改訂稿『オオカミは淫らな仔羊に欲情する』【R18】

サニー

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京都編・プロローグ

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  我が家はお婆・父・母・姉・弟の6人家族。

  弟は私と同じ私立高校の2年生(双子なので)
  姉は東京にある母の実家に下宿しながら某有名
  美術大学に通っている。

  
  共働き家庭の我が家は、
  両親共に仕事で家にいない事が多くて、
  2代目住み込み家政婦の史ちゃんが
  忙しい両親に代わって私らの面倒をみてくれた。
  史ちゃんはクラスメイトでもある。

  鈍な私は両親が家に不在がちなのは、
  仕事で忙しいせいだとばかり思っていたけど、
  実際は違った。

  一昨年、亡くなった祖父の跡を継いで政治家
  となったお父さんにも。

  人気女流ミステリー作家のお母さんにも。
 
  ”愛人”と呼ばれる存在がいた。


  初音姉ちゃんが上京するまで、
  週末は家族揃って外食、長い休みが取れた時には
  家族旅行に行く ―― という、平凡な生活を
  送っていた。

  作家として締め切りに追われながらも、
  主婦の仕事はきちんとこなす母 ――。

  警察官を生涯の天職としながらも、後援者さん達の
  熱い要望に応えて政治家の道を歩みだした父。

  私はそんな2人の事を心から尊敬していたが。

  偶然、2人の浮気現場を目の当たりにしてしまって
  から、2人にたいする見方がかなり変わった。


  史ちゃんは、夜中2人(お父さんとお母さん)の
  罵り合いを偶然聞いてしまったり、
  ご近所の小母さん達の噂話しなんかで、
  かなり前からその事(両親の不和)を知っていた
  らしい。

  もちろんそんな噂話しの類なら、
  私の元にも届いていたけど。

  浮気はあくまでも”浮気”
  決して本気にはならないと思っていた……。


 ***  ***  ***


  その日は余程慌てていたのか?

  単なる鍵の掛け忘れか ――、

  玄関のドアに鍵はかけられていなかった。
  
  その瞬間、何故か分からないが酷い違和感を
  絢音は感じた。
  
  嫌な胸騒ぎもする。
  
  …… ゆっくり玄関のドアを開けた。

  そうして玄関の上がり框に綺麗に並べられた
  男物の革靴を目にし、絢音は少し眉をひそめた。
  
  
  (お父さん? じゃあ、ないよな……)
  

  けど、さっきからずっと止まらへん、この胸騒ぎは
  何なんやろ……。

  ドックン ドックンと、さっきまでの弾んだ鼓動
  とは全く別の、嫌な動悸が絢音を支配しつつ
  あった。
  
  音をたてないようにスクールシューズを脱ぐ。
  
  そうっと上框にあがったその時、
  か細い女の声が飛び込んできた。
  
  それがLDKから聞こえているものだと気付いた
  瞬間、ますます絢音の動悸は激しくなった。
  
  震える手でLDKのドアノブへ手をかけた。
  
  
「あ……んふ……いぃ……」


  その時にはもう、女の喘ぐ声がはっきりと絢音の耳に
  届いていた。  

  意を決し、そのドアを開けようとした時、
  肩に手が置かれ絢音は危うく悲鳴を上げかけた。


「ひっ ――!!」


  その手は、住み込み家政婦・石川 史江の物で。

  史江は素早くもう一方の手で絢音の口を塞ぎ、
  絢音を引きずるような感じで階段の方へ誘う。




  絢音は 「ふぅ~~っ」と息をつきながら史江の
  ベッドに腰掛けた。


「……それにしても、びっくりしたぁ……」

「鍵もかけずにあんな事するなんて、奥様も
 とうとうハラ括ったのかしらね……」

「……アレって、やっぱ、***してたんだよね?
 史ちゃんは知ってたんだぁ」

「絢ちゃんかて最近うちの奥様について、ご近所で
 どんな噂が飛び交ってるか、知らなくはないでしょ」

「……うちのお母さんに限ってそんな事はないって、
 思ってた……」


  ”ハハハ ――”と、史江が乾いた笑い声を
  たてた時、玄関の方でドアが開かれた音がした。


「あ、終わったみたい」


  そう言いつつ窓辺に寄る。

  そして、ベッド上の絢音を手招き、

  カーテンの隙間から階下を見下ろし、
  

「あ~ぁ、これ見よがしに何やってんのかしら……」


  絢音も史江をマネて階下を見下ろし、
  上がりかけた声を自分で口を塞いで止めた。

  階下の玄関先では、母・祥子が部下の男性と
  熱烈なキスシーンを展開中……。


「うそ……母さんの相手って、笙野さんだったの……」


  
  祥子の担当編集者・笙野隆は、
  絢音が中学受験をした時のカテキョで、
  この家からワンブロック先の
  アパートで弟さんと2人暮らしだ。

  カテキョだった、という繋がり以前に、
  笙野隆は高校・大学を通しずっと野球部の
  ポイントゲッター(エース)で、学績も良く。

  絢音の身近な憧れであった。



  いつものように母がテーブルへ置いていった
  お金で店屋物を出前し、夕食。

  昔は祥子の手作り料理を食べていたような
  気もするが、いつの間にかこんな食事が
  我が家 ”和泉家”の当たり前になっていた。


「……絢ちゃんって、あんなのがタイプなんだぁ」

「あんなの?」

「笙野隆」

「そんな言い方ないじゃん。素敵でしょ? 笙野さん。
 頭はいいし、優しいし、その上スポーツマン」

「頭が良くて・優しくて・スポーツマンなら、下半身
 ユルユルの女っタラしでもいいんだー」

「ソレって、笙野さんの事言ってんの?」

「いい事? 絢、将来男関係で泣きを見ない為にも
 これだけは覚えておきなさい。人は皆、裏と表が
 あるの。上っ面がいいやつほど自分の真の姿を
 隠す事に長けているものよ」

「……」


  この日は何だか無性にイラついて、夕食のあと
  散歩がてら馴染みの店に立ち寄った。


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