その執着、愛ですか？～追い詰めたのは俺かお前か～

２２

「本当に変わったんなら、その手は何？」

　局部を押し潰されている手をそっと見遣ると、真白ましろが指を離して。
　そのまま大きく溜め息を吐いて俺を見つめた。

「伊吹いぶき、僕はね？　伊吹がいなきゃダメなんだ。どうしてクビにしないかわかる？　伊吹に僕の目の届くところに居て欲しいから。伊吹に戻って来て欲しいから。ねぇ、伊吹は僕のことを考えてる？」

　俺の瞳から、はらはらと涙がこぼれていた。
　考えてるよ。こんなにも考えているから苦しんでいる。

　真白が……優しかった頃の真白が大好きだったから、その幻影にずっとずっと囚われて、抜け出すことが出来なくて。

「お願い……真白……元の真白に戻ってよ……俺が好きだった真白に戻ってよ……。好きなんだ、昔の真白が忘れられないんだ……」

「前も言ったよね？   僕は伊吹の言っていることが理解できない。僕は最初からずっと、伊吹を愛しているし、今だって愛しているよ？　伊吹の言う、元の僕って一体何？　僕はどうしたら、伊吹にちゃんと愛してもらえる？」

　俺は思わず真白をぎゅっと抱きしめた。
　もう言葉では、何を言っても今の真白には伝わらないような気がして。抱きしめる腕に力を込めて、これで俺の気持ちが伝わって欲しかった。

　真白がそっと俺の背中に腕を回して、キツく背を抱いてくれる。
　それが、それが、あの頃の真白の優しいそれで。

　言葉では伝わらなかった俺の想いが伝わったのか？と期待してしまう。

　だから、少しだけ試してみたくなった。
　真白の、本当の俺への気持ちを。本当に俺を想う気持ちがあるのかを。往生際が悪いってわかっているけれど、試してみたくなった。

「抱いて？　真白。昔みたいに」

　要かなめ先輩みたいに、優しく抱かれたかった。
　今の真白には、孝太郎こうたろうさんみたいな気持ちはある？

　それを確かめたかった──。