういう意味ですか? 颯くんこそどうするんです?」
言いながら、今度は確信を持って下腹の中心を滑らかな手で揉んでくるから「……っ」と、思わず煙草の灰を落としそうになって慌てて灰皿に揉み消した。
「――お前と同じことをするって言ったらどうする?」
「颯くんも言うようになりましたね? 僕に止めて欲しいですか?」
――止めて欲しいっつーの。
由貴だって俺に執着してるんだってところを少しは見せてはくれないのかよ……なんて素直に言えない俺は何故かされるがままソファに押し付けられて。
ゆっくり、唇を由貴のそれで塞がれる。
「颯くんの行動に任せますよ?」
「煙草吸ったらキスしねぇんじゃなかったのか?」
俺の衣服を剥ぎ取りながら「今日は例外です」なんて釦をむしり取られるように開かれたシャツの中に忍び込んできた繊細な指が、探し出された胸先を抓まれる刺激に「ふっ……」と甘い息が吐き出される。
些か性急にスラックスのベルトが外されて、下着ごとそれを引き抜かれたと思ったら、由貴はバスローブの腰紐を惜しげもなく解いて、陶器のように白い裸身を晒して圧しかかってきた。
リビングの扉をくぐると由貴が既にシャワーを浴びていたようで、バスローブ姿で白磁の素足を組みながらソファでくつろいでいた。
「ああ……」
短く返事をしてネクタイを引き抜いていると、由貴が「――で、陽ちゃんと話していたみたいですけど、連絡先は訊けましたか? 今日こそおつかいはちゃんと出来たんですよね?」なんて話し掛けてくるから。
俺は不機嫌さを隠そうともせずに由貴の隣に座ってスーツの内ポケットから煙草を取り出すと、一本銜えて火を点けた。
また、バレないように煙と一緒に溜め息も吐き出す。
「テメェのおつかいとやらは遂行した。けどな――」
そこで言葉を切ると由貴は俺の硬質な顎のラインを掌で辿ってくるので、思わず身体にも火が点きそうになって焦る。
そんな俺の焦りを知ってか知らずか、艶めかしい手付きで内腿を撫で擦りながら「けどな? なんですか?」と際どい部分に指を這わせてくるから厄介だ。
「小鳥遊は俺のことが好きだとさ。どうする?」
「どうするってどういう意味ですか? 颯くんこそどうするんです?」
言いながら、今度は確信を持って下腹の中心を滑らかな手で揉んでくるから「……っ」と、思わず煙草の灰を落としそうになって慌てて灰皿に揉み消した。
「――お前と同じことをするって言ったらどうする?」
「颯くんも言うようになりましたね? 僕に止めて欲しいですか?」
――止めて欲しいっつーの。
由貴だって俺に執着してるんだってところを少しは見せてはくれないのかよ……なんて素直に言えない俺は何故かされるがままソファに押し付けられて。
ゆっくり、唇を由貴のそれで塞がれる。
「颯くんの行動に任せますよ?」
「煙草吸ったらキスしねぇんじゃなかったのか?」
俺の衣服を剥ぎ取りながら「今日は例外です」なんて釦をむしり取られるように開かれたシャツの中に忍び込んできた繊細な指が、探し出された胸先を抓まれる刺激に「ふっ……」と甘い息が吐き出される。
些か性急にスラックスのベルトが外されて、下着ごとそれを引き抜かれたと思ったら、由貴はバスローブの腰紐を惜しげもなく解いて、陶器のように白い裸身を晒して圧しかかってきた。
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