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肘を拘束されているので、とりあえず腹筋の力だけで上半身を起こした。
幸い、縛り付けられている結び目は俺の目の前にあって、歯でネクタイの拘束を何とか解く。
すぐにでも燻った熱を解き放ってしまいたくて、激しく指を擦りつけると、精を吐き出そうと限界だったそれはあっという間に高みに昇りつめて。
「ぁっ……っ……んっ」
腰を震わせながら、両手の平にべったりと白濁が貼り付いた。
達した余韻で肩で息をしながら、倦怠感の中、ベッドボードの上のティッシュを取り出して手の平と萎びたそれを拭う。
すぐに元通りネクタイを着けてスーツのスラックスを履くと、ボストンバッグを取り出して、ベッドのすぐ横にあるウォールインクローゼットからスーツやシャツ、下着やスウェットなどを詰め込んだ。
リビングに続く扉を開けると、真白がソファで読書をしていた。
俺をあんな目に遭わせておいて悠々と読書をしているその姿に、ますます怒りが込み上げる。寝室を出た俺に真白が昏い瞳を向けた。
「伊吹、勝手にイッたの? 僕に断りもなく? その荷物は何?」
「俺はもうここから出ていく。今までありがとう真白。好きだったよ。今でも好きだよ。でも、もう真白は俺の知っている真白じゃないから。俺は別れることに決めた。クビなら甘んじて受け取る。じゃあな真白」
踵を返すと「伊吹」と背中に声がかかった。
「僕は伊吹を愛しているよ? こんなにも。どうしたらわかってくれる?」
その声は、また柔和なそれで。
一瞬、心を解きそうになってしまう。
真白が、本当の真白が帰って来てくれたんじゃないかって。
でも──。
「それも演技? 俺を閉じ込めるとか言ってなかった?」
「僕は伊吹に演技なんかしたことはないよ? 伊吹にだけ、全てを曝け出せるんだ。伊吹が傍にいないなんて僕は耐えられない。それに言ったよね? 僕は伊吹の体裁を考えてる。会社を休ませるなんてことはしない。閉じ込めるのは最終手段だよ? ちゃんと愛してるってわからない?」
俺だって……傍にいたい。
でも、違うんだ。俺が傍にいたい真白はこんな真白じゃない。
こんな、変わってしまった真白なんかじゃない。
俺をちゃんと愛してくれていた真白なんだ。
幸い、縛り付けられている結び目は俺の目の前にあって、歯でネクタイの拘束を何とか解く。
すぐにでも燻った熱を解き放ってしまいたくて、激しく指を擦りつけると、精を吐き出そうと限界だったそれはあっという間に高みに昇りつめて。
「ぁっ……っ……んっ」
腰を震わせながら、両手の平にべったりと白濁が貼り付いた。
達した余韻で肩で息をしながら、倦怠感の中、ベッドボードの上のティッシュを取り出して手の平と萎びたそれを拭う。
すぐに元通りネクタイを着けてスーツのスラックスを履くと、ボストンバッグを取り出して、ベッドのすぐ横にあるウォールインクローゼットからスーツやシャツ、下着やスウェットなどを詰め込んだ。
リビングに続く扉を開けると、真白がソファで読書をしていた。
俺をあんな目に遭わせておいて悠々と読書をしているその姿に、ますます怒りが込み上げる。寝室を出た俺に真白が昏い瞳を向けた。
「伊吹、勝手にイッたの? 僕に断りもなく? その荷物は何?」
「俺はもうここから出ていく。今までありがとう真白。好きだったよ。今でも好きだよ。でも、もう真白は俺の知っている真白じゃないから。俺は別れることに決めた。クビなら甘んじて受け取る。じゃあな真白」
踵を返すと「伊吹」と背中に声がかかった。
「僕は伊吹を愛しているよ? こんなにも。どうしたらわかってくれる?」
その声は、また柔和なそれで。
一瞬、心を解きそうになってしまう。
真白が、本当の真白が帰って来てくれたんじゃないかって。
でも──。
「それも演技? 俺を閉じ込めるとか言ってなかった?」
「僕は伊吹に演技なんかしたことはないよ? 伊吹にだけ、全てを曝け出せるんだ。伊吹が傍にいないなんて僕は耐えられない。それに言ったよね? 僕は伊吹の体裁を考えてる。会社を休ませるなんてことはしない。閉じ込めるのは最終手段だよ? ちゃんと愛してるってわからない?」
俺だって……傍にいたい。
でも、違うんだ。俺が傍にいたい真白はこんな真白じゃない。
こんな、変わってしまった真白なんかじゃない。
俺をちゃんと愛してくれていた真白なんだ。
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